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【速報】国内の2020年度の自然エネルギー電力の割合と導入状況

【速報】国内の2020年度の自然エネルギー電力の割合と導入状況

2020年度の日本国内の年間発電電力量に占める自然エネルギーの割合は21%に達した。太陽光と風力を合わせた変動する自然エネルギー(VRE)の割合も約10%となっている。日本国内でも太陽光発電を中心に変動する自然エネルギー電力の割合が地域によっては急速に増加しつつある。2020年末の時点で日本では太陽光発電の累積導入量が約7000万kW(パネル容量DCベース)に達しており[1]、中国、アメリカに次ぐ世界第三位の太陽光発電の累積導入量になっている。系統接続された太陽光発電の設備容量(パワコン容量ACベース)ではFIT制度による導入状況から2020年度末で約6100万kWとなった[2]。そこで、日本国内で自然エネルギーがどれだけ導入されているかを評価するため、年間発電量に占める自然エネルギーの割合、FIT制度で導入された自然エネルギー発電設備の容量、電力システムに対する自然エネルギー電源の導入状況などについて、2020年度末までの最新データを速報値として示す。なお、2020年度の全国のエリア別の電力需給の状況については、こちらのレポートを参照。

年間発電電力量に占める自然エネルギーの割合

資源エネルギー庁が公表している電力調査統計などを集計することで日本国内の年間発電電力量に対する自然エネルギーの割合を推計した。この電力調査統計は、電気事業者の主に出力1MW以上の発電設備のデータを集計し、他事業者からの受電量や自家発電の自家消費の発電量なども調査した統計である[3]。ただし、この電力調査統計は電力自由化の影響で2016年度以降の統計データの集計方法が大幅に見直されており、現状では風力発電のデータに一部不整合があると考えられるため、一般送配電事業者が毎月公表している電力需給データ(1時間データ)から推計した。また、太陽光発電についても、電力調査統計、一般送配電事業者の電力需給、FIT買取電力量の各種データがあり、年間発電電力量で1割程度のばらつきがあるが、過去のデータとの比較を行うために、ここでは電力調査統計のデータを採用している。さらにいずれの統計データにも住宅用太陽光の自家消費分のデータは集計されていないため、FIT制度での送電量から自家消費率(30%)を仮定して推計している。

日本国内での2020年度の自然エネルギーによる年間発電電力量の割合を推計したところ前年度から約2ポイント増加して21.2%となった(図1)。日本国内では2012年度まで自然エネルギーの年間発電電力量の割合は約10%程度で推移していたが、特にFIT制度による自然エネルギー発電設備の導入により2010年度と比較して2020度には自然エネルギーの年間発電電力量は約1.9倍も増加した。最も増加した自然エネルギーは太陽光発電で、国内の年間発電電力量の8.9%に達し、前年度の7.6%から約1ポイント増えている。これは水力発電の割合(7.8%)を上回るとともに、第5次エネルギー基本計画の2030年度のエネルギーミックスとして示されている太陽光発電の導入目標にすでに達している。その結果、2010年度と比べると太陽光発電の年間発電電力量は約22倍にもなっており、変動する自然エネルギー(VRE)の割合は太陽光と風力を合わせて9.8%となった。太陽光以外の自然エネルギー発電(小水力、風力、地熱、バイオマス)の年間発電電力量が占める割合についても徐々に増加している。バイオマス発電の割合は2.8%まで増加して、年間発電量は2010年度と比較して2.4倍も増加している。海外では一般的に太陽光発電よりも導入が進んでいる風力発電の割合は、日本ではようやく0.9%で年間発電電力量は太陽光発電の約10分の1にとどまっているが、2010年度と比べると2.2倍となっている。2020年度の自然エネルギーの発電電力量を月別にみると2020年5月の割合が最も高く、29.8%に達しており、水力が11.5%に対して太陽光が13.6%に達している。その結果、2020年度の変動する自然エネルギー(VRE)の割合は14.5%に達する。

原子力発電は、2014年度の年間発電量ゼロから九州、関西、四国での再稼働が進んだ結果、2019年度には6%まで発電電力量が増えていたが、2020年度は3.7%まで減少した。その結果、原発の年間発電電力量は自然エネルギーの2割未満である。

図2に示す通り日本の電源構成においては化石燃料の占める割合は大きく、2020年度の年間発電電力量全体の約4分の3にあたる75.1%に達するが、その割合は前年度から微増している。2020年度の内訳は天然ガス(LNG)が35.9%と最も割合が高く横ばいであるが、石炭は26.7%を占めており減少する傾向である(表1)。石炭火力については効率の悪い発電設備をフェイドアウト(全て廃止)する必要があり、政府(経産省)によりその検討が始まったが、高効率の石炭火力発電設備が2030年度以降も残ることになり、長期的にロックインすることが懸念される。パリ協定に整合するエネルギー政策としては、欧州各国のように全ての石炭火力を2030年に向けて如何に早くフェイドアウトできるかが課題である。

図1:日本国内での自然エネルギーおよび原子力の発電量の割合のトレンド
出所:資源エネルギー庁の電力調査統計などからISEP作成

図2:日本国内の電源構成(2020年度の年間発電電力量)
出所:資源エネルギー庁「電力調査統計」などからISEPが作成

表1:日本国内の電源構成の推移
出所:資源エネルギー庁「電力調査統計」などからISEPが作成

電源種別

2017年度 2018年度 2019年度 2020年度
LNG(天然ガス) 38.6% 36.7% 35.1% 35.9%
石炭 29.0% 28.2% 28.2% 26.7%
石油など 12.7% 11.5% 11.5% 12.5%
原子力 3.0% 6.0% 6.0% 3.7%
水力 7.9% 7.5% 7.7% 7.8%
バイオマス 2.1% 2.4% 2.8% 3.4%
地熱 0.2% 0.2% 0.2% 0.3%
風力 0.6% 0.7% 0.8% 0.9%
太陽光 5.8% 6.7% 7.6% 8.9%
自然エネルギー 16.7% 17.5% 19.2% 21.2%
VRE 6.4% 7.4% 8.4% 9.8%
化石燃料 80.3% 76.4% 74.8% 75.1%

日本国内の電源構成の推移を1990年代から図3に示す。総発電電力量はピーク時(2007年)から約2割減少している。自然エネルギーの年間発電電力量は、2010年度まで総発電電力量の10%で推移してきたが、2020年度まで21%とほぼ倍増した。3.11以降、原子力発電の発電電力量は激減し、3.11前の20%以上から4%未満と5分の1以下となっている。化石燃料による火力発電の割合は、3.11後に約90%にまで上昇したが、70%台に減少してきている。

図3: 日本国内の電源構成(年間発電電力量)の推移
出所: 電力調査統計データなどからISEP作成

 日本国内の自然エネルギー発電設備(大規模水力発電を除く)の累積導入量を図4に示す。1990年台は、国内の自然エネルギーは大規模水力発電が主力でそれ以外の導入量はとても小さかった(500万kW程度)。2000年台に入り、2003年からRPS制度により一部の「新エネルギー」の導入が進み、2009年からは太陽光の余剰電力に対するFIT制度がスタートして、2011年度までには大規模水力発電以外の自然エネルギー発電設備も3倍程度になった(1500万kW程度)。2021年からスタートした全量全種を対象としたFIT制度により、太陽光発電は2010年度から2020年度の10年間で設備容量は約16倍の6100万kWとなり、自然エネルギー発電設備(大規模水力を除く)は7600万kWに達した。その中で、風力発電の累積導入量は450万kW(ほとんど陸上風力)で、10年間で約1.8倍となったが、太陽光発電の設備容量の14分の1に留まる。バイオマス発電の累積導入量は約600万kWで、10年間で木質バイオマスを燃料とする設備が増加して約1.8倍となった。地熱発電および小水力発電については、小規模な設備の新規導入が進んだが、リプレースも多く、地熱発電は約50万kW、小水力発電は約400万kWと累積導入量はほとんど増加していない。

図4: 日本国内の自然エネルギー発電設備の累積導入量の推移
出所: 資源エネルギー庁データなどからISEP作成

FIT制度による自然エネルギーの導入状況

2012年7月にスタートしたFIT制度により事業認定された設備容量は、FIT制度開始前からの移行認定を含み2020年度末までに1億700万kWになっているが、その内75%の約8050万kWが太陽光である(図5)。実際に運転を開始している設備は約7040万kWで3690万kWが未稼働の状況である。事業用(10kW以上)の太陽光発電の運転開始率は約71%となっている。風力発電は1500万kW以上が移行認定を含み事業認定されているが、環境アセスメントの手続きや電力系統への接続の問題で約30%にあたる約440万kWしか運転を開始していない。一方で、環境アセスメントの手続きを行っている風力発電は、2020年度末の段階で3000万kW以上あり、陸上風力が1300万kW、洋上風力が1800万kWにも達している。中小水力については、事業認定が170万kW程度に留まっており、そのうち85万kWが運転を開始しているが、そのうちのかなりの割合が既存設備のリプレースである。地熱発電は事業認定が16万kWと少ない状況だが、運転開始は9万kWと開発が進んできている。バイオマス発電は約940万kWが事業認定されているが、その7割以上が海外からの木材や農業残さ(PKSやパーム油)を燃料とする設備といわれており、運転開始率も4割程度と低くなっている。海外から輸入するバイオマス燃料をめぐっては特に液体バイオマス(パーム油など)の持続可能性が問題視されており、持続可能性の基準の設定が進められている[4]

図5: FIT制度における設備の事業認定、導入量(運転開始)および未稼働設備(2020年度末)
出所:資源エネルギー庁データよりISEP作成

都道府県別の累積導入量のランキングを図6に示す。導入量が大きい都道府県では太陽光発電の割合がほとんど80%を超えている。風力発電の割合が20%を超える県やバイオマス発電の割合が10%を超える県もいくつかあるが、ほとんどの都道府県で太陽光発電の割合が高くなっている。

図6: FIT制度による都道府県別の累積導入量のランキング
出所:資源エネルギー庁データよりISEP作成

FIT制度による自然エネルギー発電設備の累積導入量の推移を図7に示す。2016年度までに設備認定が1億2千万kW近くまで進み、未稼働の設備が増えたが、2017年度以降、FIT制度の改定で事業認定への移行などもあり、2020年度末までに運転開始率は約70%に達した。

図7:FIT制度による自然エネルギー発電設備の累積導入量と事業認定設備・未稼働の推移
出所:資源エネルギー庁データよりISEP作成

年度毎の導入量の推移をみると2014年度が太陽光を中心に1000万kW近くに達して最も大きかったが、その後に減少に転じて2017年度からは年間600万kW程度の導入量となっている(図8)。事業用太陽光(10kW以上)については、新規の買取価格も急速に低下し、大規模な案件に対する入札制度も始まったことから今後も一定レベル(年間500万kW程度)まで抑制される傾向になると考えられる。一方、これまで導入量が抑えられてきた風力やバイオマスについては年間導入量が増加する傾向があり、風力発電は年間46万kW、バイオマス発電は年間49万kWが導入された。地熱発電も1万kWを超える大型設備の運転開始により年間5万kWが導入された。

図8: FIT制度による自然エネルギー発電設備の年間導入量の推移
出所:資源エネルギー庁データよりISEP作成

FIT制度による買取の総額が2021年度には3.8兆円と2020年度の3.5兆円から増加する見込みで、電力会社の化石燃料の減少分である回避可能費用は1.1兆円程度と前年度から減少する見込みのため、電気料金への賦課金も3.36円/kWhに上昇した(図9)。その中で、2022年度からの現行のFIT制度の根本的な見直しの法案が2020年6月に国会成立し、FIT制度は地域活用電源(ソーラーシェアリングを含む小規模太陽光、小規模水力、小規模バイオマス、小規模地熱など)では条件つきで維持される一方で、競争電源(大規模太陽光、風力)については新たにFIP制度が導入されるなど大きく変わる[5]。しかし、このFIT制度の見直しには様々な問題点があり、この新型コロナウィルスの影響からグリーン・リカバリー(緑の復興)のために自然エネルギーの導入を本格的に促進する提言をISEPから行っている[6]

図9: FIT制度による買取費用および賦課金などの推移
出所:資源エネルギー庁データよりISEP作成

[1] REN21 “自然エネルギー世界白書2021” https://www.isep.or.jp/gsr

[2] 資源エネルギー庁「固定価格買取制度 情報公表用ウェブサイト」https://www.fit-portal.go.jp/PublicInfoSummary

[3] 資源エネルギー庁「電力調査統計」http://www.enecho.meti.go.jp/statistics/electric_power/ep002/

[4] 「バイオマス発電の持続可能性に関する共同提言」(2019年7月) https://www.isep.or.jp/archives/library/12006

[5] 「強靱かつ持続可能な電気供給体制の確立を図るための電気事業法等の一部を改正する法律案」(2020年2月) https://www.meti.go.jp/press/2019/02/20200225001/20200225001.html

[6] ISEP「地域からの「緑の復興」を〜新型コロナによる3つの危機(経済危機・気候危機・社会分断)を超える〜」2020年7月 https://www.isep.or.jp/archives/library/12694