文字サイズ
標準
拡大

【プレスリリース】再生可能エネルギー電気の固定価格買取制度 平成25年度調達価格改定案に対する意見

再生可能エネルギー電気の固定価格買取制度 平成25年度調達価格改定案に対する意見

~発電のコスト構造が異なる場合には、新たな区分を設けるべき~

2013年3月15日

2012年7月1日からスタートした再生可能エネルギー電力の固定価格買取制度「電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法」(以下、本制度という)について、2013年1月21日から4回にわたり開催された調達価格等算定委員会(以下、本委員会という)において、平成25年度の調達価格等が検討された。その結果、3月11日に以下の表の様な案が公表され、3月12日には意見募集(パブコメ)が3月22日を期限に始まった。平成25年度の調達価格はこの意見募集を受けて、3月中に経産大臣により決定されることになる。

 

平成24年度調達価格 平成25年度調達価格(案)
太陽光発電(10kW未満) 42円/kWh 38円/kWh
太陽光発電(10kW以上) 40円/kWh(税抜) 36円/kWh(税抜)
太陽光発電 平成24年度の調達期間はそのまま据え置き
風力、地熱、中小水力、バイオマス 平成24年度調達価格及び調達期間をそのまま据え置き

 

本制度そのものに見直すべき点が多く、環境エネルギー政策研究所からも複数回、意見書等を発表してきた[1]。本委員会のミッションは、主に本制度の調達価格と調達期間を算定することであるため、本意見書ではこれら調達価格等と、その調達価格を算定する根拠とすべき基礎情報の開示等に焦点を当てた意見とする。

 

1. 本制度に関する基礎情報は、タイムリーにすべて公開すべき

 

本制度による認定設備の情報は、本委員会での検討時点では、非常に限定的にしか公開されておらず、3月14日にようやく2012年12月末現在データが公開されるなど、その公開スピードは適切とは言えない。認定設備情報(発電所名、所在地、発電事業者名、発電出力、認定日、設備費用等)はすべてタイムリーに公開することにより、第三者からも検証可能な仕組みとすべきである。

 

2. 発電のコスト構造が異なる場合には、新たな区分を設けるべき

 

発電規模や燃料が異なることにより、その発電コスト構造が異なるものについては、新たな区分を設け、適切な調達価格、調達期間を定めるべきである。

上記の項目1に関連して詳細な情報開示が無い場合、コスト構造が異なるか否か、新区分を必要とするか否かを判断することも出来ないため、情報開示はすべての基礎となることを再度強調したい。ただし、新たな区分設定が事業者の経済行動をむやみに歪めるものであってはならないため、調達価格以外にも例えば電気事業法保安規制など、事業者に誤ったインセンティブを与えぬよう細心の注意が必要である。

以下、特に新区分が必要なものとして、「太陽光発電(10kW以上)」「バイオマス発電(石炭混焼)」「風力発電(洋上)」の3点を挙げる。

 

太陽光発電(10kW以上)

本委員会の資料[2]で明らかになったように、10kW以上の太陽光発電はその規模により、システム費用(太陽光パネル、パワコン、架台、工事費を含む)は大きく異なる。現時点、情報開示が十分ではないため、現行では10kW以上一律の調達価格が規模によって太陽光発電普及の障害となり、事業規模による不公平を招く可能性を排除できない。本委員会で提示された調達価格36円/kWh(税別)は1000kW以上のシステム費用(28万円/kW)をベースにしているが、1000kW未満のシステム費用の平均値は40万円/kWhを超えている。

そもそも平成24年度の調達価格を決定する際の本委員会の昨年4月の意見書には「10kW以上については、当委員会での今般の審議においては、発電規模が大型化しても顕著なスケールメリットは認められなかったため、更に細かな区分は設けないこととした。」と書かれており、本委員会で規模によるコストの違いが明確になったからには、「区分」を設けるのが適切な判断であり、本制度の趣旨にそったものとなる。

 

バイオマス発電(石炭混焼)

35万kWの石炭混焼バイオマス発電設備が1件認定されていることが、設備認定データから明らかになっている。石炭混焼設備は発電設備全体の新規投資は不要であり、他のバイオマス発電とは明らかにコスト構造が異なる。(他のバイオマス発電と比較して、著しく低コストで発電できる可能性がある)

たとえ1件であってもそのコスト構造を開示すべきである。(現に、木質バイオマス発電とメタン発酵バイオマス発電はいずれも1件のみであるがコスト情報が開示されている)そのうえで、そのコスト構造に適した調達価格を新たに設定すべきである。石炭火力発電はCO2排出が非常に多い発電である。本制度の設備認定を受けることにより採算性が向上し、その運転が促進されることとなってはならない。

 

風力発電(洋上)

本委員会の現在の検討手法としては、認定設備の発電コスト実績データに基づいた調達価格を算定している。しかしながら、この手法では未だ設備実績のない発電種類に対しては、新しく調達単価が設定されないという欠点を持つ。この例が洋上風力発電である。このような新しい種類の発電設備に対しては、積極的に発電コストを調査することにより、適切な調達価格等を算定し、普及を促すべきである。

 

3. 太陽光発電(10kW以上)のコスト把握対象を広げるべき

委員会の議論では、太陽光発電(10kW以上)の「資本費」においては、システム価格(太陽光パネル、パワコン、架台、工事費を含む)と土地造成費の2項目だけが、そのコスト把握対象となっている。が、平成24年度調達価格を算定する際には、系統連系費用(昇圧費用、電源線)もコストデータ把握対象であった。平成25年度調達価格算定に際しても、システム価格と系統連系費用を合計した、規模別のコスト分布を把握したうえで、調達価格を算定すべきである。


[2] 調達価格等算定委員会(第10回) 配布資料

 

問い合わせ先: 認定NPO法人 環境エネルギー政策研究所 お問い合わせフォーム