4.4 小水力発電

日本における揚水式発電を含む水力発電全体の発電設備容量と設備件数は、表4.6に示すように2016年度末時点で5,019万kW、2,329基である(ここでは各発電所における「最大出力」を「発電容量」として電気事業連合会『電気事業便覧 2017年版』等から集計している)。ただし、このうち2,747万kWは揚水発電であり、送電網の中で電力を蓄える機能を持ち、一般の水力発電所とは区別される。そのため、一般的な水力発電の発電設備容量は、約2,272万kWで、2,287基となり、1基あたりの平均の設備容量は約1万kW程度となる。

近年では、2003年度以降1.1万kWを超える水力発電所の新設が数件に留まる一方で、小水力、とりわけ最大出力が1,000kW未満の小水力発電所の新設が増加している。2012年7月からFIT制度がスタートし、出力3万kW未満の中小水力発電が対象になることから、各地で導入が進んでいる。

表4.6 日本の水力発電の発電設備の件数と容量および発電量(2016年度)

事業種別 発電所数 設備容量 [万kW] 発電量 [GWh] 設備利用率
発電事業用 1,713 4952.1 81,870 18.9%
自家用(公営水力を含む)

[1,000kW以上]

104 53.6 2,670 56.8%
RPS設備(1,000kW未満) 261 90.7 437 55%
FIT設備(1,000kW未満) 251 45.8 221 55%
水力発電設備 合計 2,329 5019.4 85,198 19.4%
揚水発電設備 42 2747.1 7,649 3.2%
一般水力

(揚水発電以外)

2,287 2272.4 77,549 39.0%

※RPS他の設備利用率は2011年度の実績値(発電量は推計)

本白書では、「小水力発電」として、調整能力を持たないもの(流れ込み式)や日間・週間程度の調整能力を持つもの(調整池式[1])およびダム式のもので、最大出力(設備容量)が3万kW未満の水力発電を対象とする。

この小水力発電設備の近年(1990~2011年度)の導入状況の変化について社団法人電力土木技術協会が公表している水力発電所データベースおよび資源エネルギー庁のRPS対象設備データに加えて2009年度からは一般社団法人新エネルギー導入促進協議会の補助金交付実績を利用した(季節変動調整能力を持つもの(貯水池式)や揚水式の水力発電施設は除外)。さらに、2012年度からはFIT制度により運転を開始した中小水力発電設備を対象とした。

図4.17および図4.18に中小水力発電設備(出力3万kW未満)の最大出力の総計の推移と、導入基数の推移について示した。

図4.17 国内の中小水力発電設備の設備容量の推移|ISEP調べ


図4.18 国内の中小水力発電の基数の推移|ISEP調べ

2012年からスタートしたFIT制度では、出力3万kW未満が設備認定の対象となっている。2016年度末時点の3万kW未満の中小水力発電の設備容量は838万kW、発電設備の基数は1,818基となっている(ただし、リプレース案件が含まれるため実際の設備容量や件数はこれより小さくなる)。

このうち1万kW以下の小水力発電設備の約9割は1990年以前に設置されたものであり、1990年度時点で1万kW以下の小水力発電設備の最大出力の総計は306万kWであった。90年度以降はこれらの設備の更新に加え、約300件近くの発電施設の新設によって発電容量の総和は約31万kW増加し、発電容量は2016年度末時点で337.8万kWに達した(このうち容量1,000kW未満の合計は22.4万kW)。

発電所数は1,522基で、前年度から93基が増えた。1万kW以下の小水力発電の設備容量は、国内の一般水力発電(揚水発電を除く)全体の設備容量2,274万kWの約約15%に相当する。

FIT制度により2017年3月末までに認定および運転開始された設備は表4.7のとおりである。

表4.7 FIT制度の対象となる中小水力発電設備の設備容量[kW](2017年3月末時点)

2017年3月末 200kW未満 200kW以上
1,000kW未満
1,000kW以上
3万kW未満
合計
設備認定 [kW] 30,594 75,502 1,012,209 1,118,305
運転開始 [kW] 15,178 30,663 193,591 239,432
移行認定 [kW] 5,463 32,709 169,860 208,032
設備認定 [件] 343 132 123 598
運転開始 [件] 174 45 31 250
移行認定 [件] 67 66 47 180

出所:資源エネルギー庁

FIT制度により、112万kW、598基が新たに設備認定されているが、運転開始はそのうち約30%にあたる約23.9万kW、250基に留まっている。既存のRPS設備および3万kW未満の中小水力のうち約20.8万kW、180基がこのFIT制度で認定され移行をしている。

もっとも規模の小さい200kW未満の小水力発電設備については、343件が設備認定されており、そのうち174基がすでに運転を開始している。1,000kW以上の中小水力発電についても、19.4万kW、31基が運転を開始している。1,000kW未満(200kW以上)については、45基、3.1万kWが運転を開始している。

(ISEP 松原)


[1]土日に貯めた水を平日の発電に使う程度以下の池