4.3 風力発電
導入実績
日本における10kW 以上の風力発電は、1980年に三菱重工業㈱が試験研究用として40kW 機を長崎県に設置したのが最初であり、1990年度末までには、同社の250kW、300kW 機、石川播磨重工業㈱の100kW機、ヤマハ発動機㈱の15kW、17kW 機が建設され、運転中の累積容量は、1,015kWととなった。1999年には、1,000kW 機が登場し、㈱ユーラスエナジー苫前が1,000kW 機20台による、国内初の本格的ウインドファーム(2万kW)を建設した。
その後、風車の単機容量及びウインドファーム容量は、年々大型化し、現在では単機容量3,000kW(ブレード径≒90m、ハブ高さ≒90m:陸上風力として輸送・建設の限界に近い)が登場している。また、5万kW 以上のウインドファームも8カ所で運転を開始しており、現在の国内最大容量のウインドファームは2017年2月に運転を開始した㈱青山高原ウインドファーム新青山高原風力発電所で、単機容量2,000kW 機40台による8万kWである。
2016年度(2017年3月末)時点の導入量は、337万kW、2,213台である。2000年度から2016年度までの単年度および累積の導入実績を図4.13に、また主要年度の導入量と基数を表4.5に示す。2012年7月から固定価格買取制度がスタートし、事業計画に必要な条件は改善された。しかし、2014年4月に閣議決定されたエネルギー基本計画に基づき策定された経産省の長期エネルギー需給見通しでは、2030年度の全発電量に占める自然エネルギーの比率が22% ~24%とされ、様々な制約の中で風力発電の比率を1.7%とするに留まった。自然エネルギー中でも特に風力発電の意欲的な中長期導入目標の策定が望まれる。
表4.5 日本国内の風力発電の導入量と累積台数の推移
年度 | 累積導入量(万kW) | 累積基数(基) | 新規導入量(万kW) | 新規基数(基) |
1990 | 0.1 | 7 | 0.0 | 0 |
1995 | 1.0 | 48 | 0.3 | 9 |
2000 | 14.4 | 251 | 6.1 | 61 |
2005 | 108.5 | 1,053 | 16 | 138 |
2006 | 149.0 | 1,305 | 40.5 | 252 |
2007 | 167.4 | 1,399 | 18.4 | 94 |
2008 | 188.2 | 1,520 | 20.8 | 121 |
2009 | 218.6 | 1,666 | 30.4 | 146 |
2010 | 247.5 | 1,805 | 28.9 | 139 |
2011 | 255.6 | 1,844 | 8.1 | 39 |
2012 | 264.2 | 1,888 | 8.6 | 44 |
2013 | 270.1 | 1,911 | 5.9 | 23 |
2014 | 292.1 | 2,004 | 22.0 | 93 |
2015 | 307.8 | 2,077 | 15.7 | 73 |
2016 | 337.0 | 2,213 | 29.2 | 136 |
JWPA調べ
地域別の導入量
図4.14に「都道府県別の風力発電導入量と風車基数」、図4.15に風力発電の「地域別(電力会社別)導入量」を示す。風況の良い北海道、東北、九州地区の累積導入量が多く、都道府県別では青森県が2008年度から継続して1位となっている。電力会社別で見ると、東北電力、九州電力、東京電力、北海道電力の順となる。東京電力管内の設置量が多いのは、福島県に設置した風力発電所の内、約98%(17万kW)が東京電力へ連系していることによるものである。
国内風力発電の今後の見通し
少しずつ改善の兆しはあるが、電力系統への接続制約や長期に渡る環境アセスメント手続きへの対応、地域での様々な社会的合意形成のプロセスなどの課題があり、日本国内での風力発電の今後の見通しを以下に示す。図4.16には、2016年度までの導入実績とFIT設備認定(未稼働の設備)および環境アセスメント手続き中の風力発電の設備容量(FIT設備認定を含む)を加えた見通しを示す。
2016年度末までに事業用風力発電(20kW以上)のFIT設備認定は、運転開始前で606万kWに達しており、これらが運転開始することで経産省が2030年の目標値としている1,000万kW近くに達する。さらに、環境アセスメント手続き中の設備はFIT設備認定済みを含めて1,500万kW以上にたっしており、運転中の設備容量と合わせて1,900万kWに達する。
欧州各国では、太陽光発電よりもむしろ風力発電が自然エネルギーの主力をつとめており、陸上風力が自然エネルギーの中で大きな割合を占めている国が多く、近年、欧州や中国で洋上風力の本格的な導入も始まっている。第5章で示す様に日本においては陸上風力だけではなく、洋上風力についても非常に大きな導入ポテンシャルがあり、JWPAでは2020年には約1,000万kW、2030年には3,600万kW、さらには2050年には7,000万kWを超える累積導入量となる長期的なシナリオを描いている(経産省のエネルギーミックスでは2030年に1,000万kW程度)。
(ISEP 松原)