2018年(暦年)の国内の自然エネルギー電力の割合(速報)
2019年4月8日
2018年(暦年)の国内の自然エネルギー電力の割合
~自然エネルギーによる発電量の割合は17.4%に達し、太陽光は6.5%に~
要旨
- 2018年(暦年)の日本国内の自然エネルギーの全発電量(自家消費含む)に占める割合は前年の16.4%から17.4%に増加したと推計される。
- 全国の太陽光発電の発電量の割合は、2018年には前年の5.7%から6.5%に増加し、VRE(変動する自然エネルギー:太陽光および風力)の割合は6.3%から7.2%に増加した。
- 風力(0.7%)とバイオマス(2.2%)も増加傾向にあるが、水力(7.8%)や地熱(0.2%)ほぼ横ばいの状況が続いている。
- 化石燃料による火力発電の割合は前年の81%から78%に減少したがまだ高いレベル、原子力発電は前年の2.8%から4.7%に増加した。
- 2018年(暦年)の年間の電力需要に対する自然エネルギーの割合は全国では16.5%となり、エリア別では北陸電力と東北電力が約30%と高い。
- 2018年の電力需給でのVRE(変動する自然エネルギー:太陽および風力)の割合は四国電力および九州電力が約12%と高く、四国では2018年5月の1時間値の最大で自然エネルギーが需要の100%超になり、2018年10月からは九州でVREの出力抑制が全国で初めて実施された。
- 欧州各国では、すでに自然エネルギー電力の年間発電量の割合が30%を超える国が多くあり、VRE(変動する自然エネルギー)の割合も20%を超える国がある。
- 欧州各国では、自然エネルギーの中長期的な高い導入目標を掲げおり、2030年までに自然エネルギー100%で電力供給を目指す国もある。これらと比べて日本の目標24%はとても低い。
国内の全発電量に対する自然エネルギーの割合
電力調査統計[1]やFITおよび全国の電力需給データなどより2018年の日本国内の全発電量(自家消費を含む)の電源別割合を推計した。ただし、2018年10月以降の自家発、家庭用太陽光の自家消費量推計については前年値を用いている。また、風力発電については、FIT制度による送電量を用いている(電力調査統計の数字に重複などがあると考えられるため)。
その結果、2018年(暦年)の日本国内の自然エネルギーの全発電量に占める割合は前年(2017年)の16.4%からおよそ1ポイント増加し17.4%に増加した(表1、図1)。2014年には約12%だった自然エネルギーの割合が、毎年1ポイント程度ずつの増加で17%以上に達した(図2)。その中で、太陽光発電の発電量は、前年(2017年)の5.7%から6.5%へと増加しており、エネルギー基本計画が2030年度に想定している目標値にかなり近づいている。風力発電の割合0.7%と合わせると、VRE(変動する自然エネルギー)の割合は、前年(2017年)の6.3%から7.2%に増加したことになる。太陽光以外の自然エネルギーについては、風力とバイオマス発電が1割程度増加したが、水力や地熱は出水量や蒸気量などの関係でほぼ横ばいとなっている。
月別にみると5月の自然エネルギーの割合が最も高く、約25%に達している(図3)。5月は出水量の関係で水力発電の割合も12.5%と高いが、太陽光の割合も9.2%と高く、変動する自然エネルギー(VRE)の割合も約10%に達している。
火力発電の発電量は減少傾向にあり、2018年は前年の80.8%から77.9%に減少し、2014年からは約10ポイント減少したが依然として高いレベルである。一方、原子力発電は、2014年にゼロになってから、2015年以降、毎年発電量が増加しており、2018年には全発電量の4.7%となったが、まだ太陽光の発電量の割合6.5%より低いレベルである。
表1: 日本の全発電量に占める自然エネルギーの割合の推移(出所:電力調査統計などよりISEP作成)
電源 | 2014年 | 2015年 | 2016年 | 2017年 | 2018年 | 備考 |
水力 | 8.0% | 8.6% | 7.6% | 7.6% | 7.8% | 大規模含む |
バイオマス | 1.5% | 1.5% | 1.9% | 2.0% | 2.2% | 自家消費含む |
地熱 | 0.2% | 0.2% | 0.2% | 0.2% | 0.2% | |
風力 | 0.5% | 0.5% | 0.5% | 0.6% | 0.7% | 電力需給データ |
太陽光 | 1.9% | 3.0% | 4.4% | 5.7% | 6.5% | 自家消費含む |
自然エネルギー | 12.1% | 13.8% | 14.7% | 16.4% | 17.4% | |
VRE* | 2.3% | 3.5% | 5.0% | 6.3% | 7.2% | |
火力 | 87.9% | 85.7% | 83.6% | 80.8% | 77.9% | 石炭、LNG、石油ほか |
原子力 | 0.0% | 0.4% | 1.7% | 2.8% | 4.7% |
*VRE(変動する自然エネルギー:太陽光および風力発電)
図1:日本全体の電源構成(2018年) 出所:電力調査統計などよりISEP作成
図2:日本の全発電量に占める自然エネルギーの割合の推移
(出所:電力調査統計などよりISEP作成)
図3:日本国内の全発電量に占める月別の自然エネルギーの割合(2018年)
(出所:電力調査統計などよりISEP作成)
国内の電力需要に対する自然エネルギーの割合
2016年度より一般送配電事業者から法令に基づき電力会社エリア毎の電力需給の実績データ(電源種別、1時間値)[2]が公開されている。これまで3か月毎に各一般送配電事業者から発表されていた需給データが、2018年10月分から毎月公表されることになった。電力市場が整備されている欧州ではすでにTSO(送電事業者)がデータをほぼリアルタイムで公表し、それらのデータをわかりやすく見える化するWebサイトも数多くある[3]。2018年10月には九州で太陽光発電や風力発電の出力抑制が全国で初めて行われた。日本でも電力需給データの公表を出来るだけ速やかに行うことが求められている。ISEPが開設している見える化サイト「ISEP Energy Chart」では公表されたデータから様々なグラフでインタラクティブに分かり易くデータを分析できる[4]。
この電力需給データに基づき日本国内での電力需要に対する自然エネルギーの割合が2016年度から算定できるようになっている。2018年(暦年)の集計した結果、2018年(暦年)の平均値では16.5%となった(図4)。日本全体の自然エネルギーの電力需要に対する割合の月別の平均値では、2018年5月が24.4%と最も高くなっているが、1日の平均では2018年5月5日に34.1%に達した。さらに図5に示すように1時間値では同じ5月5日11時から12時台の62.0%が最高で、太陽光が44.6%に達している(水力14.9%、風力1.7%、バイオマス0.5%、地熱0.3%)。
電力会社(一般送配電事業者)のエリア別では、2018年の年間で自然エネルギーの割合が最も高かったのは北陸電力エリアの31.2%だったが、この中で水力発電が27.8%と大きな割合を占めている。東北電力エリアでは自然エネルギーの割合が29.4%となったが。水力が14.8%と割合が大きく、太陽光が2017年度の5.0%から6.7%に増加する一方で、風力の割合も3.0%と全国の中でも比較的高くなっている。さらに北海電力エリアでは太陽光の4.6%に対して、風力の割合が全国的にも最も高く3.2%に達しているが、水力発電が16.7%と大きな割合を占めている(自然エネルギー全体は25.1%)。東日本全体の平均では自然エネルギーの割合が15.2%と全国平均を下回っているが、東京電力エリアが10.0%に留まっていることが大きな要因となっている。この東京電力エリアでは太陽光が5.3%と水力の4.2%を上回っているという特徴がある。
中西日本では四国電力エリアの自然エネルギーの割合が最も高く24.7%に達しており、水力13.1%に対して太陽光9.7%となっている。中西日本全体では、自然エネルギーの割合は17.5%に達して、東日本の15.2%よりも高く、VRE(変動する自然エネルギー)の割合も7.5%と東日本の6.6%より高くなっている。四国電力エリアでは、2018年5月20日(日)の1時間値で自然エネルギーが電力需要の100%を上回った[5]。
図4: 電力会社エリア別の電力需給の自然エネルギーおよび原子力の割合(2018年)
出所:各電力会社の電力需給データよりISEP作成
図5:電力会社エリア別の電力需給(1時間値)の自然エネルギー割合の最大値(2018年)
出所:各電力会社の電力需給データよりISEP作成
太陽光発電設備の導入が全国でも最も進んだエリアになっている九州電力では、2018年には電力需要に対する自然エネルギーの割合が19.9%にまで増加し、水力5.9%に対して太陽光が11.1%に達している。変動する自然エネルギー(VRE)の割合も風力と合わせて11.8%と全国で最も高くなっている一方で、出力の調整が基本的に出来ない原子力発電が4基(約400万kW)稼働しているためその割合は25.5%に達している。その結果、現状の優先給電ルールに基づき2018年10月13日(土)に全国で初めて太陽光発電の出力抑制が実施された(その後、風力発電も実施)。これに対してISEPでは2018年9月に自然エネルギーの出力抑制の前にすべき改善点を提言している[6]。2018年中には計8回の出力抑制が行われたが、10月21日(日)には太陽光に対して最大92万kWの出力抑制が行われ、抑制量は太陽光による1日の発電量の約14%に達した(図6)。
図6: 九州電力エリアの電力需給(2018年10月21日) 出所:九州電力データより作成
欧州各国との自然エネルギーの割合の比較
2018年の国内での年間発電量について欧州各国と比較した(図7)。欧州各国ではすでに年間発電量の30%を超える自然エネルギーを供給している国が多数ある。変動する自然エネルギー(VRE)の割合も50%を超えるデンマークを筆頭にドイツ、スペイン、ポルトガルそして英国でも20%を超えている(日本はまだ7%程度)。
図7:欧州各国および中国・日本の発電量に占める自然エネルギーの割合の比較(2018年)
出所:Agora Energiewende, China Energy Potal, 電力調査統計などのデータよりISEP作成
自然エネルギーの政策目標についても欧州各国では2020年、2030年そして2050年に対する高い導入目標を決定して各国で様々なエネルギー政策を進めている。欧州では電力に関する目標(NREAP)ではすでに2020年の目標を達成している国が多い(図8)。2030年の自然エネルギーの目標については欧州で最終エネルギー需要に対して32%以上とすることが発表されているが、すでに自然エネルギー電力についてデンマークやスペインでは2030年に100%を目標として、ドイツでも65%という高い目標を決めている。これらの国々と比較すると、日本の2030年の24%という目標は、すでに17%を達成し、太陽光が目標の7%にほぼ到達していることを考えてもかなり低い目標であるといえる。
図8: 欧州各国および日本の自然エネルギー電力の導入実績・目標
(出所:EU、Agora EnergiewendeデータなどからISEP作成)
参照リンク
[1] 電力調査統計 http://www.enecho.meti.go.jp/statistics/electric_power/ep002/
[2] 電力広域的運営推進機関(OCCTO) 系統情報サービス「需給関連情報・供給区域別の供給実績」 https://www.occto.or.jp/keitoujouhou/index.html
[3] Agora Energiewende “Recent Electricity Data” https://www.agora-energiewende.de/
[4] ISEP Energy Chart https://www.isep.or.jp/chart/
[5] ISEP速報「四国電力で自然エネルギー100%超・九州電力で太陽光発電が80%超」https://www.isep.or.jp/archives/library/11271
[6] ISEPプレスリリース「九州電力が再エネ出力抑制の前にすべき6つのこと」https://www.isep.or.jp/archives/info/11341