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【特集】新しいエネルギ―政策の選択肢

■ 「革新的エネルギー・環境戦略」が決定されました。今後の具体的政策を注視しよう。

これまでの国民的議論などを踏まえてエネルギー・環境会議は2012年9月14日に「革新的エネルギー・環境戦略」を決定しました。この戦略の第一の柱の「原発に依存しない社会の一日も早い実現」において「2030年代に原発稼働ゼロが可能とするよう、あらゆる政策資源を投入する」と宣言したことは、これまでの原発依存のエネルギー政策からの方向転換として一定の評価ができる一方、核燃料サイクルの議論を先送りしたまま、明確に「原発ゼロ」の社会の実現時期やその実現方法を示していないことには大きな問題があります。ISEPからの意見はこちら。また、本戦略の検討過程で提出された経産省資料への反論はこちら。ISEP所長から基本問題委員会のへの提出意見はこちら。今後、「エネルギー基本計画」の見直しや、「グリーン政策大綱」の策定など、具体的な政策を注視していく必要があります。

■ 「国民的議論」の結果と政策への反映に注目しよう

8月中旬まで行われてきたエネルギー・環境の選択肢に関する「国民的議論」が一通り終わりました。意見聴取会、パブリックコメント、討論型世論調査など多くの国民からの意見が集まっています。国家戦略室では、これらの国民からの意見の取扱いについて、「国民的議論に関する検証会合」を開催し、その意味を精査しています。意見聴取会では7割の出席者が原発「ゼロシナリオ」を選択し、9万件近い意見が集まったパブリックコメントでは実に87%が「ゼロシナリオ」を選択し、その多くが即時の脱原発を希望しています。政府や与党民主党では、これらの結果を受けて、将来のエネルギー政策における原発ゼロの実現性について9月上旬をめどに検討を始めています。こISEPも参加するeシフトでも【市民版「エネルギー基本計画」】(8/28)や【声明「今こそ原発ゼロの選択を」】(9/3)を発表しています。これまでの「国民的議論」が国のエネルギー政策にどのように反映されるかしっかり注目していきましょう。

■ “国民的議論”に参加し、エネルギ―の未来を選ぼう

“国民的議論”について、環境エネルギー政策研究所(ISEP)はこれまでも基本問題委員会の場などで、従来通りのパブリックコメントや意見聴取会 ではなく、さまざまな手法で時間をかけた「熟議のプロセス」を作るべきと主張してきました。しかしながら、政府はわずか1ヶ月という短い期間に従来通りの やり方で議論を行うことを決めました。私たちは今後もさまざまな手法でエネルギー政策についての議論を深め熟議を続けていきますが、同時に多くの方と共に パブリックコメントなどで意見を述べていくことも重要と考えます。パブリックコメントの〆切は8/12(日)18時です。

パブコメで未来を変えようホームページ(「原発ゼロ・パブコメの会」)ではパブリックコメントの書き方を分かりやすく紹介しています。ISEPが参加している「eシフト(脱原発・新しいエネルギー政策を実現する会)」が呼びかけ団体の一つです。

■ ISEP「エネルギー・環境に関する選択肢」に対する意見(2012年8月10日)。

ISEPから提出した意見の概要、意見およびその説明はこちらです。意見の詳細説明はこちら。エネルギー・環境会議で検討中の「革新的エネルギー・環境戦略」および総合資源エネルギー調査会基本問題委員会で検討中の「新しいエネルギー基本計画」への提言にもなっています。

■ 新しいエネルギ―政策の選択肢

東京電力福島第一原発事故後を受けて始まった、エネルギ―政策の見直しが大詰めになっています。6月29日、政府の「エネルギ―・環境会議」は、「エネルギ―・環境に関する選択肢」を発表しました。2030年に発電量における原子力発電所の割合を(1)0%、(2)15%、(3)20-25% のいずれかにするという観点から、3つのシナリオが提示されています。この3つのシナリオについては、そもそも私たちがめざすべき社会像や価値観などの議論が先で、また政策の選択(=エネルギ―システムの選択)を重視すべきであり、数字は結果として出てくるものではないかという問題があります。また、「20-25%」は9-16基の原発の新増設を前提とするものであり、「15%」についても立て替えなどによる新規建設の恐れを含むものです。さらに、使用済み核燃料については「0%」シナリオのみが「直接処分」としており、それ以外のシナリオは「再処理」路線継続という選択肢を残したままです。
政府はこれらの選択肢について国民的議論を行い、8月末に新たなエネルギ―政策を定めるとしています。国民的議論に関しては、7月2日〜7月31日(8月12日まで延長されました)までパブリックコメントを募集し、同時に全国11ヶ所で意見聴取会が行われる予定です。

エネルギー・環境の選択肢に関する特設ページ(国家戦略室)

■ エネルギ―政策の見直しへの提言

ISEPでは、単独あるいは共同で、これまでも多くのエネルギー政策に関する提言を行ってきました。この新しいエネルギー政策の選択肢を考えるうえでも、参考にしていただければと思います。

3.11後のエネルギー戦略No.5「原子力版船中八策」
自然エネルギー白書2012
– エネルギーシナリオ市民評価パネル-報告書「エネルギー・環境のシナリオの論点」
– エネルギーシナリオ市⺠評価パネル-「発電の費用に関する評価報告書」
eシフト声明「原発ゼロシナリオ+省エネ/再エネ強化で強化で持続可能な社会を」

■ エネルギ―政策を見直すさまざまな議論の場

経済産業省資源エネルギー庁が有識者から意見を聞く場として2011年10月に設置したのが、総合資源エネルギー調査会基本問題委員会です。2012年6月までに29回の会合があり、ISEP所長の飯田も委員として議論に参加してきました。
2012年2月からは、ISEPが事務局となり、この基本問題委員会の有志で基本問題委員会自主的分科会を開催してきました。3月には国会でも与野党の超党派議員による「原発ゼロの会」が「国会総合資源エネルギー調査会(仮称:国会エネ調)」の設置等を目指すことになり、並行して、両者の共同によるオープンな議論の場として「国会エネルギー調査会(準備会)」を開催しています。
また、エネルギーの今後について、日本に暮らす人が広くオープンに議論する場として2011年7月から始まったのが、「みんなのエネルギ―・環境会議(MEEC)」です。これまで、東京、京都、札幌、広島、若者編、佐賀など、全国各地で開かれてきました。これらの場での議論も参考にしていただければと思います。

基本問題委員会(経済産業省)
基本問題委員会自主的分科会:過去の開催映像はこちら
・国会総合資源エネルギー調査会(準備会):過去の開催映像はこちら
みんなのエネルギ―・環境会議(MEEC)

■ 第3回みんなのエネルギー・環境会議(MEEC)を開催
第3回みんなのエネルギー・環境会議(MEEC)を8月5日に開催しました。詳しくはこちらをご覧ください。