3.1 太陽光発電
住宅用太陽光(出力10kW未満)
10kW未満の太陽光発電設備は、戸建て住宅の屋根に設置する例が大半で、住宅用太陽光発電設備の出力は3kW~4kW程度が最も多い。図3.1に示すとおりFIT制度開始以前の太陽光発電は住宅用が大半を占め、太陽光発電の余剰電力買取制度が始まった2009年度の国内出荷量の内、住宅用は54万kWで87%を占めていた。その後も10kW未満の国内出荷量は増え続け、2013年度は237万kWと過去最高に達したが、その後、2015年度は155万kW、2016年度は121万kWまで減少している。FIT制度により発電事業用に使用される10kW以上の太陽光発電設備の導入が急拡大したため、国内出荷量に占める住宅用太陽光発電モジュールのシェアは2011年度には78%あったが、2016年度には34%まで低下している。
事業用太陽光(出力10kW以上1MW未満)
図3.2に示すように、2017年度に開始されたFIT制度により全量買い取りが可能な事業用(非住宅用)の太陽光発電(出力10kW以上)の導入が急速に進んでいる。FIT制度開始前(2012年6月末)の26万kWから2016年度末には約110倍の2900万kWに達し、太陽光発電全体の7割以上(76%)のシェアになっている。その中でも出力1MW以上のメガソーラー(29%)と共に出力が50kW未満の低圧(29%)が増えていることがわかる。もともとFIT制度開始前は、出力10kW以上の太陽光発電の設備は、学校、幼稚園等公共施設の屋根、工場、ビル等産業施設の屋根に設置される他、工場敷地、道路、鉄道沿線など多様な場所に設置されていた。FIT制度開始後は、発電事業用の太陽光発電が主流となり、比較的狭い土地や施設の屋根に簡単な手続きで導入できる低圧(50kW未満)の発電設備が急速に導入されていった。50kW以上の高圧連系では、比較的高いコストの連系設備を設置する必要があり、買取価格が規模によらずに一定であることから、50kW以上1MW未満の高圧の太陽光発電の導入はあまり進んでいない。実際に導入されている事業用太陽光発電(10kW以上)のうち約4割(38%)の設備容量を50kW未満の発電設備が占めている。一方、50kW以上1MW未満の設備容量は23%程度で、1MW以上のメガソーラーの39%を大きく下回っている。
これらの設置場所は従来の建物の屋根だけでなく、造成があまり必要ではない遊休地や規制緩和が進んだ工業団地、さらにゴルフ場跡地などへも導入が始まっている。最近では、大規模な林地開発を伴う事例も増えており、10MWを超える大規模な太陽光発電設備の山林への導入が進んでいる。また、貯水池への導入事例も増え始めて居る。屋根や土地を太陽光向けに貸し出す地方自治体等の事例もあるが、目的外使用のための貸し出しの条件が厳しくあまり進んでいない。2013年3月には農林水産省が、支柱を立てて太陽光発電設備を設置することにより周辺の営農上支障がないという前提で、支柱基礎部分のみを農地転用して、農地に設置することを可能にした「営農型発電設備」を条件付きで認めた[1]。これはソーラーシェアリングと呼ばれ、50kW未満の低圧連系で導入が進んでおり、発電による事業収入を得ることで、農業活性化にも貢献できると期待されている(詳細は第1章のトピック③「ソーラーシェアリングの普及と進化」を参照)。
メガソーラー(出力1MW以上)
1,000kW(1MW)以上の太陽光発電設備はその容量から「メガソーラー」と言われているが、多くの企業等が本格的に参入したのはFIT制度がスタートした2012年7月以降である。メガソーラーの導入事例については多岐にわたり、その初期投資と事業性の高さから大企業や海外資本も数多く参入している。近年では、10MWを超える大規模なメガソーラーも増えており、特に土地利用の規制の比較的緩い林地において開発が進んでいるが、自治体や周辺住民との合意形成が不十分な案件も見られる(第1章トピックス②「自然エネルギーと社会的合意形成」参照)。FIT制度以前に導入されたメガソーラーは6万kW程度だっただが、FIT制度開始以降、急速に導入が進み2016年度末までに約190倍の1135万kWにまで増加している。すでに導入された太陽光発電全体に占めるメガソーラーのシェアは約30%だが、FIT制度で認定された設備容量は累積で約4000万kWに達し、そのシェアは太陽光発電全体の約46%となっている(2017年3月末現在、改正FIT法による失効する以前の認定量)。
[1] 農水省「再生可能エネルギー発電設備を設置するための農地転用許可」 http://www.maff.go.jp/j/nousin/noukei/totiriyo/einogata.html