基本問題委員会自主的分科会の審議経過について
2013年6月13日
国会エネルギー調査会(準備会)を構成する有識者チームの前身となった、基本問題委員会自主的分科会の活動を各回の概要とともに振り返ります。
(写真:第3回基本問題委員会自主的分科会(南相馬))
基本問題委員会自主的分科会について
東京電力福島第一原子力発電所事故を経た2011年10月、経済産業省総合資源エネルギー調査会基本問題委員会が初会合を迎えた。しかし同委員会では、2011年の年内は各委員が個人の考えを提示・説明しただけにすぎず、「議論」が尽くされたわけではなかった。また委員長の方針として、現状では各テーマごとの分科会方式で開催することはしないと表明した。これでは各政策課題に関する詳細な議論ができないと感じた委員の有志が、自主的分科会を立ち上げた。この自主的分科会では、個別の論点について議論をしっかりと行う場として設けられ、座長に植田和弘氏(京都大学教授)が就任した。
趣旨としては、①「これから」のエネルギー政策を考える上で、各テーマにおいて「これまで」のエネルギー政策の問題点を総点検する必要性がある、②エネルギーコンセプトからのゼロベースからの議論と転換の必要性がある、③多様で異なる立場の委員による相互応答的な議論と建設的な対話を行う、④原子力・再生可能エネルギー・省エネ・電力自由化等の個別政策の集中討議を図る、⑤これまで議論がなされていないエネルギー行政のあり方等の議論の必要性を検討する、の5点である。
基本問題委員会自主的分科会は2012年1月末に初会合を迎え、原子力について多くの議論を行い、第1回、第4回、第6回では主に技術的な側面から検討した。一方で、第2回では東京電力(株)他、原子力発電を所有する電気事業者の直面する経営的な問題に鑑み、原発と電力会社の経営問題をテーマとして扱った。また第3回は福島県南相馬市で開催し、原発と地域の構造的な課題を認識するとともに、復興に向けた動きを肌で感じ取った。再生可能エネルギーや省エネにもついても議論を深めた。
主なメンバー(肩書きは当時)
座長:植田和弘(京都大学教授)
飯田哲也(環境エネルギー政策研究所所長)
金子勝(慶應義塾大学教授)
大島堅一(立命館大学教授)
伴英幸(原子力資料情報室共同代表)
阿南久(全国消費者団体連絡会事務局長)
浅岡美恵(弁護士、気候ネットワーク理事長)
高橋洋(富士通総研経済研究所主任研究員)
枝廣淳子(幸せ経済社会研究所代表)
大林ミカ(自然エネルギー財団)
基本問題委員会自主的分科会での審議
原子力政策について(第1〜4回、第6回、番外編)
第1回は、原子力発電所に関する技術的な課題について伴英幸氏(原子力資料情報室共同代表)が報告を行った。技術基準の再策定はもちろんだが、事故後のマネージメント、防災計画、規制機関の独立、安全規制のガバナンス構築について議論が波及した。
第2回では、金子勝氏(慶應義塾大学教授)から有価証券報告書等から分かる原発の経営面からの分析について報告をし、大島堅一氏(立命館大学教授)から経済性について補足した。
第3回は南相馬市で開催し、①原発と地域の構造的課題、②除染・被害補償問題、③地域再生に向けての3つを議題に討論を行った。大島堅一氏、除本理史氏(大阪市立大学准教授(当時、現 大阪市立大学教授))、飯田哲也氏(環境エネルギー政策研究所所長)が報告を行い、桜井勝延市長や南相馬市民も議論に参加した。
第4回は原発の再稼働問題について、技術的な面及び政策的観点から澤田哲生氏(東京工業大学原子炉工学研究所)、伴英幸氏、飯田哲也氏が報告を行った。技術的な課題に加え、過酷事故対策など安全対策をどう行っていくかという体制への議論もあった。同時に電力需給問題についても政策手法の導入や情報収集の一層の深化が提起された。
第6回は第4回に引き続き、大飯原発の再稼働問題に焦点を当てた。①大阪府市統合本部で検討されている再稼働の7条件、②再稼働の必要性の認識、③議論の活用の3つを議論した。
エネルギー政策の選択肢、省エネ、経済モデルについて(第7回、第9〜10回)
第7回は、基本問題委員会の事務局から提示された3つの選択肢について議論した。それと同時に、選択肢の提示に当たっては、「数字」の選択肢ではなく、「政策」と「システム選択」の選択肢で捉えるべきだと言う視点を共有した。省エネについては平田仁子氏(気候ネットワーク)から一律にすることの問題点と深堀の可能性があることが指摘された。また第9回は、第7回の議論を更に掘り下げた。
第10回では、濱崎博氏(富士通総研)から経済モデルの仕組みを説明すると同時にその問題点について指摘がなされた。経済モデルの前提条件(経済状況(GDP、産業別生産量、人件費、電力料金等)、内生化する数値など)によって試算が変わることに言及した。
再生可能エネルギーについて(第5回、第8回、第9回)
第5回では、①固定価格買取制度(Feed-in Tariff)、②コストと負担、③地域主体の事業化に向けた制度の3つを論点として討論を行った。再生可能エネルギーの普及を左右することにつながる細部の論点に留意しつつ、全体の方向性や考え方に一貫性を持たせることが必要であることが参加者に共有された。
第8回では、第5回の議論、調達価格等算定委員会の議論の動向を掘り下げながら、固定価格買取制度について①買取価格・期間についてどの程度を基準にすべきか、②費用負担の考え方について議論した。買取価格についてはIRR(内部収益率)をどうすべきかということと同時に、その基礎となるコストをどう考えるのかを更に掘り下げた。また第9回では、泊みゆき氏(バイオマス産業社会ネットワーク)、梶山恵司氏(富士通総研)からバイオマスについての留意点が提示された。
基本問題委員会自主的分科会から国会エネルギー調査会(準備会)へ
10回の議論を経て、超党派の国会議員有志による議員連盟「原発ゼロの会」とともに、国会エネルギー調査会(準備会)を設立して、これまでの議論を継続して行うこととなった。原子力政策についての議論は注力すると同時に、自主的分科会で積み残した電力システム改革と国民的議論のあり方、あるいは電源立地自治体の課題などについても議論している。
なお、第20回の国会エネルギー調査会(準備会)より、名称を「基本問題委員会自主的分科会」から「国会エネルギー調査会(準備会)有識者チーム」へと変更し、今に至っている。
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