記録的な自然エネルギー拡大が世界経済成長とCO2排出量増大の切り離しに貢献した〜REN21「自然エネルギー世界白書2015」
2015年6月18日
2014年は風力発電と太陽光発電の年間導入量が過去最大に。
20か国以上で自然エネルギー導入目標が新たに設定され、世界で164か国に。
自然エネルギーが世界全体の発電容量の正味増設分の60%以上の割合に。
自然エネルギーの温熱・冷熱利用に政策立案者の関心が高まる。
自然エネルギーへの投資額は世界全体で3010億ドル、途上国と先進国が同程度。
日本の太陽光発電市場は世界2位、自然エネルギーへの投資額は世界3位を堅持。
自然エネルギーの導入目標などの支援政策は、いまや164か国が導入している。それが太陽光、風力をはじめ自然エネルギーの成長を促し、2014年は、過去最高記録の年間導入量となった。約135GW(1億3500万kW)の発電設備の拡大で、累積では1712GW(17億1200万kW)となり、8.5%増加した。
近年のエネルギー消費量の世界平均増加率は年率1.5%であり、GDP(国内総生産)は平均3%の成長であったが、2014年の二酸化炭素(CO2)排出量は2013年の水準から変わらなかった。CO2排出量の増加を伴わずに世界経済が成長したのは、過去40年間で初めてのことである。
こうした経済成長とCO2排出量増大の「デカップリング」(切り離し)は画期的なことで、中国での自然エネルギー利用の急拡大と、OECD諸国がエネルギー効率化と自然エネルギーの利用拡大を同時に進める持続可能な成長を進めていることが主な要因である。
アルソロス・ゼルボス(Arthouros Zervos)REN21議長は、ウィーン・エネルギー・フォーラム2015(UNIDO主催)での「自然エネルギー世界白書2015」の公表に際して、「自然エネルギーとさらなるエネルギー効率化は、地球温暖化を摂氏2度以内に抑制し、危険な気候変動を避けるための鍵である。」と述べている。
少なくとも145か国(前年の138か国から増加)で実施されている支援政策のおかげで、世界の風力、太陽光(PV)、水力の発電容量だけで2013年から128GW(1億2800万kW)拡大した。2014年末時点で、自然エネルギーの発電設備は推計で世界の総発電容量の27.7%を占め、推計で世界の電力需要の22.8%を供給する規模に達している。
太陽光発電(PV)は最も驚くべき成長率で増加し、2004年の3.7GWから2014年の177GWまでの10年間で48倍の発電容量となった。風力発電も2004年の48GWから2014年の370GWへと8倍近い目覚ましい成長を見せた。
自然エネルギー発電(出力50MW超の大規模水力発電を除く)および燃料分野への世界の新規投資額は2013年から17%増加し、2702億米ドル(日本円で約32兆円)となった。大規模水力発電を含めると、世界の新規投資額は少なくとも3010億米ドル(約36兆円)に達した。自然エネルギー発電への世界の新規投資額は化石燃料の発電設備への投資額の2倍以上であった。自然エネルギーへの投資額が化石燃料の発電設備より大きいという傾向は過去5年間続いている。
途上国での自然エネルギーへの投資は前年から36%増加し、1313億米ドル(約16兆円)となった。途上国全体への投資額は、先進国全体への投資額にこれまでで最も近づいた。先進国全体への投資額は2014年に1389億米ドル(約17兆円)で、2013年から3%増加しただけだった。中国は途上国全体への投資額の63%を占めるが、チリ、インドネシア、ケニア、メキシコ、南アフリカ、トルコでは、いずれも10億ドル以上を自然エネルギーに投資している。
自然エネルギーへの投資を行っている主要国を投資額が大きい順に並べると、中国、米国、日本、英国、ドイツであった。一方、GDPあたりの投資額で見ると、ブルンジ、ケニア、ホンジュラス、ヨルダン、ウルグアイの順となる。
毎年5500億米ドル(約66兆円)以上にのぼる化石燃料と原子力への補助金をなくせば、自然エネルギー市場の成長は、より大きくなる可能性がある。こうした補助金によって化石燃料や原子力からのエネルギー価格が作為的に下げられていることで、エネルギー廃棄物を増やし、自然エネルギーにとって競争の障害となっている。
クリスティン・リン(Christine Lins)REN21事務局長は「公平な競争市場を作ることで、エネルギー効率化と自然エネルギー技術がいっそう発展し利用を促すことができる。化石燃料と原子力の補助金を世界的に撤廃すれば、自然エネルギーが最も安い選択肢となることは明らかだ」と述べている。
自然エネルギー分野の雇用も急速に増えている。2014年には、世界全体で推計770万人が直接または間接にこの自然エネルギー分野で働いている。
飯田哲也(REN21理事・ISEP所長)は『自然エネルギーは、エネルギー供給はもちろん、経済効果でも気候変動対策でもいよいよ切り札となる世界的な潮流がはっきりしてきた。昨年は、自然エネルギーの急成長のおかげで、世界全体の経済成長にも関わらずCO2排出量を横ばいに押しとどめ「経済と環境の切り離し」に大きく貢献した画期的な年となった。にもかからず、今の日本政府は、自然エネルギーを押しとどめ、福島の教訓にも学ばないまま原発復活を推し進めようとしている。こうした今の国の政策は、日本の未来を閉ざそうとしている。』と述べている。
2014年に自然エネルギー発電は目覚ましい成長をしたにもかかわらず、10億人以上・世界人口の15%はいまだに電気を利用できない。また、およそ29億人がクリーンな調理手段を利用できずにいる。アフリカ全土で約147GWの発電設備がこれまで導入されているが、これはドイツの総発電容量に達していない。こうした遠隔地や農村地域での不可欠なエネルギーサービスや生産的なエネルギーサービスを提供する上で、分散型の自然エネルギー技術が果たす役割の大きさに、これまで以上に注意を向ける必要がある。
2015年6月18日に http://www.ren21.net/gsr/ で公開されるREN21※の「自然エネルギー世界白書2015」(Renewables 2015 Global Status Report)は、世界の自然エネルギー市場、産業、政策の現状について、世界で最もよく参照される年次報告書(自然エネルギー世界白書)として第10版目となる。
(日本語版編集:認定NPO法人 環境エネルギー政策研究所)
※REN21“Renewable Energy Policy Network for the 21st Century”(本部:フランス パリ)は、2004年に設立され、国際的な自然エネルギー政策に関する多様なステーホルダーをつなぐネットワーク組織。http://www.ren21.net/
「自然エネルギー世界白書」”Renewables Global Status Report”は、REN21が世界の自然エネルギーの包括的な状況を把握し、自然エネルギーがエネルギー市場や経済発展の面で主流となっていくという現実と理解を結びつけていくことを目的として発行しているレポート。2005年からエリック・マーティノー(Eric Martinot, 現在はISEPシニア・リサーチフェロー)のイニシアティブによってはじまったこのレポートは、世界中の研究者、各国政府、国際機関、NGO、業界団体、その他パートナーシップやイニシアティブの協力によりデータが収集されている。環境エネルギー政策研究所(ISEP)は初刊の2005年版から作成に協力し、継続的に日本語への翻訳をおこなっている。
特集「自然エネルギー世界白書」: https://www.isep.or.jp/library/1959
これにあわせて環境エネルギー政策研究所(ISEP)および自然エネルギー財団(JREF)はREN21議長アルソロス・ゼルボス氏を招き、「自然エネルギー世界白書2015」発表記念シンポジウムを6月30日(火)に開催します。開催詳細: https://www.isep.or.jp/news/7675
日本国内での問い合わせ先
認定NPO法人 環境エネルギー政策研究所(ISEP)
担当:松原、山下
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TEL: 03-5942-8937, FAX:03-5942-8938