3.2 風力発電

FIT 制度の実績と課題

事業用(出力20kW 以上)の風力発電については、IRR(内部収益率)8%を想定した比較的高い調達価格が設定されたが、2017年度から陸上風力においては、再生可能エネルギーの最大限の導入と国民負担の抑制の両立を図る視点及び事業の予見性を高める視点から、3年間で1円/kWhずつ低減されることが決まった。2017年度は経過措置として9月までは前年度価格に据え置かれた。風況や電力系統等の立地条件や環境アセスメント等、調達価格以外の事業へのハードルが多い状況に変化はない。

風力発電は20kW 以上が通常の発電事業となっているが、20kW 未満は小型風力発電ということで電気事業法で一般電気工作物に区分されている。また、小型風力は導入コストが高いことから、特別に高い買取価格が定められており、住宅用太陽光と同様に機器の型式認定が必要となる。認証機関において2017年3月末で16機種が認定されている。小型風力発電の導入容量、認定容量については2017年3月末でそれぞれ2.9MW、120MWとなっている。しかし、2018年度からは20kW以上の陸上風力と同じ買取価格が設定されることが決まっている。

風力全体の2016年度末までの設備認定(RPS 制度からの移行は除く)は697万kWに達したが、その設備認定のペースは環境アセスメント等の準備期間の長さにより、太陽光発電に比べるとまだまだ遅い状況である。このうち2016年度末までの運転開始は79万kWであり、設備認定のうちの11%となっている。また、旧RPS 制度の下で導入された風力発電設備は2011年度末で256万kWであり、その大多数(約252万kW)がFIT 制度に移行をしている。

一方、2012年以降、全国数カ所で洋上風力発電の実証試験が開始されているが、洋上風力発電のコストは陸上風力発電に比べて設備コストや運用コストが高いことが指摘されて

おり、より高い買取価格を設定する必要性が指摘されていた。そのため、2013年11月から経産省の「洋上風力の調達価格に係る研究会」において事業化段階における洋上風力発電の設備コストおよび運用コストの検討が行われた。その結果、2014年度からは洋上風力については新しい買取価格の区分が設けられた。洋上風力の実績が少ないことから、2017年度以降の買取価格は3年間据え置かれることが決まった。

また、今後陸上風力のリプレースが増加すると予想されること及び風況データが整っている上、地元調整も済んでいること、環境影響評価手続についても新設案件に比較すると必要なデータも整いやすい状況にあり事業リスクが低いと想定されることから、新たな調達価格区分が設定された(2017年度18円/kWh)。リプレースの調達価格についても同様にから、3年間で1円/kWhずつ低減される。

事業への取り組み

日本国内の風力発電事業は、各電力会社殿の募集容量制限、抽選・入札制度の導入、改正建築基準法施行による初期の混乱等の影響に加えて、2010年度以降は、FIT制度への移行を前提に、新規案件に対する建設費補助(助成制度)が中止され、継続案件のみの建設となったこと等により、新規導入量が一層低下している。

2012年7月から固定価格買取制度がスタートし、事業計画に必要な条件は改善されたが、2012年10月から環境影響評価法に基づく対象事業に風力発電が加わったことも加味すると、風力発電の事業計画時点から営業運転開始までには4~7年の期間を要するので、導入量が急増するのは2015年度以降と想定されていたが、まだ立ち上がっていない。2014年度の導入量は増加に転じているが、建設費補助(助成制度)中止の影響がなくなったものと推定される。

これまでの風力発電事業を取り巻く状況を把握するために、1990年度から2016年度までの単年度導入実績と、関連するNEDO 共同研究、建設費補助、系統連系メニュー、法・制度の様相を図3.3に示す。

図3.3 単年度導入実績と、関連するNEDO 共同研究、建設費補助、系統連系メニュー、法・制度の様相|出所:日本風力発電協会

環境影響評価法が改正され、2012年10月から風力発電が法対象事業に追加された。2012年10月以降に新設・増設される風力発電所が対象となり、風力発電の規模が1万kW 以上の場合には第1種事業、7,500kW 以上の場合には第2種事業として、環境影響評価法に基づいた環境影響評価(法アセス)を実施する必要がある。風力発電については、既に一部の地方公共団体で条例等に基づく環境影響評価(条例アセス)の対象とされているほか、NEDO が補助金の交付に活用するために策定したマニュアル(NEDOマニュアル)に基づく自主的な環境影響評価(自主アセス)が行われてきた。法アセスでは、評価期間が3〜4年半程度と長期にわたることが想定されることから、導入促進のために従来から法アセスの対象となっていた。

地熱発電所と共に環境アセスメントの簡素化・迅速化を図る「環境アセスメント調査早期実施実証事業」が2014年度から3年間にわたり実施されている。国内でもその導入ポテンシャルの大きさ等から有望視され始めている洋上風力は、すでに国内外を問わず着床式風力発電が商用段階にあるものの、「着床式」洋上風力の着実な導入と共に、飛躍的な導入の実現には立地制約を受けない「浮体式」の商用化も不可欠である。

2012年にNEDOは千葉県銚子沖(2,400kW)および福岡県北九州沖(2,000kW)に国内初の沖合における着床式洋上風力発電を設置し、2013年から系統連系運転を開始している[1]。浮体式洋上風力発電については、2012年に長崎県五島市椛島に我が国初のパイロットスケール(100kW)を設置し、2013年にはフルスケール(2,000kW)を設置し10月に運転を開始した[2]。また福島沖には2,000kWの風車と世界初の浮体式洋上変電所を設置し、系統連系運転を開始している。浮体式洋上風力の実証として福島沖に7,000kWの風力発電機を設置し、2015年12月に試験運転を開始した[3]。3基目の5,000kW浮体式風力発電機についても2017年2月に試験運転を開始している。

また、2015年度には離岸距離が数十km以上となる浮体式ウインドファームには欠かせない技術となる「次世代洋上直流送電システム開発事業」がNEDOにおいて開始されている。さらにNEDOでは洋上風力発電の導入を推進するために、洋上風力を計画する上で重要なデータの1つとして「洋上風況マップ」の作成を開始しており、その一部がデモ版として公開されている[4]

(日本風力発電協会)


[1] NEDO 洋上風力発電プロジェクト http://www.nedo.go.jp/fuusha/

[2] 環境省 浮体式洋上風力発電実証事業 http://goto-fowt.go.jp/

[3] 福島洋上風力コンソーシアム http://www.fukushima-forward.jp/

[4] NEDO「洋上風況マップ(デモ版)」 http://dcm04.gis.survey.ne.jp/Nedo_Webgis/top.html