4.6 バイオマス発電
バイオマス発電は、各種のエネルギー源がある。本白書においては、以下のエネルギー源に分類し、それぞれの発電規模統計にまとめる。
- 一般廃棄物(ゴミ)発電
- 産業廃棄物発電
- 木質バイオマス発電
- 食品・畜産等バイオマス発電
- 化石燃料混焼発電
なお、ここではバイオマス燃料の熱量比60%程度以上の場合をバイオマス発電と定義する。この定義では「5. 化石燃料発電」は60%未満であるため、統計データから除く(一部の設備はその燃料熱量比が不明の設備も存在したが、主燃料が石炭であるためバイオマス燃料熱量比は60%未満と判断した)。ただし、化石燃料混焼発電の現状の動向については後述する。
データは資源エネルギー庁・RPS法対象認定施設(2013年3月末時点)[1]を中心に、資源エネルギー庁 新エネニッポン事例集[2]、グリーン電力発電設備[3]、社団法人地域資源循環技術センター・バイオ利用技術情報提供システム[4]および農林水産省・バイオマス利活施設データ[5]より、総計423施設を集計した。さらに、2012年7月からスタートしたFIT制度で設備認定され、2017年3月末までに運転を開始した設備についても集計に加えた。
図4.21に示すように2016年度末でのバイオマス発電の設備容量の累積導入量は約417万kWだった(石炭等の大規模な混焼発電を除く)。また2016年度に新規導入された発電出力は約33.3万kW(木質バイオマス28.2万kW、一般廃棄物発電4.9万kW、バイオガス発電1.1万kW、産業廃棄物発電0万kW)であり、前年度から約9%の伸び率であった。全体の傾向としては木質バイオマス発電の増加が顕著になっており、1990年比では約10倍に増加している。
燃料別内訳は、2016年度末時点の設備容量で一般廃棄物発電が48.6%、産業廃棄物発電が27.9%と、いわゆる「ごみ発電」で全体の76.5%を占めているが、累積導入量の伸びは21.6%を占めるようになった木質バイオマス発電によるところが大きい(図4.22)。
2012年7月からスタートしたFIT制度では、発電方式や使用する燃料の種類に応じて調達価格が設定されており、メタン発酵によるバイオガス発電や間伐材などの未利用材を使った木質バイオマス発電が比較的高い調達価格に設定されている。ただし、電熱併給(コジェネレーション)への優遇などは制度上考慮されておらず、これまであまり活用されてこなかった未利用木材(間伐材など)を大量に利用する比較的大規模(出力5,000kW以上)なバイオマス発電が全国で計画され、運転を開始している。
2017年9月末の時点では、このFIT制度においては以下の表4.7の様な設備認定および運転開始の状況である。このうち、2015年度末までに運転開始した未利用材を使ったバイオマス発電設備が20.7万kW、輸入原料が主体の一般木材等が13.8万kWに対して、2016年度は新たに未利用材9.0万kW、一般木材等19.2万kWが運転を開始して、2016年度末までに未利用材が29.7万kW、一般木材等が33.0万kWとなった(移行認定分を含まず)。さらに、2017年度になって2017年9月までに運転を開始した設備が、未利用材が40.1万kW、一般木材などが47.5万kWに達している。
表4.7:FIT制度の対象となるバイオマス発電設備の設備容量 [kW](2017年9月末時点)
2017年9月末 | メタン発酵ガス | 未利用木質 | 一般木質・農作物残さ | 建設廃材 | 一般廃棄物・(木質以外) | 合計 |
設備認定 [万kW] | 9.2 | 58.6 | 1167.8 | 14.4 | 24.8 | 1241.7 |
運転開始 [万kW](移行分含) | 4.5 | 41.0 | 54.9 | 37.2 | 90.0 | 229.6 |
設備認定 [件] | 229 | 115 | 348 | 10 | 90 | 792 |
運転開始 [件](移行分含) | 151 | 65 | 79 | 32 | 230 | 557 |
出所:資源エネルギー庁データよりISEP作成
一般廃棄物発電は各自治体のごみ処理場での発電設備であり、これは1990年代初期から徐々に増加してきている。新設されるごみ処理場では発電設備が併設されるのが一般的になっている。産業廃棄物発電は、製紙会社による自家発電が主な設備であるが、1990年代は製紙工程で出る黒液を燃料とした発電が多かったが、2000年代にはいると、木屑・建築廃材・古タイヤ・RPF等の地域からの産業廃棄物を燃料としたものに主流が移ってきている。一施設の発電設備容量が数10万kWとバイオマス発電の中では大きな発電設備である。
一方、割合は少ないもの地域資源を活用した自然エネルギーとして期待されている木質バイオマスや食品・畜産等バイオマスは1990年代はほとんどなかったが、2004年以降導入が始まり急激な伸びを見せている。2000年代に入ってからの増加は、RPS法施行による政策的後押しがその大きな要因と推測されるが、化石燃料の価格高騰などによる燃料代替や、環境対策としてのCO2削減への取り組みも要因となっていると考えられる。
木質バイオマス発電の新規導入が2008年以降頭打ちとなったのは、経済性のある国内の建築廃材にほぼ余剰がなくなってきたためと考えられる。その様な状況中で、2012年7月にスタートしたFIT制度では、バイオマス発電について燃料別の調達価格が設定されており、特に日本の森林面積の約半分を占める人工林で伐採される間伐材などの未利用木材や製材工場などで発生する一般木材からの端材を燃料として利用した場合に、比較的高い調達価格となっている。
そのため、これまでは搬出コスト等の関係であまり利用されてこなかった間伐材などを燃料として大量に利用する木質バイオマス発電の導入計画が全国各地で検討されており、2012年7月には出力5,000kWクラスの木質バイオマス発電設備がFIT制度の基での認定設備第1号として運転を開始し、2016年度末までに合計62.7万kW、59基の木質バイオマス発電設備が運転を開始している。このうち、未利用木材を原料するバイオマス発電は、29.7万kW(39基)、輸入材やPKS(パーム椰子殻)を含む一般木材等によるバイオマス発電が33.0万kW(20基)となっており、1基あたりの規模は1万kWを超える。
食品・畜産バイオマスによるバイオガス発電もバイオマス政策の推進などにより、RPS制度のもとで合計5.1万kW、71基のバイオガス発電設備が稼働していた。ただし、日本ではメタン発酵後に出る液肥(高濃度処理水)を農地に還元する事が課題となっており、水処理を行っているケースが多い。水処理に莫大なエネルギー(および費用)がかかり、バイオガス発電施設のエネルギー収益を悪化させる要因になっている。FIT制度の中では、この様なメタン発酵によるバイオガス発電に対して事業性を確保するために高い買取価格を設定しており、2016年度末までに合計2.8万kW、93基のバイオガス発電設備が新たに運転を開始している。
石炭混焼によるバイオマス発電については、これまではRPS法のもとで電力会社などが行ってきており、全国で約30の設備がRPS認定されていたが、その全設備容量は1,500万kW程度に達していた。ただし、実際の木質バイオマスの混焼の比率はカロリーベースで数%程度であり、専焼の設備と単純な比較はできない。混焼による木質バイオマス発電は一般的に専焼の設備に比べて建設コストが低いことから、燃料の種別や事業形態により今後、FIT制度の対象設備となるケースも増えると想定され、地域によっては他の木質バイオマスを利用する熱設備や発電設備との燃料の競合が懸念される。
(ISEP 松原)
[1] 資源エネルギー庁 RPS法対象認定施設(2010公表版)
[2] 資源エネルギー庁 新エネニッポン事例集
[3] グリーンエネルギー認証センター グリーン電力発電電力量認証一覧
[4] 社団法人地域資源循環技術センター バイオ利用技術情報提供システム
[5] 農林水産省 バイオマス利活施設データ