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「永続地帯2023年度版報告書」の公表(プレスリリース)

2022年度は風力発電の伸びが太陽光発電の伸びを上回り、秋田県を含む4県がエネルギー自給率50%を超える-「永続地帯2023年度版報告書」の公表

2024年6月28日

千葉大学倉阪研究室 + NPO法人環境エネルギー政策研究所

千葉大学倉阪研究室とNPO法人環境エネルギー政策研究所は、日本国内の市町村別の再生可能エネルギーの供給実態などを把握する「永続地帯」研究を進めています。「永続地帯」研究の最新結果では、2023年3月末時点で稼働している再生可能エネルギー設備を把握し、その設備が年間にわたって稼働した場合のエネルギー供給量を推計しました(一部は実績値を採用)。今回の試算の結果、以下の事実が明らかになりました。

  1. 2022年度は風力発電の伸び率(8.9%増)が太陽光発電の伸び率(7.4%増)を上回りました。これらに牽引され再生可能エネルギー電力は6.3%増加しました。固定価格買取制度の対象外である、再生可能エネルギー熱供給もバイオマス熱利用の伸び(13.4%増)に支えられ7.5%増加しました。再生可能エネルギーの供給量は2011年度に比べて2022年度は約4.3倍になりました。(表1)
  2. 地域的エネルギー自給率(地域の再生可能エネルギー供給が民生・農林水産業用エネルギー需要に占める割合)の都道府県別ランクで秋田県が前年度に続いて1位となりました。秋田県を含む4県が自給率50%を超えました。自給率ランク①秋田県58.3%、②大分県55.6%、③群馬県51.8%、④鹿児島県51.2%、⑤福島県48.7%、⑥宮崎県47.4%、⑦三重県46.8%、⑧栃木県44.3%、⑨熊本県42.5%、⑩茨城県42.2%
  3. 域内の民生・農林水産業用エネルギー需要を上回る地域的な再生可能エネルギーを生み出している市町村(エネルギー永続地帯、地域エネルギー自給率が100%を越える自治体)の数が、2022年度に216になりました。2011年度には50だったところ、2022年度に3倍になったことになります。また、域内の民生・農水用電力需要を上回る量の再生可能エネルギー電力を生み出している市町村(電力永続地帯)は、355に増えました。
  4. 日本全体での地域的な再生可能エネルギー供給は、2011年度に民生+農水用エネルギー需要の3.8%でしたが、2022年度には20.3%まで増加しました。
  5. エネルギー永続地帯市町村のうち、食料自給率も100%を超えた市町村(永続地帯)は、2022年度に116市町村になりました。(表2)

表1 再生可能エネルギー供給の推移(全国)

注)2020年度から2022年度の数値は今回集計した数値。2022年度/2011年度を算出するために用いた2011年度の値は、「永続地帯2014年度版報告書」(2015年3月公表)の数値。TJ(ペタジュール)=1012J

表2 永続地帯市町村一覧(住み続けるために必要なエネルギーと食糧を地域で生み出すことができる市町村)

【北海道:14】稚内市、紋別市、茅部郡森町、檜山郡上ノ国町、久遠郡せたな町、磯谷郡蘭越町、虻田郡ニセコ町、苫前郡苫前町天塩郡幌延町、有珠郡壮瞥町、勇払郡安平町、様似郡様似町、河西郡更別村、白糠郡白糠町、【青森県:8】つがる市、西津軽郡深浦町、北津軽郡中泊町、上北郡七戸町、上北郡六戸町、上北郡横浜町、上北郡六ケ所村、三戸郡新郷村、【岩手県:5】八幡平市、岩手郡雫石町、岩手郡葛巻町、九戸郡軽米町、二戸郡一戸町、【宮城県:5】刈田郡蔵王町、刈田郡七ケ宿町、柴田郡川崎町、伊具郡丸森町、黒川郡大郷町、【秋田県:9】能代市、湯沢市、鹿角市、由利本荘市、潟上市、にかほ市、山本郡三種町、山本郡八峰町、雄勝郡東成瀬村、【山形県:3】西村山郡朝日町、最上郡大蔵村、飽海郡遊佐町、【福島県:5】南会津郡下郷町、河沼郡柳津町、西白河郡矢吹町、東白川郡鮫川村石川郡浅川町、【茨城県:4】北茨城市、稲敷市、桜川市、行方市、【栃木県:4】那須烏山市、塩谷郡塩谷町、那須郡那須町、那須郡那珂川町、【群馬県:5】吾妻郡長野原町、吾妻郡嬬恋村、吾妻郡高山村、吾妻郡東吾妻町、利根郡昭和村、【千葉県:2】香取郡神崎町、長生郡長南町、【新潟県:1】中魚沼郡津南町、【富山県:1】下新川郡朝日町、【石川県:3】珠洲市、羽咋郡志賀町、羽咋郡宝達志水町、【長野県:6】大町市、南佐久郡小海町、南佐久郡川上村、上伊那郡飯島町、上水内郡信濃町、下水内郡栄村、【愛知県:1】田原市、【三重県:1】多気郡多気町、【鳥取県:2】西伯郡大山町、西伯郡伯耆町、【岡山県:7】真庭市、美作市、苫田郡鏡野町、勝田郡奈義町、久米郡久米南町、久米郡美咲町、加賀郡吉備中央町、【広島県:1】山県郡北広島町、【山口県:1】美祢市、【徳島県:1】阿波市、【愛媛県:2】上浮穴郡久万高原町、西宇和郡伊方町、【高知県:1】幡多郡大月町、【福岡県:3】田川郡赤村、京都郡みやこ町、築上郡上毛町、【熊本県:11】菊池市、玉名郡和水町、阿蘇郡小国町、阿蘇郡産山村、阿蘇郡高森町、阿蘇郡西原村、上益城郡甲佐町、上益城郡山都町、球磨郡錦町、球磨郡水上村、球磨郡相良村、【大分県:2】豊後大野市、玖珠郡九重町、【宮崎県:2】串間市、児湯郡川南町、【鹿児島県:6】南九州市、薩摩郡さつま町、出水郡長島町、姶良郡湧水町、曽於郡大崎町、肝属郡南大隅町

「永続地帯市町村」:域内の民生・農水用エネルギー需要を上回る量の再生可能エネルギーを生み出している市町村であって、カロリーベースの食料自給率が100%を超えている市町村 ※ 赤字は今回新たに永続地帯となった市町村

本件連絡先 contact @sustainable-zone.com(千葉大学 倉阪秀史、NPO法人環境エネルギー政策研究所 松原弘直)