REN21「自然エネルギー世界白書2017」
2017年6月7日、REN21(21世紀のための自然エネルギー政策ネットワーク)は、世界の自然エネルギーに関する最新状況を取りまとめたレポート「自然エネルギー世界白書2017」を世界同時公表した。自然エネルギーの世界の最新状況をまとめたこの包括的な報告書は、環境エネルギー政策研究所(ISEP)の提案と編集責任で2005年にREN21が創刊して以来、毎年発行されてきており、2014年に創設10周年を迎えたREN21の重要な年次報告書として、12回目のレポートとなる。
REN21(本部:フランス・パリ)は、2004年に設立され、国際的な自然エネルギー政策に関する多様なステークホルダーをつなぐネットワーク組織であり、2014年に創設10周年を迎えた[1]。
「自然エネルギー世界白書」“Renewables Global Status Report”[2]は、REN21が世界の自然エネルギーの包括的な状況を把握し、自然エネルギーがエネルギー市場や経済発展の面で主流となっていくという現実と理解を結びつけていくことを目的として発行しているレポートである。
世界の自然エネルギー市場、産業、政策の現状について、世界で最もよく参照されるレポート(年次報告書)になっている。2005年からエリック・マーティノー(Eric Martinot, 現在はISEPシニア・リサーチフェロー)のイニシアティブによってはじまったこのレポートは、世界中の研究者、各国政府、国際機関、NGO、業界団体、その他パートナーシップやイニシアティブの協力によりデータが収集されている。ISEPは初刊の2005年版から作成に協力し、創刊から3年間はエリック・マーティノーが編集責任を負い、継続的に日本からのデータを調査・整理してこの世界白書にインプットするとともに、継続的に日本語への翻訳をおこなっている。日本語翻訳版はISEPのホームページからダウンロードすることができる。
2016年は自然エネルギー発電設備の新規導入量で新たな記録が生まれた。新規導入量は161GW(1億6,100万kW)に達し、世界全体の自然エネルギーの累積の発電設備容量は2015年末から約9% 増加し、2,017GW(20億1,700万kW)近くに達している。太陽光発電は約47%も設備容量が増加し、風力発電は34%、水力発電は15.5%設備容量が増加して後に続いた。このような自然エネルギー市場の記録的な拡大にもかかわらず、投資額は前年から23% 減少したが、発電設備のコスト低減が進んでいることを示している。
自然エネルギーは最も発電コストが安い選択肢となってきている。デンマーク、エジプト、メキシコ、ペルー、アラブ首長国連邦での最近の買電契約では、自然エネルギーによる電気がkWhあたり5セント以下となる場合もあり、各国での化石燃料や原子力の発電コストより自然エネルギーが充分に安いことが示されている。
世界の化石燃料と産業由来のエネルギー起源CO2排出量は、世界経済の3%の成長とエネルギー需要の増加にもかかわらず、3年連続で同水準であった。これは第一に石炭消費量の減少によるものであるが、同時に自然エネルギーの発電設備容量の増加とエネルギー効率の改善も寄与している。
変動する自然エネルギーの発電(風力や太陽光)の割合を高めて統合していくことは、化石燃料や原子力などの「ベースロード」電源がなくとも、電力系統の国際連系、セクター・カップリング(電力と熱・輸送燃料等との連携)やICT、エネルギー貯蔵システム、電気自動車、ヒートポンプなどにより電力システムの柔軟性(フレキシビリティ)を十分に備えることで達成できる。
[1] REN21“ Renewable Energy Policy Network for the 21st Century” – www.ren21.net/
[2] REN21“ Renewable 2016 Global Status Report” – www.ren21.net/gsr