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自然エネルギー白書は、太陽光、風力、地熱、小水力、バイオマス、太陽熱など、国レベルの自然エネルギー政策の具体的課題から、地域での事業化や普及に向けた取り組み、各種のトレンド・データ、地域別ポテンシャルや導入状況、自然エネルギー100%を目指す長期シナリオなど、国内の自然エネルギーについて網羅的に情報をまとめてたレポートです。(ISEP編集)

2023年の自然エネルギー電力の割合(暦年・速報)

当研究所は、2023年(暦年)の自然エネルギー電力の割合を推計し、日本国内の全発電電力量(自家消費含む)に占める割合は25.7%となりました。また、国内の変動性自然エネルギーは12%に達しました。

要旨

  1. 2023年 (暦年)の日本国内の全発電電力量(自家消費含む)に占める自然エネルギーの割合は25.7%(速報値)となり、前年の22.7%から大幅(3ポイント)に上昇したと推計されたが、さらなる拡大のための政策が求められる。
  2. 2023年(暦年)の太陽光発電の年間の発電電力量の割合は11.2%となり、前年の9.9%から1.3ポイント増加し、変動性自然エネルギーVRE(太陽光および風力)の割合は12.2%となった。
  3. バイオマス発電の割合は5.7%で、前年の4.6%から1ポイント以上増加した。風力発電も1.0%に達して前年から0.16ポイント増加し、地熱発電は0.28%で前年から微増した。水力発電は前年から0.4ポイント増加して7.5%だった。
  4. 化石燃料による火力発電の年間の発電電力量の割合は66.6%で、前年の72.4%から減少した。LNGは29.0%で前年の29.9%から減少したが、石炭は28.3%で前年の27.8%から増加した。原子力発電は7.7%となり、前年の4.8%から増加した。
  5. 欧州では、2023年には、自然エネルギーの年間発電電力量の割合が50%を超える国が多くあり、EU27か国全体の平均でも44.3%に達しており、ウクライナ危機などの影響で化石燃料による発電電力量の割合は32.8%まで減少している(天然ガス16.6%、石炭12.5%)。VREの割合もデンマークの67%を筆頭にポルトガル、ドイツ、スペインなど40%近い国が多くあり、EU27か国全体の平均値も26.6%となっている。
  6. 中国では、水力発電に加えて風力や太陽光の導入がこの10年間で急速に進み、2023年には風力発電の年間発電電力量の割合が9.4%、太陽光発電が6.2%で原発(4.6%)を大きく上回り、水力も含めた自然エネルギーの割合は30.9%に達する。VRE比率も15.5%に達している 。
  7. 日本国内の2023年(暦年)の電力需給データにおいて、電力需要量に対する自然エネルギーの割合は平均で22.3%だった。1時間の最大値では100%以上に達する時間帯があるエリアは、6エリア(北海道、東北、北陸、中部、四国、九州)あったが、VREの割合が100%を超えることはなかった。VREの出力抑制が北海道(0.02%)、東北(0.75%)、北陸(0.53%)、中部(0.22%)、関西(0.07%)、四国(1.57%)、中国(3.40%)、九州(8.88%)で実施され、ほとんどのエリアで抑制率は前年から増加している。全国平均の割合も1.8%と前年の0.3%から大幅に増加した。

国内の発電電力量に対する自然エネルギーの割合

電力調査統計[1]や全国の電力需給データなどより2023年の日本国内の全発電電力量(自家消費を含む)の電源別割合を推計した[2]。その結果、2023年(暦年)の日本国内の自然エネルギーの全発電電力量に占める割合は25.7%となった(表1、図1)。

2016年には約15%だった自然エネルギーの割合が、2021年までに毎年1ポイント以上増加して22%に達したが、2023年は前年(2021年)から3.0ポイント増加して25.7%に達した(図2)。その中で、太陽光発電の発電電力量は11.2%に達して、前年の9.9%から増加しており、第6次エネルギー基本計画(2021年10月閣議決定)が2030年度の電源構成で想定している導入割合(15%)に徐々に近づいている。風力発電の割合1.00%と合わせると、VRE(変動性自然エネルギー)の割合は12.2%となり、前年(2021年)の10.8%から1ポイント以上増加した。太陽光発電以外の自然エネルギーについては、バイオマス発電の発電電力量の割合は5.7%で、前年の4.6%から大幅に増加した。一方、風力発電は1.00%で前年の0.85%から増加し、地熱発電も0.28%で前年からわずかに増加した。水力は前年の7.1%から増加して7.5%だった。月別にみると2023年5月の自然エネルギーの発電電力量の割合が最も高く、35.1%に達している(図3)。この5月には太陽光の割合が15.6%と高くなり、変動性自然エネルギー(VRE)の割合も16.5%に達している。

風力発電の発電電力量データについては、電力調査統計のデータ(電気事業者送電量と受電電力量)ではなく、電力会社が公表している電力需給データによる送電量を用いている。また、太陽光発電の発電電力量データについては、電力調査統計のデータを採用しているが、電力需給データと比較すると年間送電量で1割程度大きいため太陽光発電の割合については推計の幅があることに留意が必要である。具体的には、電力調査統計では、太陽光発電の年間発電電力量は113TWhだったが、電力需給データによる送電量では92TWhだった。住宅用太陽光(10kW未満)の推計値が3.5TWhのため、それと合わせて95.5TWhとなり、1割以上小さいため、太陽光発電の割合は9.5%となる。電力調査統計からの発電電力量の推計値は、電気事業者(小売電気事業者および一定規模以上の発電事業者)からの発電実績の報告と、電気事業者以外の事業者からの受電電力量を合計した数値のため、ダブルカウントなどにより大きめの数字になっている可能性はある。

火力発電の発電電力量は減少傾向にあり、2023年には66.6%と、前年の72.4%から減少し、2016年からは約17ポイント減少したが依然として高いレベルである。石炭火力については、2016年の30.2%から2021年は26.5%まで減少したが2023年は28.3%に増加した。LNGについては2016年の38.9%から2023年の29.0%まで一貫して減少傾向にある。一方、原子力発電は、2014年にゼロになってから、2019年には発電電力量が6.5%まで増加し、2022年には4.8%まで減少したが、2023年は7.7%に増加した。

表1: 日本の全発電電力量に占める自然エネルギーの割合の推移
(出所:電源調査統計などよりISEP作成)

電源 2016年 2017年 2018年 2019年 2020年 2021年 2022年 2023年 備考
水力 7.6% 7.6% 7.8% 7.4% 7.9% 7.8% 7.1% 7.5% 大規模含む
バイオマス 1.9% 2.0% 2.2% 2.7% 3,2% 4.1% 4.6% 5.7% 自家消費含む
地熱 0.22% 0.21% 0.22% 0.24% 0.25% 0.25% 0.25% 0.28%
風力 0.54% 0.61% 0.69% 0.76% 0.86% 0.88% 0.85% 1.0% 電力需給データ
太陽光 4.4% 5.7% 6.5% 7.4% 8.5% 9.3% 9.9% 11.2% 自家消費含む
自然エネルギー 14.7% 16.4% 17.4% 18.5% 20.8% 22.4% 22.7% 25.7%
VRE 5.0% 6.3% 7.2% 8.2% 9.4% 10.2% 10.8% 12.2%
火力 83.6% 80.8% 77.9% 75.0% 74.9% 71.7% 72.4% 66.6% 石炭、LNG、石油ほか
石炭 30.2% 30.2% 28.2% 27.8% 27.6% 26.5% 27.8% 28.3%
LNG 38.9% 38.4% 37.4% 36.0% 35.4% 31.7% 29.9% 29.0%
原子力 1.7% 2.8% 4.7% 6.5% 4.3% 5.9% 4.8% 7.7%

 

図1:日本全体の電源構成(2023年速報) 出所:電力調査統計などよりISEP作成

図2:日本の全発電電力量に占める自然エネルギーの割合の推移
(出所:電力調査統計などよりISEP作成)

図3:日本国内の全発電電力量に占める月別の自然エネルギーの割合(2023年速報)
(出所:電力調査統計などよりISEP作成)

図4: 日本国内の年間発電電力量と電源構成の推移
出所:電力調査統計などよりISEP作成

海外各国との自然エネルギーの割合の比較

自然エネルギーの電力分野の導入では、1990年代以降、EU(欧州連合)での取り組みが世界的に先行して進んでおり、EU全体での発電電力量の割合も2017年には30%を超え、2023年にはEU27か国で40%を超えて44.3%に達し、化石燃料による発電の割合32.8%を大きく上回っている。これは日本国内の自然エネルギー電力の割合の2倍近くに相当する。太陽光発電および風力発電といった変動性自然エネルギー(VRE)の割合も欧州全体で26.6%と、日本国内の約12%の2倍以上に達している。

主要な欧州各国、アメリカおよび中国そして日本の自然エネルギーによる2023年の年間発電電力量の割合の内訳を図5に示す。この図はイギリスのシンクタンクEmberが推計した世界各国の電力部門に関する2023年の最新データ[3]に基づいている。変動性自然エネルギー(風力および太陽光)VREの割合がすでに67%に達しているデンマークでは年間発電電力量に占める自然エネルギーの割合が87%に達しており、風力だけで58%ある。オーストリアでは、水力発電の割合が59%あり、風力12%やバイオマス5%と合わせて自然エネルギーの割合が84.5%に達している。スウェーデンでは69%、ポルトガルでは73%に達し、すでにドイツ(52%)、スペイン(50%)、イギリス (46%)においても自然エネルギーの割合が50%程度に達して、欧州全体の平均を上回っている。VREの割合はEU全体でも26%に達しているが、スペインでは40%に達し、ドイツでも39%を超えている。一方、原発の比率が65%を超えるフランスでは自然エネルギーの割合は26%に留まる。

図5: 欧州各国およびアメリカ・中国・日本の発電電力量に占める自然エネルギー等の割合の比較(2023年)
出所:Ember、電力調査統計などのデータよりISEP作成

EU(欧州連合)では、2050年の気候中立やグリーン・リカバリーを目指すグリーン・ディール構想を実現するためにも、野心的な温室効果ガスの排出削減目標を目指す「欧州気候法」が2021年6月に欧州議会で承認された[4]。その中では、2030年の削減目標を40%から55%に大幅に引き上げ、それに伴い自然エネルギーの導入目標も最終エネルギー消費に対して従来の32%から40%以上となった。55%削減のための新たな政策パッケージ”Fit for 55”の策定と共にEUの再生可能エネルギー指令RED IIIへの見直しも進められた結果、2023年11月に再生可能エネルギーの導入目標は42.5%まで引き上げられた。2020年の自然エネルギー導入目標はフランスを除いたEU27か国は達成をしており、2030年に向けてさらに高い目標を目指している。EU各国の自然エネルギーの導入目標は既にNECPs(National Energy and Climate Plans)という形で策定されているが、削減目標に引き上げに伴い、各国で目標の見直しが進められている。さらに、ウクライナへのロシアの軍事進攻により、欧州ではロシアに依存してきた天然ガスなどのエネルギー危機が現実のものとなり、早急なエネルギー転換の必要性にも迫られている。特に天然ガスについてはドイツなどロシアへの依存度が高い国があり、電力市場が高騰する中、暖房用や産業用の天然ガスについても高騰や供給不足が懸念されていた。そのため、欧州委員会(EC)では、ロシアからの化石燃料依存度を低減するために2022年5月に”REPowerEU”計画を発表した[5]。自然エネルギーについては2030年の導入目標を40%からさらに45%に引き上げることを提案している。その実現のため、太陽光発電については現在(2020年)から倍増して320GWに、2030年には600GWを目指すというEU太陽エネルギー戦略を策定しており、新築建築物の屋根上(ルーフトップ)太陽光の設置義務化なども検討されている。

1990年代から2023年までの欧州各国と日本の年間発電電力量に占める自然エネルギーの割合の推移を比べてみると、欧州各国では2020年に向けて1990年代から着実に自然エネルギーの割合を増やしてきたことがわかる(図6)。デンマークでは、2000年の時点ですでに17%だったが、2010年の時点で30%を超え、2023年には87%に達しており、2030年までには自然エネルギー電力が100%を超えることを目指している[6]。デンマークでは、電力システムにおける2000年以降の20年間にわたる経験から、風力および太陽光の変動性自然エネルギーVREで電力の50%以上を賄うための統合ソリューションが電力システムや電力市場において実現している。

図6: 欧州各国および日本の自然エネルギー電力の導入実績・政策目標
出所:EU統計局、EmberデータなどからISEP作成

ドイツでは2000年には7%程度だったが、その後、2010年には20%近くにまで増加し、2020年には45%に達し、2023年には53%に達している(図7)。ウクライナ危機により、ロシアへの天然ガス依存からの脱却を実現するため、2022年の新たなEEG法案(再生可能エネルギー法)では、再生可能エネルギー電力を2030年には80%以上、2035年には100%を目指すとしている。ドイツは2000年の時点ではわずか6%だった割合が2023年には53%と8倍以上になった[7]。一方で、原発の割合は2000年の29%から2023年には1%台まで低下している。原発全廃と定められた2022年末に向けて着実に減少してきたが、天然ガスの供給懸念により、廃止を予定していた原発を2023年4月まで温存する措置がとられた。ドイツ国内で産出される褐炭を含む石炭の割合は、2000年には50%を占めていたが、2023年には25%まで減少しており、風力発電の割合よりも小さくなった。

図7: ドイツ国内での自然エネルギーの発電電力量と全発電電力量に占める比率の推移
出所: AGEBデータよりISEP作成

中国では、水力発電に加えて風力や太陽光の導入がこの10年間で急速に進んだ。2023年には年間で風力発電の割合が9.4%、太陽光発電が6.2%でVRE(変動性自然エネルギー)の割合は15.5%に達している(図8)。水力も含めた自然エネルギーによる発電電力量の割合は30.9%に達している。一方、原発の割合は4.6%で、2019年以降ほぼ横ばいだったため、太陽光発電が原発の電力量を大幅に上回った。2023年の中国国内の年間発電電力量の規模(9455TWh)は、EU(27か国)全体の約2694TWh(2023年)の3.5倍あり、日本国内の約1000TWhの9倍以上である。欧州および日本の発電電力量は横ばいか減少傾向にあるが、中国では経済成長と共に増加を続けており、この10年間で2倍以上になっている。

図8: 中国の自然エネルギーおよび原発の電力量の推移
出所:China Energy Portal およびEmberデータより作成

日本国内の電力需給における自然エネルギーの割合

日本全国のエリア毎に一般送配電事業者10社により毎月公開されている電力需給データに基づき系統電力需要に対する自然エネルギーの割合などを中心に2023年(暦年)の一年間のデータを集計した。日本国内の電力需給データについてはISEPのEnergy Chartでは公表されたデータから様々なグラフでインタラクティブに分かり易くデータを分析できる[8]

日本全体の年間電力需要量に対する自然エネルギーの割合は2023年(暦年)の平均値では22.3%となり、2022年の年平均20.5%から増加した(図9)。内訳としては太陽光発電の割合が10.7% となり、風力発電の1.2%と合わせて変動性自然エネルギーVREの割合は11.9%となった。太陽光は2022年の9.6%から増加しており、水力発電の7.8%より割合が大きくなっている。バイオマス発電は前年の1.9%から2.3%に増えている。一方、2023年の原発の割合は9.0%となり、前年の5.9%から増加した。

図9: 月別の日本全国の電力需給における自然エネルギーおよび原発の割合(2023年)
出所:一般送配電事業社の電力需給データより作成

日本全体の自然エネルギーの電力需要に占める割合の月別の平均値では、2023年5月が32.5%と最も高くなっており、前年の30.3%から増加している。このときVRE(変動性自然エネルギー)の割合も最大で16.5%となり、前年4月の15.4%から増加した。その内訳は、太陽光発電が15.4%、風力発電が1.1%となっている。1日の平均値では2023年5月2日に41.2%に達しており、VREについても同日の24.2%が最大だった。自然エネルギー割合の1時間値では同じ5月3日10時台の77.4% が1年間のピークで、太陽光が59.9%に達しており、風力発電の1.2%と合わせてVREのピーク値は61.2%になっている。ちなみに風力発電のピーク値は2023年11月11日未明の4.7%だった。

電力会社(一般送配電事業者)のエリア別では、2023年(暦年)の年間電力需要量に対する自然エネルギーの割合の平均値が最も高かったのは北海道エリアの40.5%だった(図10)。太陽光が10.3%、風力が6.9%になり国内で最も高く、VRE割合は17.2%となっているが、水力発電も16.2%と大きな割合を占めている。北海道エリアはバイオマス発電の割合も6.7%と全国で最も高く、地熱発電の割合も0.3%となっている。自然エネルギー割合が第2位の東北エリアは、自然エネルギー全体の割合が40.2%に達しているが、太陽光が13.6%、風力が5.6%に達してVRE割合は19.3%で全国で最も高くなっている。水力の割合も14.3%と比較的高く、地熱発電も九州エリアに次いで1.4%となっている。2023年の東日本全体の平均では自然エネルギーの割合が21.9%と全国平均の22.3%を下回っている。これは東京エリアが14.6%に留まっていることが大きな要因となっている。一方で、VREの割合は12.1%となり、全国平均11.9%を上回っている。これは、風力発電の割合が1.9%で、全国平均の1.2%を上回っていることが要因になっている。

図10: エリア別の電力需給における自然エネルギーの割合(2023年)
出所:一般送配電事業社の電力需給データより作成

2023年の中西日本全体の自然エネルギーの割合は、22.7%と全国平均の22.3%を上回っているが、太陽光11.2%と風力0.6%を合わせてVREの割合は11.8%となっている。一方、東日本では稼働ゼロの原発が、中西日本では関西エリア、九州エリアおよび四国エリアで稼働しており、その割合はVREを大幅に上回る16.5%で、前年の10.7%からかなり増加している。自然エネルギーの割合が第3位の北陸電力エリアでは、2023年には35.9%に達しているが、太陽光は6.1%、風力の割合は0.9%でVRE割合は7.0%と比較的低い一方、水力発電の割合が26.4%と全国の中で最も高くなっている。自然エネルギーの割合が第4位の四国エリアでは、34.4%となり2022年の28.9%から増加したが、原発の割合は前年の27.9%から減少して21.7%になった。四国エリアでは、太陽光が16.6%で全国で最も割合が高く、風力2.0%を合わせたVREの割合が18.6%と東北エリアに次いで全国の中で高いレベルになっている。九州エリアでは自然エネルギーの割合は28.4%で、VREの割合は16.6%だった。このうち太陽光は15.8%で、前年の16.2%より減少しており、風力は0.8%だった。一方で、原発の割合が36.2%に達して全国で最も高くなっている。

2023年には1時間値で自然エネルギーが電力需要の100%を超えるエリアが、北海道、東北、北陸、中部、四国、中国の6エリアになった(図10)。前年の2022年は九州エリアを加えた7エリアだったが、九州エリアでは出力抑制率の増加に伴い2023年は100%を超えることがなかった(最大は92.9%)。一方、四国エリアでは、2023年5月3日10時台に自然エネルギーの電力需要に対する割合が123.1%に達した。このピーク時に太陽光が91.7%、風力が1.4%でVREの割合が93.1%だった(太陽光の最大は93.2%)。さらに、水力の26.4%、バイオマス3.7%を合わせて123.1%となっている。大都市圏でも、出力制御の始まった中部エリアで、自然エネルギーの割合が最大109.2%に達している(太陽光は最大92%)。出力抑制が実施されている九州エリアでは、1時間値で太陽光の割合がピーク時に最大83.2%だった。このとき風力は0.1%で、VRE比率が83.3%に留まっており、出力抑制も実施されていない。一方、九州エリアでは、出力抑制前のVRE比率は、最大で132.5%に達している(2023年4月9日12時台)。このとき、VREの出力抑制によりVRE比率は53.1%まで抑制されている(出力抑制率60%)。

九州エリアではVRE(太陽光および風力)の出力抑制が2018年から全国のエリアの中で実施されているが、2023年の1年間を通じたVREの出力抑制率は8.9%となり、2022年度の3.0%から大幅に増加した。九州エリアでは、2023年12月末の時点でFIT制度によりすでに1199万kWの太陽光発電が電力系統に接続しており, 風力発電の63万kWと合わせてVREの接続容量は1200万kWを超えている。さらに、九州エリアには約400万kWの原発があり、2023年は原発の稼働率が高く、電力量の割合が36.2%と高かったこともあり、VREの出力抑制はこの原発の稼働率も大きく影響していると考えられる。2023年4月頃までに東京エリアを除く他のエリアでもVREの出力抑制が始まっている。原発が稼働する四国エリアではVRE出力抑制の割合が1.6%、関西エリアが0.7%ですが、原発が稼働しないエリアとしては、北海道エリアが0.02%、東北エリアが0.75%、北陸エリアが0.53%、中部エリアが0.22%、沖縄エリアが0.17%と低く抑えられている一方で、中国エリアが3.4%とVRE出力抑制の割合が高くなっている。これまでVREの出力抑制ルールの見直しが行われ、VREのオンライン制御の活用が進みつつあるが、ルールが複雑化し電力システム全体ではまだ最適化されていない状況にある。九州エリアでは地域間連系線は有効に活用されるようになってきているが、四国エリアや中国エリア、そして関西エリアを含めた広域での需給調整が十分に行われていない状況のため、他のエリアを含めてさらなる連系線の運用の改善と連系線の増強が求められる。揚水発電が十分に活用されている九州エリアとまだ十分に活用されていないエリアがあり、まずはVREのオンライン制御の促進および最適化、火力発電の最低出力の見直し、今後は蓄電池の活用、DR(デマンドレスポンス), VPP(バーチャルパワープラント)などの活用が求められる。

【参考】

[1] 電力調査統計 http://www.enecho.meti.go.jp/statistics/electric_power/ep002/

[2] 推計では2021年10月以降の自家発、家庭用太陽光の自家消費量推計については前年値を用いているが、影響は小さいと考えられる。

[3] Ember(2024) “Global Electricity Review 2024”, https://ember-climate.org/insights/research/global-electricity-review-2024/

[4] EU委員会 “European Climate Law” https://ec.europa.eu/clima/policies/eu-climate-action/law_en

[5] REPowerEU https://ec.europa.eu/commission/presscorner/detail/en/IP_22_3131

[6] デンマーク・エネルギー庁「デンマークの電力システムにおける柔軟性の発展とその役割」https://www.isep.or.jp/archives/library/13612

[7] AGEB “STORMMIX 1990-2021” https://ag-energiebilanzen.de/

[8] ISEP Energy Chart http://www.isep.or.jp/chart/