1.1 はじめに

環境エネルギー政策研究所(ISEP)は、自然エネルギー関連団体や専門家・研究者・市民団体など各方面の協力を得て、2010年から日本のデータを再編集した「自然エネルギー白書」を毎年発行してきた。本書はその最新版「自然エネルギー白書2017」のサマリーで、「自然エネルギー世界白書2017(Global Status Report 2017)」から世界の最新状況と対比しながら、日本の自然エネルギーの最新状況を一目でわかるかたちで整理している。

この10年間の世界の自然エネルギーの成長は目覚ましいものがある。風力発電は、2006年の7,400万kW から2016年末の4億8,700万kW へと、およそ7倍も増加し、世界全体の原子力発電所の設備容量を2015年には超えた(図1)。太陽光発電は、2006年から2016年までの10年間に世界全体の設備容量がおよそ48倍に急拡大して、累積では2億9,100万kWに達している。

図1.1 世界の自然エネルギーおよび原子力の発電設備容量のトレンド|出所:GWEC, IRENA, IAEA データよりISEP 作成

2016年は、自然エネルギーによる発電設備の年間導入量が世界全体で1億6,100万kWという記録的な拡大をしたにもかかわらず、投資金額(2,416億米ドル)は前年から23%も減少し、より少ない費用で自然エネルギーが導入された。世界全体の自然エネルギーの累積の発電設備容量は前年から約9% 増加し、20億1,700万kWに達している(大規模水力を含む)。太陽光発電は約47%も累積の設備容量が増加し、風力発電は34%、水力発電も約16%増加している。

2015年に採択され、2016年11月に発効した「パリ協定」では、今世紀後半には世界の温室効果ガスの排出量を実質ゼロとする必要があり、100%自然エネルギーに向けた取り組みが進み始めている。世界のエネルギー起源CO2排出量は、世界経済の3%の成長とエネルギー需要の増加にもかかわらず、3年連続で同水準だった。石炭消費量の減少と共に自然エネルギーの発電設備容量の増加とエネルギー効率の改善が寄与している。

日本の自然エネルギー市場は、2012年のFIT 制度の開始後5年が経過し、2017年3月末時点で認定後の未稼働設備が6,000万kW 以上に増加した。そのため、2017年度からFIT 制度が改正され、接続契約が前提となる事業認定が既存設備を含めて適用されている。国内の太陽光発電は、2015年のピークのあと2016年の新規導入量は約20% 減少したが、2016年には860万kWが新規に導入され、累積設備容量は4,280万kWとなったため、ドイツを追い越して世界第2位となった(図2)。

図1.2 日本の自然エネルギー発電設備容量の推移|出所:ISEP 調査

一方、太陽光発電市場の縮小とコスト低下により、日本の2016年の自然エネルギーへの投資額は前年から56%減少して144億米ドル(約1.6兆円)で、世界第4位だった。この太陽光発電市場の縮小は、主に電力系統への接続の制約など、より厳しい導入条件への対応が必要になってきたためだと考えられる。日本の電源構成に占める太陽光発電の発電量の割合は、2016年度に4.8%となっており、わずか4年間で6倍に達した。その中で、地域所有のご当地エネルギーの太陽光発電は4.5万kW程度と推定されている。