第4世代地域熱供給とは
2019年2月18日
第4世代地域熱供給とは
デンマークではオイルショック後の1979年に熱供給法が制定され、費用対効果に基づいた熱供給のためのゾーニング(土地利用計画)を促進している。人口密度が高い都市では、初期設備費が高いが熱需要が高いためにCHP(熱電併給設備)を導入し、人口密度が低く熱需要が小さい地域では天然ガスを直接利用することになった。CHPの導入は、1980年当初は集中型から始まり、1986年頃からは石炭を熱供給計画から除外し、エネルギー税を増税した。その結果、小規模なCHPプラントを重視することで、国産のバイオマスを利用しやすいように分散型になっていった。さらに1990年にはバイオマスを燃料とする地域熱供給を推進する政治的合意が行われ、熱供給に関する法改正で燃料の選択に関するガイドラインをすべての地方自治体に提供した[1]。2010年には熱利用計画が策定され、2020年までの需要側での省エネルギーを進めており、各エネルギー供給者は毎年2%のエネルギー削減が義務づけられている。これまでにデンマーク全土の熱需要の約50%、家庭用需要の約63%を地域熱供給でカバーするまでになっている(首都のコペンハーゲンでは98%に達する)。人口あたりの地域熱供給の普及率もEU諸国の中で高いレベルにあり64%に達している。地域熱供給の熱源に占める自然エネルギー(主にバイオマス)の比率も1980年代以降、石炭からの転換により、順調に上昇してきており、2015年には約48%に達している。さらに第4世代地域熱供給では、管理のしやすさによるコスト削減のため、熱供給システムの温度を下げることで、エネルギー効率を向上させ、太陽熱などの低温熱源の利用や地中熱利用などが可能となってきている。
最初の第1世代の地域熱供給は、100年以上前の1900年代の初期から行われていたものである。石炭や廃棄物の焼却熱を熱源とする熱供給により、供給温度は200℃近くに達する蒸気を用いたもので、エネルギー効率もとても低かった。その後、1930年代以降に、高温(100℃以上)の加圧温水による第2世代の地域熱供給が始まり、従来の石炭や廃棄物の焼却熱利用だけではなく、石炭や石油などを燃料とする大型で集中型の熱電併給(CHP)プラントが主要都市に建設された。1970年代のオイルショックを経て、1980年代以降は、分散型の熱電併給(CHP)や熱供給の設備が主流となり、熱源として天然ガスやバイオマスが用いられるようになった。この第3世代の地域熱供給では、100℃以下の温水を用いて断熱パイプや断熱されたコンパクトなサブステーションにより、小規模でもエネルギー効率の高いシステムを目指し、計測やモニタリングを行っている(表1)。
表1 デンマークの地域熱供給ネットワークの歴史的発展(出典:State of Green 地域熱供給白書より作成)
第4世代地域熱供給は、これまでの100年以上におよぶ地域熱供給の経験の上に築かれ、より低温の温水を用いることでエネルギー効率が向上すると共にも、より多くの再生可能エネルギーや様々な排熱の利用を可能としている[1]。将来、より低エネルギー化が進みエネルギー需要が低下する場合でも、配管システムなどでの熱損失を最小限に抑えることができる。より柔軟なエネルギー貯蔵や供給側と需要側の双方向でのやり取りが可能となり、よりスマートで効率的なエネルギーシステムとなることを目指している。これにより、地域熱供給システムがより多くの地域に適したものとなる可能性があるほか、既存の熱供給システムを拡大し、新たな機能をもたらすことができる。この第4世代地域熱供給に関する研究や開発の成果に関する国際会議が数年前からデンマークで開催されており、2018年11月にはオールボーで第4回目の会議が開催された[2]。
[1] 「デンマーク地域熱供給白書」State of Green, 2016
[1] “District Heating history” Danish Board of District Heating(DBDH) https://dbdh.dk/