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【プレスリリース】エアコン冷媒、HFC32への転換は本質的解決ではない

【声明・共同プレスリリース】

エアコン冷媒、HFC32への転換は本質的解決ではない

~自然冷媒への転換こそ真の持続可能な社会への道筋~

2012年10月11日
環境エネルギー政策研究所

気候ネットワーク

ストップ・フロン全国連絡会

 

 現在、地球温暖化を加速するフロン類の対策については、産業構造審議会と中央環境審議会の合同会合が開かれ、今後の冷媒転換、漏洩対策、回収促進についての議論がなされているところである。しかし2009年からはじまった議論は長期化し、フロン類対策に関する用途規制や経済的誘導策などの政策議論が出ては消えるという状況が繰り返されている。こうした中、具体的な対策となる政策実現もないままに、一部メーカーなど民間の動きが先行しているのが現状である。民間の動きの中には、CO2冷媒ショーケースなど自然冷媒への転換など歓迎すべき動きもある一方、新たなHFCへの転換など憂慮すべき動きが出てきている。

 とりわけ、空調分野におけるHFC32への転換は、フロンメーカーであり空調機メーカーであるダイキン工業が今秋からHFC32冷媒のエアコンを発売すると発表し、すでに海外でも途上国のHCFC22の消費規制にあわせて省エネ型エアコンとして導入をすすめているとのことである。現在、エアコンの冷媒には、主にHFC410Aと呼ばれる混合冷媒が使われている。2000年前後から、かつて空調冷媒の主流であったHCFC22から、オゾン層保護対策による規制強化によって転換が進められてきた。もともとHFC410Aは、HFC32を50%、HFC125を50%混合して「不燃性」としてつくられた冷媒であり、これまでHFC32は単一冷媒として使われてこなかった。今、HFC32を単一冷媒として使うのは、単に混合をやめるとの該社独自の判断に基づくものであり、何ら新しい技術とは言えない。

 HFC32の問題は大きく二つある。HFC32は、「極めて可燃性・引火性の高いガス/加圧ガス:熱すると爆発するおそれ/常温では極めて安定であるが、裸火等の高温熱源に接触すると熱分解して、フッ化水素(HF)およびフッ化カルボニル(COF2)等の毒性ガスを発生する[i]」といった性質を持ち、分解した際に猛毒のフッ化水素を発生するなど人体にとって非常に危険性が高い。

 第二に、HFC32の地球温暖化係数(GWP)は、IPCC第四次レポートの積分時間100年でみても675と高いが、20年値で見れば2330もあり、非常に強力な温室効果ガスである。現在法律で定められている100年値で見れば、HFC410Aに比べ3分の1程度の温室効果と言えるが、20年というタイムスケールで見た場合には決して小さい温室効果とは言えない。短期的に見た場合の温室効果ガスの大幅削減も喫緊の課題であることから、HFC32のような高い温暖化係数を持つガスへの転換は、本来あるべき対策の先送りにしかすぎない。空調機の急速な普及が進む新興国において、このように強力な温室効果ガスが蓄積されることは、世界全体の温暖化対策として大きなマイナスとなる。

 フロン類(Fガス)は、その化学的特性として、安定性が高ければ人体への影響は少ない反面、オゾン層破壊や地球温暖化の原因となる。一方、安定性を低くすれば、地球温暖化への影響は小さくなる反面、フッ化水素など猛毒の物質に分解され、人体や環境中への影響は大きい。今後、持続可能な社会を目指す上で、フロン類(Fガス)からの脱却を図り、新たな技術開発を促すためにも自然冷媒への転換を政策的に誘導していくことこそ、今求められている。

以上


[i]日本フルオロカーボン協会「化学物質等安全データシート(MSDS)」2011年8月11日改訂版

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気候ネットワーク東京事務所

TEL:03-3263-9210 FAX:03-3263-9463