【書籍】コミュニティ発電所 原発なくてもいいかもよ?
2013年10月8日
コミュニティ発電所 原発なくてもいいかもよ?
古屋 将太(著) ■ 内容紹介 ■ もくじ もくじの詳細はこちら ■ メディア掲載
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はじめに
私は、認定NPO法人環境エネルギー政策研究所(ISEP・アイセップ)の研究員をしています。
といっても、何者なのかよくわかりませんよね?
家族や友人であっても私が何をやっているのか、よくわかっていません。
そもそもNPOって何? と思いませんか。新聞やテレビでも話題になっているけれど、ボランティア活動と具体的にどこがどういうふうに違うのだろうと、疑問に思う方も多いのではないでしょうか。
NPOは、正式には「非営利組織(Non-Profit Organization)」といって、企業や行政とは違うかたちで社会的な活動をおこなう組織です。たとえば、環境や福祉といった分野は必ずしも儲からないので、企業はそれほど積極的に取り組みません。かといって、行政がそれらをすべて引き受けられるかというと、予算(税金)にかぎりがあるなどいろいろな理由で効率的にできないことが多い。
そこでNPOの登場です。
NPOは、そういった企業や行政の活動からはこぼれ落ちてしまう、しかし、よりよい社会をつくるために必要なことに取り組む人たちの集まり、とでもいいましょうか。
そんなわけで、基本的に儲からない仕事をしているため、日本ではいまだに「NPO=ボランティア」と認識されていています。が、NPOのスタッフも普通の会社員と同じように仕事をしてお給料をもらっています。
そうしたNPOの中で、私は「自然エネルギー」を扱う仕事をしています。
「自然エネルギー」というのは、風力、太陽光、水力、地熱、バイオマスなど、自然の営みから半永久的に、継続して得られるエネルギーのことです。
そういわれると、「エコ」や「ロハス」というイメージや、「なんだか難しそうな科学技術の話」というイメージがあるかもしれません。私の仕事の中身はそういったイメージとは少し違って、日本や世界の各地で活動する「人」と関わることが中心となっています。
東日本大震災で起きた福島第一原発事故を経験するまで、多くの人はエネルギーのことなどあまり深く考えたことがなかったのではないでしょうか。私が関わっている人々も、そういったごく普通の人たちです。
そんな彼らが、いま「地域のみんなが本当に安心して安全に使えるエネルギーをみんなの手でつくりあげるんだ!」という思いで、各地でプロジェクトを立ち上げています。そういったプロジェクトの立ち上げに必要なノウハウを伝え、場合によっては私も当事者のひとりになって、自然エネルギーに転換する活動に取り組んでいます。
常に私の仕事の中心にあるのは「どうやったら地域の人たちが豊かになる自然エネルギーを地域の人たち自身でつくりだせるのか?」という問いです。
地域の人の新しいつながりを、自然エネルギーを通じて増やしていきたい。
そんなことを考えながら、日本全国津々浦々、呼ばれればどこへでもビュンと飛んでゆき、地元の人たちといっしょに仕事をしています。
と説明しても、やはり私が何者なのかわかりにくいと思いますので、「よくわからないけど、自然エネルギーのために奔走している人」ぐらいに思ってもらえたら、いいのではないかと。
もっといってしまえば、私が何者なのかはどうでもいいんです。むしろ「なにゆえ自然エネルギーを増やすために、日本中、世界中を走り回っているのか」ということについてお伝えできればいいなあと思っています。
私にとって自然エネルギーの仕事は、どんなに疲れ果ててもやめられないくらい「楽しいもの」です。
私だけではありません。デンマークにドイツ、カナダ、オーストラリアなど、世界各地に、自然エネルギーをつくりだす楽しさに夢中になっている人たちがいます。
日本では、自然エネルギーは福島第一原発事故後に突然注目されるようになりました。そして、私の職場には各方面から自然エネルギーに関する支援や講演会、勉強会などさまざまな依頼が寄せられることになりました。
かぎられた人数で全国各地からの要請に応えるのはなかなか大変です。この不景気といわれている世の中で、注目が集まっている割にぜんぜん人手が足りていないのが自然エネルギー業界なのです。
この本では、そんな自然エネルギー業界の片隅で働く自分の仕事がどういうものなのかを社会に伝えたいなあ、そして、あわよくばこういう仕事をやってみようと思う人が増えたらいいなあ、たくさんの人とこの楽しさを分かち合えたらいいなあ、と考えています。
ということで、気楽にお付き合いください。
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