【プレスリリース】革新的エネルギー・環境戦略、とくに「原発ゼロ」に関する意見
2012年9月18日
枝野幸男 経済産業大臣 殿
総合資源エネルギー調査会 基本問題委員会 御中
1. 革新的エネルギー・環境戦略、とくに「原発ゼロ」に関して
国民の声を反映して、曖昧なかたちとはいえ「原発ゼロ」という表現が入ったことは大きな政治決断だと評価いたします。しかしながら、その論理には、いくつか致命的な是正すべきポイントがあるため、ここに提案申し上げます。
(1)是正すべきポイント その1
『革新的エネルギー・環境戦略』に明記された以下の「原発に依存しない社会の実現に向けた3つの原則」に、もう一つの大切な原則を追加すべきである。
- 原則①:40 年運転制限制を厳格に適用する
- 原則②:原子力規制委員会の安全確認を得たもののみ、再稼働とする
- 原則③:原発の新設・増設は行わない、
に加えて、以下のもう一つの大切な原則を追加すべきである。
- 原則④:国民的な合意に基づいて、使用済み核燃料の総量抑制を定める
(2)是正すべきポイント その2
『革新的エネルギー・環境戦略』には現実的なロードマップがない。とくに、現在、ほぼ全ての原発が停止している現実から出発して、国民的な合意のもとで「原発ゼロ」にどのように向かってゆくのか、政治的・財務的・経済的に現実的な道筋と政治/政策的な措置を検討すべきである(参考図およびISEPプレスリリース参照)
2. 枝野大臣「建設途中の原発」への建設継続容認発言への疑問
報道によれば、枝野経産大臣は「建設中の3原発のうち、Jパワー(電源開発)大間原発と中国電力島根原発3号機の建設継続は容認」とご発言されたと伝えられる(毎日新聞9月15日)。この発言の真偽を確認されたい。仮に真であれば、以下の疑問がある。
(1)経産大臣の一存で容認してよいのか?
- 再稼働の条件としている「ストレステスト」への対応は完了しているのか?
- 原子力規制委員会がこれから安全基準の見直しする以上、設置許可はいったん白紙とすることが、政治的に当然の判断ではないか。
(2)新しい原子力規制委員会がこれから発足というタイミングの悪さ
- 今後、安全性の判断をする新しい原子力規制委員会および規制庁が発足する直前に、経済産業大臣が「建設続行容認」(設置許可有効)を発言できるのか?形式的な法妥当性ではなく、道議的・政治的な無責任を問いたい。
(3)新戦略の原則②と原則③に反し、「2030年代原発稼働ゼロ」を困難とする
- 「原発ゼロ」決定の直後に、明らかに原則に反する「容認」発言は、国民の意思をないがしろにする政治的に不誠実な対応ではないか。
(4)J-POWER大間原発は「全炉心MOX」であり、核燃料サイクル見直しを困難とする
- 核燃料サイクルは政策合理性と実現性をまったく欠いたもので、今後の原子力政策見直しに大きな禍根を残す