世界自然エネルギー100%プラットフォームと国内展開
2010年代に入ってからの急速な世界の自然エネルギー導入量の増加と、それに伴うコストの低下や産業としての成熟を背景として、2010年代中盤には「自然エネルギー100%」の概念は政策立案者や専門家、実務者の間で「新しい常識(New Normal)」となった。こうした認知レベルでの変化は、自然に現れたというよりは、政策立案の場や国際会議、メディア等で様々なイニシアチブが複層的に「自然エネルギー100%」の言説を積み重ねてきたことによる。
環境エネルギー政策研究所、世界未来協議会、世界風力エネルギー協会を中心として、世界の様々な自然エネルギー関係機関の協働によって2014年に設立された「世界自然エネルギー100% キャンペーン(Global 100% Renewable Energy Campaign)」は、3年にわたって世界各地の事例や研究成果を集約して情報発信し、ステークホルダーの対話の場を数多く立ち上げ、政策立案者への働きかけなどを行ってきた[1]。そして、その成果は2015年のパリ協定合意に貢献した。
2017年5月、キャンペーンは、世界の自然エネルギー推進の流れをさらに加速するため、「世界自然エネルギー100%プラットフォーム(Global 100% Renewable Energy Platform)」として、ドイツ・ボンにて法人設立された(日本からは環境エネルギー政策研究所が創設時理事として参加)[2]。これは、すでに自然エネルギーの大幅な普及が「新しい常識」となったことを象徴する一つのマイルストーンと見ることができる。
また、日本国内でもこうした動きを活発化すべく、CAN-Japanの運営(事務局:環境エネルギー政策研究所・気候ネットワーク)のもと、日本版の「自然エネルギー100%プラットフォーム」の活動が始まっている。2017年3月10日には、ステファン・シューリグ氏(100%自然エネルギー世界キャンペーン/世界未来評議会)を迎えたイベント「100%自然エネルギー推進円卓会議」が開催され、9月5〜6日には、ラッセ・ブルーン氏(Climate Action Network International グローバルキャンペーンリーダー)を迎えたイベント「動き出す100%自然エネルギーイニシアティブ」が開催されている。
これにあわせて、日本版プラットフォームのWebサイト(go100re.jp)が2017年9月に開設されている[3]。このWebサイトでは、自然エネルギー100%を宣言している自治体や企業などをマップ上に表示するほか、自然エネルギー100%に関連するニュースやレポート、書籍、映像などを集約し、取り組みの進捗や情報を可視化することを目指している。
今後、このプラットフォームのもとで様々な主体が連携し、日本国内でも「自然エネルギー100%」が新しい常識となっていくことが期待されている。
(ISEP 古屋将太)
[1] Global 100% Renewable Energy Platform – go100re.net
[2] ISEP「「世界自然エネルギー100% プラットフォーム」法人設立のお知らせ」
[3] 100%自然エネルギー・プラットフォーム – go100re.jp