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【プレスリリース】固定価格買取制度:平成27年度の買取価格および運用見直しへの提言

固定価格買取制度:平成27年度の買取価格および運用見直しへの提言

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【提言】

(1) 太陽光発電の買取価格は規模別に設定し、地域主体の取り組みに支援を

(2) バイオマス発電の買取価格は燃料種別や設備規模、燃料のカスケード利用や熱供給の有無などを考慮してきめ細かい制度を

(3) 風力、地熱、中小水力は実態を踏まえた買取価格の設定と適切な支援をすべき

(4) 設備認定や運転開始をした発電設備やコストデータの情報公開を徹底すべき

(5) 10kW未満の住宅用の太陽光発電も全量買取に移行すべき

まさに4年前の2011年3月11日に法案が閣議決定され、2012年7月1日に施行された固定価格買取制度(以下、FIT制度という)が、運用開始から3年目を迎え、大きな成果と共に様々な課題が見えて来た。2014年末までの設備認定は7400万kWに達しているが、そのうち95%を太陽光発電が占めている。実際に運転を開始している設備は1500万kWで設備認定の約20%となっている(移行認定を含まず。2014年11月末。図1参照)。その状況の中で、制度開始から4年目となる平成27年度の調達価格等の見直しの検討のため、調達価格等算定委員会が2015年1月からスタートし、昨年度と同じわずか4回の審議を経て2月24日に「平成27年度調達価格及び調達期間に関する意見」を公表した。その後、わずか15日間という非常に短い期間のパブコメ(意見募集)を経て、平成27年度の買取価格が決定される。ISEPではこれまでもFIT制度を取り巻く様々な課題を踏まえ、FIT制度を含めた自然エネルギー政策への様々な提言をしてきた。ここでは、平成27年度の買取価格および運用見直しに対して以下の提言をする。

図1:FIT制度による設備認定の推移および導入量(2014年11月末)
資源エネルギー庁のデータよりISEP作成

【平成27年度の買取価格への提言】

(1) 太陽光発電の買取価格は規模別に設定し、地域主体の取り組みに支援を

10kW以上の非住宅用太陽光では、出力規模により発電のコスト構造が明らかに異なるため、新たな調達価格の区分を早急に設けるべきだった。今後は、地域毎の実態を把握・公表すると共に、電力系統の容量に対して大きな影響を及ぼす2000kW以上の設備について特に精査をする必要がある。その一方で、1000kW未満の地域分散型の小規模な設備に対して現状の課題を把握し、地域主体の取り組みについては買取価格以外にも各種の手続きや人材育成、資金調達など十分な支援を行うべきである。

10kW以上の非住宅用太陽光については、その出力規模により異なるシステム費用となっていることが運転開始設備のデータからすでに明確になっている。平成26年度Q3(10-12月期)は1000kW以上のシステム価格が下げ止まり、50kW未満のシステム費用との差が3万円程度に縮まったとされるが、平成25年度Q3において1000kW以上のシステム費用28万円/kWに対して、50kW未満では37万円/kWと10万円程度のシステム費用の差があった(図2)。このシステム費用の差は、2年前の平成24年度Q3には、約15万円もあったため本来は平成25年度調達価格の段階での見直しが必要だったことになる。

図2:非住宅用太陽光発電のシステム価格の推移
(出典:調達価格等算定委員会のデータより作成)

すでに1000kW以上のメガソーラーと呼ばれる大規模な太陽光の設備認定が3600万kW以上に達しているが、低圧連系の50kW未満の設備認定は約2400万kWあるが、高圧連系の50kW以上1000kW未満の設備認定は700万kWしかなく、大きな偏りを見せている(図3、2014年12月末現在)。一方、50kW未満の低圧連系の設備については、設備認定された2400万kW近くのうち20%程度しか運転を開始しておらず、発電電事業者が様々な課題を抱えていることが考えられる。

図3:太陽光の設備認定と運転開始状況(2014年11月末現在)
出典:資源エネルギー庁データよりISEP作成

(2) バイオマス発電の買取価格は燃料種別や設備規模、燃料のカスケード利用や熱供給の有無などを考慮してきめ細かい制度を

使用する燃料の種別やコストが大きく影響するバイオマス発電については、規模や燃料種別等によるきめ細かい条件を定め、それごとに買取価格の設定が必要である。特に、木質バイオマスについては、設備費用や燃料調達コストを含む運転費用などを踏まえた上で、発電規模の上限(例えば2万kW程度)を設定とすることや、燃料調達の実態を把握すると共に、発電規模に応じた調達価格を定めるべきである。平成27年度の買取価格において地域の森林資源を適切に活用できる2000kW未満の中小規模の木質バイオマス発電について新たな調達区分を設けたことは評価できる。しかし、比較的コストが低く、事業採算性の高い大規模な石炭混焼発電については、FIT制度の対象外とするか、新たな区分を設け、そのコストを反映した調達価格を定めるべきである。さらに、単なる燃料種別や規模別の買取価格の設定だけではなく、熱電併給や最終的に燃料となる木材のカスケード利用を推奨し、支援する制度を拡充する必要もある。

全国で、木質バイオマス発電の計画が設備認定ベースで全国で70件以上あり、その設備容量は120万kWを超えている。特に東北、九州、中部に設備認定が多く、未利用材や一般木材を燃料として利用する計画となっている(図4)。すでに地域によっては燃料の安定供給に対する懸念が生じており、木質バイオマス資源の特性から、地域の森林資源の活用が前提となることため、大量の燃料を必要とする大規模な設備に対しては、一定の制限が必要である。

図4:バイオマス発電の設備認定の状況(2014年12月末)
出典:資源エネルギー庁データよりISEP作成

(3) 風力、地熱、中小水力は実態を踏まえた買取価格の設定と適切な支援をすべき

風力発電について、平成27年度の買取価格は導入状況に配慮し、地熱や中小水力と共に、そのまま維持されることになったことは一定の評価ができる。しかし、実際の導入があまり進まない中で、導入費用は未だ買取価格を算定する際の想定を上回る状況が続いており、適正な買取価格の設定が引き続き求められている。さらに、風況や電力系統への接続などの立地条件や環境アセスメントなど調達価格以外の事業へのハードルが高く、風力発電への環境アセスメント(法アセス)の審査が500万kW以上も行われて居るのに対して、風力発電の設備認定が2014年12月末で150万kWに達したものの、実際の運転開始は設備認定の約14%に相当する21万kW程度に留まっている。風力発電の設備認定や運転開始のペースは環境アセスメントなどの準備期間の長さにより太陽光発電に比べるとまだまだ遅い状況であるため、環境アセスメント手続きの期間短縮やゾーニングの活用、各地域での太陽光の大量導入を踏まえた電力系統整備などの支援を行う必要がある。

地熱発電の設備認定は2014年末で1.5万kW程度に留まる。地熱発電については、調達価格が比較的高く定められており、特に1.5万kW未満は各地で数千kW規模のバイナリ―方式を含む比較的小型の発電設備の事業化計画が前に進む一方で、本格的な数万kW規模の地熱発電設備については、資源調査から環境アセスメントまで非常に長期に渡る調査や手続きが必要となり、運転開始までには10年程度かかるとも言われており、事業化のための調査への支援や環境アセスメントの手続期間の短縮化などをさらに進める必要がある。

小水力発電については、2014年末時点の設備認定が約35万kWに達し、件数も200件を超えているが、運転開始は約3万kWと10%未満に留まっている。特に1000kW未満の小規模な水力発電については、工事費を含む初期のシステム費用が想定よりも高くなっており、適正な買取価格の設定と共に、事業化に必要な調査や資金調達などの面でさらに支援が必要である。

(4) 設備認定や運転開始をした発電設備やコストデータの情報公開を徹底すべき

認定設備や運転開始設備の一覧等も定期的(4半期に一回程度)に公開するべきである。RPSから本制度への移行した設備も含め、事業者のノウハウを活かしつつ、新たな設備導入へのインセンティブを生み出す仕組みとするためにも、既存設備を認定する際には、今後の新規事業の参考にもなるように、これまでの運転データ(発電量など)を蓄積してできるだけ公開する必要がある。2014年4月末時点から市町村別の設備認定および運転開始状況を公表していることは評価できるが、これまで設備認定された設備については、該当する市町村だけではなく、必要に応じて発電事業者や研究者が実績データを活用できる仕組み(データベース)を作るべきである。さらに設備認定や運転開始状況、運転データ(発電量)などを集計して、できるだけ詳細な統計データを整備して公開すべきである。

FIT制度に関するデータは、2014年4月末時点から市町村別の設備認定および運転開始の状況が公表されるようになったが、多くの国民が費用負担を含めて関わりを持つ制度として情報公開の課題は多い。さらに再生可能エネルギーの統計データは、これまで系統的に整備されておらず、ドイツのAGEE-statの様な体制整備が必要である。

発電事業者や電力会社(系統運用者)、制度運用者の予見性を高め、適切な制度運用をおこなうため、特に太陽光の普及に伴う導入コストの低減に伴い、原則年度毎に設定される新規の発電設備に対する調達価格を、予見性をもって低減していく必要がある。予め翌年度の調達価格の逓減率を定める方法が望ましいが、予見が可能な様にコストデータなどを積極的に集計し、情報公開すべき。そのためには、調達区分や調達価格を定めるその際のコストデータを着実に集積し、できるだけ頻繁に公表(ホームページ等)・活用する仕組み(データベース等)を整えるべきである。さらに設備認定や運転開始に伴うコストデータだけではく、それ以外の市場データについても集計・分析を行う仕組みを整備する必要がある。

(5) 10kW未満の住宅用の太陽光発電も全量買取に移行すべき

住宅用の太陽光発電(出力10kW未満)については、現状の余剰電力の買取制度を継続することがこれまでの経緯に配慮した形としてスタートした。しかし、実際に10kW以上の非住宅用の急速な導入増加に比べ、10kW未満の住宅用についてはFIT制度開始前のペースでの導入に留まっているのが現状である。全量買取に移行すべき理由は以下のとおりである。

・ 家庭毎に電力の余剰率には10〜90%程度と大きな差があり、不公平を内在している。全量であれば、本質的に公平な制度となる。
・ 余剰のみ比べて飛躍的な普及が可能となり、導入量の拡大による技術学習効果によってコスト低下が早まり、長期的にはむしろ有利である。
・ 「余剰の方が省エネ効果」との指摘もあるが、一時的かつ限定的な効果に過ぎず、省エネはそれを目的とした施策や技術により対応することが本筋である。同じく「余剰の方が賦課金負担が小さい」との指摘もあるが、これは買取単価設定との見合いであるため、全量方式にしたうえで、適切な単価を設定すべきである。
・ なお、全量買取は既存の余剰制度との選択制にすること、全量買取は屋内配線を変えなくても「見なし」として扱うことにより施工費も低減できるため、既存制度からスムーズに移行できる。

【FIT制度の運用見直しへの提言】

2014年9月の九州電力を初めとする電力会社の系統接続「回答保留」問題に対して、2015年1月には新たな出力制御(抑制)ルールなどのFIT制度の運用見直しが行われた。この中で、太陽光発電の「接続可能量」の算定とそれに基づく出力制御(抑制)ルールについては、これまでの設備認定や系統接続に対して電力会社や政府が十分な対応をしてこなかった結果の現れであり、すでに設定されていた風力発電の「接続可能量」と同様に、今後の本格的な自然エネルギーの導入にブレーキをかける可能性が高い。このFIT制度の運用見直しを受けて、自然エネルギーの本格的導入を実現するための方策を以下の14項目を提言している。

① 自然エネルギー導入を最優先とするべき

② 自然エネルギー導入の野心的な目標値を設定すべき

③ 徹底的な透明性と説明責任を求める

④ そもそも「接続可能量」は撤廃すべき

⑤ 太陽光発電の「接続可能量」の算定方法に関する問題

⑥ 太陽光発電・風力発電の出力制御(抑制)が最小限にすべき

⑦ 地域型バイオマス発電の出力制御は不要とすべき

⑧ 遠隔出力制御システムの導入義務づけは段階的かつ慎重に行うべき

⑨ 接続枠の空押さえの防止では、中小規模の発電事業者への考慮が必要

⑩ 接続可能量を前提とした「指定電気事業者制度」は撤廃すべき

⑪ 変更認定の対象拡大や買取価格関係の運用見直しはきめ細かく行うべき

⑫ 福島および東北地方への特別な対応と共に地域主導型自然エネルギー事業を支援すべき

⑬ 系統接続費用の負担原則を「シャロー接続方式」(送電部門負担)に転換すべき

⑭ 今後の導入拡大策のロードマップを明確にすべき

【自然エネルギー政策の課題】

FIT制度の開始から2年半以上が経過し、制度上の様々な課題が見えてくる中、買取価格に関する審議を行う調達価格等算定委員会とは別に、FIT制度の見直しについて総合資源エネルギー調査会の新エネルギー小委員会で審議が行われている。2014年9月に始まった系統接続の回答保留問題でも、新エネルギー小委員会の系統ワーキンググループで短期間のうちに太陽光発電の「接続可能量」や「指定電気事業者制度」の活用などについて審議され、2015年1月には制度運用の大幅な見直しが足早におこなわれるなど、FIT制度の見直しは複雑さを極めた。FIT制度に関して審議する正式な第三者機関としての調達価格等算定委員会では買取価格に関する限られた審議しか行われていない。その分、この新エネルギー小委員会において制度運用や見直し係る実質的な審議が行われているのが現状であるが、日本のエネルギー政策が目指すべき長期的な目標やビジョンに基づいた検討には決してなっていない。

一方、総合資源エネルギー調査会の長期エネルギー需給見通し小委員会が2015年1月末から始まり、エネルギー基本計画に含まれていなかった原子力や再生可能エネルギーの将来の割合の具体的な検討が行われると共に、発電コスト検証ワーキンググループでの発電コストの再検討が行われている。「自然エネルギーの最大限の導入」という言葉が、現在の電力会社側の制約を前提に自然エネルギーの導入に上限を設けるような方向になっては本末転倒である。国内に豊富な資源がある様々な種類の自然エネルギーを飛躍的に増やすというFIT制度の本来の目的と実態を踏まえたうえで、自然エネルギーの意欲的な導入目標の設定や真の電力システム改革も見据えた持続可能なエネルギーシステムへの転換が求められている。

【このプレスリリースに関するお問い合わせ】

認定NPO法人 環境エネルギー政策研究所(ISEP)

お問い合わせ:  https://www.isep.or.jp/about_contact

TEL: 03-5942-8937, FAX:03-5942-8938

担当:松原