日本のエネルギー・温暖化対策の抜本的見直しが必要(プレスリリース)
2019年4月26日
当研究所は、エネルギー基本計画やパリ協定長期成長戦略案など現行の日本のエネルギー・温暖化対策の抜本的見直しの必要性から、日本経済団体連合会によるレポート「日本を支える電力システムを再構築する」をレビューし、その矛盾と間違いを指摘をしました。
日本経済団体連合会(経団連)が2019年4月16日に公表したレポート「日本を支える電力システムを再構築する―Society 5.0実現に向けた電力政策―」は、日本政府の「恥ずかしすぎるエネルギー基本計画」と同じ過ちを犯している。大半の国民が原発廃止を望み、実際に高コストで十分な安全性も担保されていない原発に関して、再稼働どころかリプレース・新増設の必要性さえ主張しており、「恥ずかしすぎる基本計画」以上の矛盾や間違いを含む提言となっている。
2018年7月に国が閣議決定した第5次エネルギー基本計画は、「再生可能エネルギー主力電源化」「原発依存低減」という目的が掲げられているものの、実質的には「石炭火力・原発に依存し、再エネを抑制」する矛盾した内容となっている。この経団連の提言は、およそ日本の産業競争力の強化や雇用拡大には繋がらない。
しかも、日本政府が未来投資戦略(2018年6月閣議決定)の一環として提唱しているSociety 5.0(超スマート社会)の主眼であるAI・IoTなどのデジタル技術の活用に真っ向から逆行している。
パリ協定では、2050年以降を見据えて温室効果ガス排出ゼロの長期戦略を先進各国は提出することになっており、国も「パリ協定長期成長戦略案」を4月23日を公表した。この長期戦略案も「恥ずかしすぎるエネルギー基本計画」の矛盾した内容がそのまま反映されている。
本来、エネルギー基本計画やパリ協定長期成長戦略案など現行の日本のエネルギー政策・地球温暖化対策の抜本的見直しが必要であり、当研究所では、この経団連レポートにおける矛盾と間違いを以下のとおり指摘する。各項目の詳細はダウンロードより。
経団連レポート「日本を支える電力システムを再構築する」の矛盾と間違い
- 日本の電力料金は相対的に割高と主張している
- 自然変動電源の発電コストは高いと主張している
- 原発のリプレース・新増設で電力価格が低下すると想定している
- 再生可能エネルギーの固定価格買取制度は莫大な国民負担と主張している
- 産業界における省エネポテンシャルを無視している
- 政府の温暖化対策数値目標遵守を軽視する一方で、温暖化対策に原発が必要と主張している
- 電力容量市場の導入が必要と主張している
- 託送料金の問題点を指摘していない
- 「複線シナリオ」を支持しながら「将来像の明確化」を要求している
- Society 5.0を目指しながら、従来の中央集権型の電力システムの維持を主張している
このプレスリリースに関するお問い合わせ
連絡先:認定NPO法人 環境エネルギー政策研究所(ISEP)
〒160-0008 東京都新宿区四谷三栄町16-16
TEL: 03-3355-2200 FAX: 03-3355-2205
担当:飯田、松原