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【イベント】京都議定書達成に、自然エネルギーは何ができるか?

PDFバージョンの議事録はこちら

以下、敬称略。当日プレゼン資料(PDF)は各発表者の発言の最初に配置。

主催者挨拶および趣旨説明

○「シンポジウム趣旨」
  「自然エネルギー促進法」推進ネットワーク 代表 飯田哲也

報告

○「RPS法を巡る最近の動向について」(PDF)
 経済産業省資源エネルギー庁新エネルギー等電気利用推進室
 遠藤健太郎氏

○「目標達成計画の見直し状況と自然エネルギー」
 環境省地球環境局地球温暖化対策課
 大倉紀彰氏

○「電気事業者におけるRPS法評価と京都議定書への対応」
  東京電力株式会社企画部
 見学信一郎氏

○「京都議定書目標達成計画見直しと自然エネルギー」
 世界自然保護基金(WWF)ジャパン
 山岸尚之氏

○「東京都の温暖化対策と自然エネルギー」
 東京都環境局環境政策課副参事(環境政策担当)
 小原昌氏

 

フロアを交えた討論

  環境エネルギー政策研究所 飯田哲也(コーディネーター)

開催日時: 2007年7月9日(月) 18:30-21:00(開場18:00)
参加費 1,000円 ※GEN・ISEP会員、自然エネルギー20/20賛同者は無料
会場: なかのZERO視聴覚ホール
東京都中野区中野2-7-9

主催: 「自然エネルギー促進法」推進ネットワーク(GEN)
自然エネルギー20/20キャンペーン委員会
環境エネルギー政策研究所(ISEP)

より詳しいイベントの案内はこちら(HTML)

主催者挨拶および趣旨説明

「シンポジウム趣旨」(PDF)
 「自然エネルギー促進法」推進ネットワーク 代表 飯田哲也

<概要省略>

報告

【報告1】

「RPS法の見直しを終えて」(PDF)
 経済産業省資源エネルギー庁新エネルギー等電気利用推進室
 遠藤健太郎氏

<概要>

本日は 3 つの点について簡単にご説明したいと思います。 1. RPS 法とはどんなものか? 2. ここ 2 年間の RPS 法の評価検討の経緯とそこでどんな事が決まったかといった最近の RPS 法をめぐる動向について、そして 3 番目には、昨年度の施行状況についてご説明します。平成 18 年度の実際の発電された量などについては、今日の午後にプレス発表したため、お手元の資料には間に合っておらず入っていませんけれども、プレゼンテーションの PowerPoint の中でそのデータにについても簡単にご紹介できると思います。

まず、最初に簡単に RPS 法とは?から、始めたいと思います。 RPS 法とは小売電力事業者に新エネルギー等電気を一定以上使用することを義務付けた法律であり、施行後丸 4 年が経ったところです。この法律によりまして電力分野の新エネルギー等の導入を図るというものです。

新エネルギーを推進することの価値と言いますと、エネルギーの安定供給の確保、今日のテーマでもあります地球温暖化対策への貢献、そして、太陽光などもそうでありますが新規産業あるいは雇用創出と、さまざまな視点があります。それをどう図っていくかと言う事に様々な政策が在って、資源エネルギー庁としても多様な政策を行っているわけです。一つは、今日の本題であります RPS 法で、国が目標利用量というものを決めて各電気事業者へ義務を割当て、その義務を満たすように、電気事業者の方に利用促進をしてもらう普及導入促進というものです。

そして、その他に資源エネルギー庁でも力を入れて進めておりますのが研究開発の推進です。新エネルギーには様々ななコスト面での問題もありますので、技術開発を相当行っており、太陽光の効率を上げる、コストを下げるなどの技術開発もやっておりまして、それらが合わさって自然エネルギーの導入を図ると言ったものです。

RPS 法ですが、小売の電気事業者に義務を課すということでありまして、この対象となる事業者の数は若干、年度によって変わります。今年度でいきますと、一般電気事業者、各電力会社がシェアとして相当大きいというところです。あとは特定電気事業者で、これは図にありますように、ある需要の区分された限定された地区に電力を供給しています。六本木エネルギーサービスなどがあります。それからもう一つはいわゆる PPS と呼ばれている皆様で、自由化の議論の中で入ってきた方々です。これら電力会社、特定規模電気事業者、特定電気事業者という3つのカテゴリーの方に義務を課して、新エネルギーの導入を図っていると言う事がこの法律の内容です。

そして経緯については、先ほど飯田さんのほうからもお話ありましたが、どのような制度を入れるかについてかなり前から議論がありました。平成 13 年に新エネルギー部会が開かれ、このときは新エネルギーの導入目標として、 1,910 万キロリットルということを決定しました。また、どのような手法を入れるかについては、別の機会で議論があり、その議論を経てRPS法を導入していくという事になり、平成 14 年の 6 月に法律が成立しました。そして施行は平成 15 年の 4 月でしたが、その間に具体的な平成 15 年から 22 年までの最初の 8 年間の利用目標量をどうするかについての審議会があり、決定されました。

ここまでは過去の経緯でしたが、ここ最近の動きとしては昨年 5 月にRPS法評価小委員会の報告書がでました。施行後 3 年経ったときに行われた審議会、それと制度・利用目標量の見直し変更ですけれども、これは法律の附則に「法律が施行されてから 3 年目に評価検討を行う」という事で条文にもう入っておりました。そして条文にもとづいて評価検討が行われ、経過措置期間である 2010 年までの間の義務量の引き上げが決定されました。したがって施行後最初に大きな変更があったというのは、この 3 年目の見直しの結果を踏まえたものです。この変更自体は去年の 6 月に実際に反映されました。

もう一つの最近の動きとしては、今年 3 月に RPS 法小委員会という名前の、もう一つの審議会の報告書が出ております。グラフにもありますが、メインは 2011 年から 2014 年までの利用目標量の議論を行って数字を決め、また、制度の改善や政府の取組などについて検討したということです。 3 年目の見直しは平成 18 年 5 月でしたが、今年 3 月の見直しについては、そもそもこの制度自体が 4 年ごとにそこから 8 年先の目標を設定することになっていますので、 4 年経つということで 2014 年度までの利用達成量の見直しをする必要があったというわけです。またそれに合わせて、いくつかの制度の改善も行ったということです。

まず、今回の 3 月の見直しで行ったのは、スライドにありますように平成 23 、 24 、 25 、 26 の四年間の利用目標量の線を延ばしたということです。平成 26 年度の利用目標量は 160 億 kWh と決まっております。これは、平成 22 年度が 122 億 kWh でありますので、毎年 9.5 億 kWh 伸ばし、 26 年度に 160 億 kWh に持っていくというものです。なお、平成 18 年度の変更は、 22 年度までのカーブのところの途中を引き上げたという形の改正でしたが、今年の改正利用目標量を 26 年度まで持っていったという変更です。これが利用目標量に関する変更点です。

それから利用目標量だけでなく、今回の見直しで行われたいくつかの制度の改善や議論についてご紹介しますと、一つは太陽光発電の扱いがあります。太陽光発電については、他のエネルギーと比べてもとりわけ技術革新の余地が大きく、まだコストが下がる段階にあります。よって平成 23 年度から 26 年度の 4 年間については、太陽光から発電される発電量は義務達成のカウントの際には 2 倍で扱うと言う措置を導入しております。これが 1 点目です。2点目は、中小の水力発電、また地熱発電に関して対象の拡大などを行っていることです。水力発電に関してはこれまで水路式で 1000kW 以下でしたが、それに加えて河川の維持用水の発電に関しても対象に加えるという変更を行いました。地熱発電に関しても、温泉水を利用した発電も対象に入るという変更をしました。それから 3 番目のバイオマス発電に関しましては、マテリアルリサイクルなど別目的で木質チップなどが利用されると言う事もあり、発電とマテリアルリサイクルのどちらに使うのかについて、地域それぞれの議論が在ります。よって木質チップなどの利用に関してはマテリアルリサイクルに配慮するというような運用基準を追加するといった制度改善も行っています。

最後に政府の取組ですが、今回の審議会では、色々議論になったRPSそのものという事と共に、幾つかの新エネルギー導入策の可能性についても議論されました。一つはグリーン電力証書についてでして、電力関係など民間サイドで活用できないかということ、また、国民全体で取組を推進できないかということについて議論しました。

二番目は風力関係についてで、系統連系対策について議論がなされました。風力発電の系統連系により周波数が揺れてしまうということは審議会でもかなり以前から議論を行ってきており、平成 17 年には直近の報告書が出ています。風力発電を導入していこうとすると、この系統連系の問題をどう解決していくかが大変重要な事ですので、これについても記載されています。

最後に技術開発の推進についてです。太陽光に関しては、今ずっとコストは下がってきていますが、まだまだ普通の発電に比べるとずいぶん高いです。例えばNEDOの方では 2030 年ぐらいまでのタイムスパンで見てコストを火力発電所並みに下げるなどの技術開発のロードマップを作り、それに向けて様々な研究開発をやっています。その中身については、色素増感などが在りますけれども、新しい材料を使うとか、様々な所に設置できる非常にフレキシブルなものを作るといった用途拡大に関する技術開発ものもあり、それらを推進しています。

三番目のトピックスに関しては、資料には含まれていませんが、毎年RPSの施行状況についてプレス発表しており、ちょうど昨年度の結果がとりまとめられ、今日の午後に発表になりましたので、それを簡単にご紹介したいと思います。まず新エネルギー等供給の総量について、経年変化と表にあります。平成 18 年度はいろんな種類の新エネルギー等、全部をあわせまして 65 億 kWh と言う事でありました。この 65 億 kWh というのは平成 17 年度と比べまして 16.7 %の増加となっています。水力について、年度でかなり数値が変わりますので、 15 年度 8.4 億 kWh 、 16 年度 9.1 億 kWh でしたが 17 年度 7.0kWh と若干減って 18 年度には 9.4 億 kWh という風にまた少し増えたと、水力はそのように年度によって渇水などがあるため若干揺れる傾向があります。

15 年度から 18 年度までの伸びは 24 億 kWh あるわけですが、それを調べてみますとその増分のうち約半分は風力です。風力は 15 年度 9.9 億 kWh だったわけですが、昨年度は 24.4 億 kWh ということで倍以上になりました。次に寄与が大きかったのはバイオマスです。バイオマスは 15 年度から 18 年度で 8.3 億 kWh 増加で、増分の中での寄与は 3 分の1となっています。 15 年から 18 年辺りを見てみますと風力・バイオマスが大きな寄与をしています。また太陽光は 2.0 億 kWh から 5.4 億 kWh という増加をしており、着実に発電量は増加しています。義務量は平成 18 年度で 44 億 kWh ぐらいでしたので、全ての義務者は義務を達成したということになります。

それからRPS法に基づく新エネ等の認定設備状況をここに示しています。昨年度は発電設備を 6 万 7 千件認定し、累積で 33 万件あまりとなりました。設備容量に関して前年度は 375 万 kW でしたが、昨年度末で 475 万 kW ぐらいになりました。件数で数えますと太陽光は非常に小規模のものが多数あり、数を足し合わせるのは難しいのですが、それぞれ増加してきているということです。この今の設備認定の状況をグラフに表しました。平成 18 年度でそれぞれ増加しています。風力が 48 万 kWh 増えているということですが、建設されてから発電量に寄与するのに若干のタイムラグがありますので、風力は平成 18 年度かなり導入されたようです。来年のフローの発電量にはかなり寄与するかなと思います。

上で、 RPS 制度の最近の議論・状況と 18 年度の結果についてご説明いたしました。

【報告2】

「目標達成計画の見直し状況と自然エネルギー」(PDF)
 環境省地球環境局地球温暖化対策課
 大倉紀彰氏

<概要>

今日は目標達成計画の見直しの状況と自然エネルギーということで、先ほど遠藤室長のほうから、 RPS 法の状況に関してお話がありました。環境省の方からは京都議定書のマイナス 6% の削減約束をいかにして達成するかという全体の取りまとめの立場から、自然エネルギー政策の話をしたいと思います。

現在の日本の温室効果ガス排出の状況についてですが、京都議定書の基準年 ’90 年での排出量は 12 億 6,100 万トンです。それが 2005 年の確定値で、 7.8 %増えていまして、 13 億 6000 万トンとかなりの増加です。そこから、 2008 年度から 2012 年度での平均値をマイナス 6% にするということで、その中間年の 2010 年を大体目標においていますが、 13.8 %の削減が必要と大変厳しい状況となっています。海外からの CDM などで獲得するクレジットや森林吸収源を除いて 8.4 %分は国内で削減するという段取りです。

そして、部門別に見た場合、最大の排出量があるのは工場等の産業部門ですが、伸び率でいいますとそんなに伸びていません。伸びているのはいわゆるオフィスビルなどの業務その他部門で、そこが大体プラス 44.6 %と伸びています。さらに我々一般家庭ですが、そこも大体 36.7 %増えていまして、ここがかなり効いているということです。ただし、床面積が増えたり、家庭ですと世帯数が増えたりという状況もあります。

此処まで増えたものを、いかにしてマイナス 6 %までもって行くかという青写真が政府の京都議定書目標達成計画です。地球温暖化対策推進法に基づいて定められている政府の閣議決定の計画ですが、かなり分厚い冊子になっていまして、大体 60 項目ぐらいの対策・施策がずらっと並んでいまして、それを着実に達成すればマイナス 6 %できるだろうと、そういうものになっています。

ただ、経済状況や対策が思ったほどに進まないなどの状況がありますので、適時見直しする事になっています。計画自体は 2005 年に出来上がりまして、見直しの時期がまさに今年 2007 年です。 2008 年からの約束期間の直前になりますが、ここで最後の見直しをして確実に 6 %達成できるような計画に作り変えるということで、現在、経済産業省と一緒に見直し作業をやっています。そして今年度中に新しい計画を策定する予定です。見直し作業について、現在目標達成計画に掲げられている対策の進捗状況が一応 5 月にまとめられていますが、正直芳しくない状況です。

ここに掲げられている対策は、いわゆる大物の対策と思っていただいて良いと思います。新エネルギー対策、コージェネレーション、燃料電池、住宅建築物対策、高効率給湯器、省エネ自動車などです。それらがどれだけ進んでいるかということを俯瞰したわけですが、 2005 年の時点で計画上 2010 年を 100 %とした場合、大体 4 割ぐらいに留まっていまして、このまま推移していくと多分足りない。目標までに全然届かないのでしゃと考えられております。大体 7 割ぐらいに留まって、 3 割ぐらいは何らかの後押しが必要じゃないかと考えております。

加えて、我々にとっては非常に厳しい事ですが、現在、見通しと比べて景気が少し良くなっています。我々は健全成長とマクロフレームと言っていますが、それが 2005 年の当初の見通しとかなり諸情勢が変わっています。今モデル等で検討中ですが、おそらくもっと対策が必要な方向へぶれそうだと考えていまして、情勢はかなり厳しいのではと思います。

そんな中で対策 60 項目を先ほどお話しましたけれども、その中でもいわゆるコアになるものが在りまして、その一つが目達上、新エネルギー対策と呼んでおりますがそれが入っています。

一応、太陽光や風力、バイオマスなど全部ひっくるめて大体 5,000 万トンほど減らそうという計画になっています。ここでは今現在での進捗状況について、幅を持って示しています。対策が上手く行った場合と、現行通りつまり上手くいかなかった場合と示していますが、後者の場合は大体 700 万トンから 800 万トンぐらい CO2 換算で不足するのではという状況になっています。

最後になりますが、その 7,800 万トンの穴が開いてしまうと、目標達成計画の対策はなかなか厳しいものとなると考えています。先ほど飯田先生の方から、現行の目標自体が低いのではないかというお話がありましたが、その低いとされる目標自体でさえ今なかなか厳しい状況です。経産省とは若干認識の違いがあるかもしれませんが、一応目標計画全体を預かる立場として環境省は辛口に評価いたしますので、このままだと大幅に削減見込みを下回るかもしれないと考えています。

追加的な対策・施策が必要と考えていますが、幾つかメニューがあります。今日は東京都さんも来られていますが、まず、国・自治体の率先導入という話で、取組の強化が第一にあると思っています。一応政府の方も、いわゆる政府の事務事業、庁舎の CO2 を減らそうという計画を立てていますが、先ごろ改定しまして霞ヶ関だけではなくて国の庁舎、大体 1 千平米以上の所を考えていますが、そこに太陽光発電を入れることを決めました。いま国交省の官庁営繕部を中心に検討を進めていますが、方針としてはそのようになっています。

その次に予算で補助をして後押しするということが考えられますが、財政赤字の関係もあり、なかなかこれに頼るのも難しい。環境省も経産省も特別会計を持っており、実際太陽光発電などを支援していますが、なかなか増額は難しい。正直な感想ですが、別途、政党のほうで京都議定書目標達成の為の特別予算枠を作ってもらえないかと考えていますが、そうそう財務省も許してくれないとも思いますので、それを見込んで予算を考えるのも難しいです。

次は、先ほどご説明していただきました RPS 法の話ですが、これを確実に実施していただくということです。つまり、東京電力でも余剰電力メニューの購入を続けるという供給側の努力は引き続きやっていただくと。一方最近、我々の方でも考えていますのは、公平な分担と言いますか、先ほど皆で痛みを分ち合うみたいな話も在りましたが、つまり需要サイドでの取組が必要じゃないかと環境省でも、個人的にも考えています。

その第一弾として、議員立法により、環境配慮契約法というものが国会で成立いたしました。これは何かと言いますと、国は排出係数の悪い電力を買ってはいけないと、つまり一定以上の質を確保した電力でないと買ってはいけないということです。

それには需要サイドの対策がありまして、別途目標計画の見直しの中で、審議会等で議論していただいています。さらに踏み込んで、大きな施設などに再生可能エネルギーの電量を一定程度買うことを義務付けること、またグリーン電力証書について議論されているように費用化して法人税上の対象から外すことなど、それを買った場合の税制上の扱いをもう少し有利にしてはどうかという議論が出ています。それらを組み合わせ、精一杯やって、現行の目標を達成できるかどうかかなと、そういう段階です。

マイナス 6 %を達成する以外にも、再生可能エネルギーを促進するという別途の政策目標もありますが、マイナス 6 %だけを考えた場合でも、現行のいわゆる政策はかなり強化しないと厳しいのではと考えております。

環境省の方からは以上でございます。

【報告3】

「電気事業者におけるRPS法評価と京都議定書への対応」
  東京電力株式会社企画部
 見学信一郎氏

<概要>

今日私に与えられたテーマが、電気事業者における RPS 法評価と京都議定書の対応ということですが、 RPS 法については、昨年の今頃であれば、そのあり方についてまさしく議論がスタートし始めた頃で議論のしがいがあったのですが、もう決まったことに関してどのように総括するかを話すよりは、これから先どのようにしていくかをお話しするほうが建設的だと思います。また電力会社の取組に対して、逆に皆さんからお知恵やご提案をいただきたいと思っています。

なお、京都議定書についての東京電力の取組については、第一約束期間 2008 年から 2012 年の 5 年間で、 1990 年比で CO2 排出原単位 20 %削減というコミットメントをしています。

電気の上手な利用とか無駄な利用を抑えてもらうといった「ディマーケット」については、昔から電力会社が呼びかけていることです。しかし、需要側の量の抑制そのものは我々がコントロールすることは出来ないので、では我々は電気の CO2 排出原単位という意味での質を良くしていこうとしているものです。

CO2 排出係数の悪い電気に関連して、ここ数年石炭が目の敵にされていて、我々も大変悩ましく思っています。しかし、日本のエネルギー供給を実業として担ってきた者としまして、環境問題や CO2 問題を考えるときには、その多くがエネルギー消費に伴って排出されることから、エネルギー問題と密接不可分だということをまず念頭に置かないといけない。そのエネルギー問題とは 3E といわれる三つの E (エネルギーの安定供給、経済成長、環境保全)のバランス、あるいは同時達成の問題なわけです。電力会社の経営問題も今までもそうであったし、これからもそうだと思います。

したがって、石炭の問題も環境保全というシングル・イシューだけで捉えて、やれ悪いだとか、抑制すべきだという事ではなくて、全体を俯瞰してどう位置づけるべきかという事がきちんと議論・評価されるべきだと思っておいます。

これは、今日議題となっている再生可能エネルギーについても同じ事が言えるわけです。再生可能エネルギーの特性と話題については皆さん良くご存知だと思いますので、今日特別お話しする必要はないと思いますが、日本のエネルギー構造全体の中で、再生可能エネルギーをどう位置づけていくか、どういう役割が担えるのかと、あるいは課題があればそれをどう克服すべきかということを、やはり全体のバランスを見ながら政府・事業者・国民消費者皆で考えていくべきだと思っています。

また、地球温暖化問題の解決の実効性のある取組みとして、省エネが実効性があり重要と考えます。オール電化やエコキュートについても、電化を進める事が生活レベルの維持向上を図りつつ、省エネが同時に達成できると我々は思っているのでお薦めしていると、そのようにご理解いただければと思っておいます。

これから再生可能エネルギーの普及に向けた取組の一端をご紹介しつつ、その課題が我々電力会社の問題だけでなくて政府の課題でもあり、今日いらっしゃる皆様を含めた国民全体の課題であると思いますので、そういった問題提起をしまして、皆様のお知恵やお力をいただきたいと思っております。

まず一点目は、電力の購入、特に太陽光での余剰電力購入で、先ほどご紹介ありましたように ’92 年にスタートしました。太陽光の設置の増加に伴って当社の電力購入量、それから負担額も増えています。当初は国の設置補助、これとの車の両輪の関係と位置づけており、そして太陽光が自立的に普及するまでの推進策と位置づけられていたと、我々は認識しております。しかし、車の両輪の一つが昨年度無くなり、かつ、 RPS 法という新たな規制措置がとられたわけですが、我々は今のところ歯を食いしばって、現行の購入価格の維持に努めているわけです。

(余剰電力購入によって)企業経営として買えば買うほど赤字になるということは、株主への説明責任や電気料金の公平性の観点からは大変悩ましい問題です。その辺は飯田さんも良くご存知だと思います。今日はその解決への方策を話し合う場でもございませんので、これ以上は申しません。しかし、こう言った悩みがあるということは申し上げておきたいと思います。

二点目はグリーン電力基金です。これは家庭のお客さま向けの再生可能エネルギー普及策として電力会社が自主的な取組として始めました。一口 500 円、ワンコインという言い方もしています。お客さまからいただいた額の総額と同額の、それをマッチング・ギフトと言いますが、電力会社からも寄付をして、それを基金運営主体に助成先等々を決めてもらうものです。

今のところ参加状況としては、 19,535 口。助成総額としては 12 億 3 千万円。 345 件に助成しました。

悩ましいのが平成 12 年にスタートして、 13 年以降それなりに延びては来ましたけれども、ここに来てだんだんと減ってきています。色々な理由がありますが、一つには、事業報告書を基金運営主体の GIAC が 6 月頃に出しますが、残念なことにそろそろ良いだろうと止めるきっかけになることがあるようです。あるいは、定年でちょっと収支を少し切り詰めないといけないと、こう言った方もおり減少傾向にあります。

我々は 2 万口をクリティカル・ラインだと思っていたら、ついに切りました。この 19,535 口とは家庭のお客様の 0.1 %以下、つまり 1,000 件に 1 件以下のお客さま。当社としても実はせっかく作ったのだから盛り上げようと、社員あるいはグループ会社の方が相当入っています。参加者の情報が正確に把握出来ているわけではないのですが、大体半分ぐらいが電力会社の関係者と思われます。つまり、お客さまだけでいくと約 2,000 件に1件ということになります。

これには落胆していまして、再生可能エネルギーは推し進めるべきだというご意見を頂く一方で、「いかがでしょう。ワンコインで始めませんか?」と言う各論については、なかなか振り向いていただけない。この辺を我々どうしていこうかと悩んでいます。この辺は皆さまからもお知恵をいただきたいし、ご意見も伺いたい。

それから二点目はグリーン電力証書。さきほどのグリーン電力基金が家庭向けとすれば、これは企業向けとして一応棲み分けをしています。電力会社だけではなくて、色々なところが証書ビジネスや証書事業を立ち上げてきている。我々の子会社、日本自然エネルギー株式会社も自然エネルギー発電事業者に発電を再委託、事業者の発電分を証書化して、それを企業にお売りする。今現在は 108 の企業団体と年間 8,260 万 Kw の契約という状況です。

おかげさまで最近は非常に引き合いが多くて、例えばミクシィがポータルサイトや会社の中で使う電気に相当するグリーン電力証書を購入しています。イベント向けなどのスポット購入もあります。今後もどんどん伸ばしていければと思っています。

しかし、実は大きな課題がありまして、企業が購入しているグリーン証書は対価性が認められないという税当局の考えがあって、寄付金扱いとされています。悩ましいのが、電気料金そのものであれば各社の資材部門なり管財部門の決済で済むものが、このような証書・寄付金となると、 100 万円の寄付金でも社長決済と言う事がままあります。

また、出来るだけ長期契約をしていただきたいと思っていまして、現に幾つかは長期契約をしていただいていますが、さすがに経理担当の役員さんから「当局がこれを費用として認めないならば、いずれ契約を再考したい」という声も受けています。

これについては、前回の新エネ部会でも言ってきたところであり、経産省、環境省にもご理解いただいておりまして、あるいは、与野党両方の議員からも国会でこのことを取り上げていただいております、良い方向での解決を期待しているところです。

それから RPS 法について京都議定書との関連で言うと、 2010 年の新エネ導入目標量が石油換算量で 1,910 万キロリットルと決められ、発電分野、熱分野のそれぞれに目標値が設定されています。発電分野 838 万キロリットルの約 3 割部分が系統で使う新エネ量であろうということで、ここはきっちり RPS 法の規制で担保しています。我々義務を課せられた以上は、きっちり守ります。残るは熱分野やその他の所をどう推進していくのか、政策としてどうしていくのかということが、国の課題として我々はあるとして考えています。

それから先の新エネ部会で 2014 年までの義務量約 160 億 kWh が決まりました。決まった以上は一生懸命やっていきますが、当社について言えば、まだあてがありません。また、一体いくらお金をかければいいのかという問題もあります。電力会社全体で 1 千億円という試算もありますが、これは新エネ事業者さんが一体いくらでオファーしてくれるかということの裏腹になります。

2010 年が 1.35 %、 2014 年の 160 億 kWh が 1.65 %ほどになっています。例えばこの 1.65 が欧米に比べて非常に低いという意見もあります。私の認識・解釈ですが欧州では出来るかどうかはともかくとして、まず、野心的な目標を設定する。そして再生可能エネルギーについては 2020 年に 20 %。具体的なロードマップはこれからだと聞いています。こういった志を高く持つという事に関しては評価できると思っています。

一方で、欧米でよくあることなのですけれども、野心的な数字を作っておいて段々達成できなくなると分かると、さらに長期で野心的なものを設定し直すというところがあります。他方、日本人は一端決めた数値目標には自縛的なところがあるので、やはり実現可能性も見たうえで設定をしてそれをきっちり守っていくのが、日本人のやり方として望ましいのかなと思っています。

それから、なぜ再生可能エネルギーを導入していくのかという、その主たる目的に関して、その一つが CO2 削減であるとした時に、 EU はその実現手段としての原子力を各国の共通の政策として持てない。そうすると電気の世界で、何で達成するかといった時に、彼らが取れる最大公約数が再生可能エネルギーではないかと思っています。他方、日本・アメリカについては、やはり原子力をそれはそれとしてしっかりやっていくという政策がありますので、そことのバランスがあるのかなと思います。

他方、厳しい競争がエネルギー業界にもありまして、それは電力会社同士だけでなくガス事業者との戦いもある。さらに社会的な要請として 1 銭 2 銭、 5 銭、とにかく電気料金下げてくれと言う話もあります。他方、再生可能エネルギーはどうしてもコストがかかる。これを伸ばしていくには、電気料金が多少高くてもいいから再生可能エネルギーを入れたらどうか、といった国民的気運が必要です。総論としては再生可能エネルギーを一生懸命推進していきましょう、でも、各論として電気料金は出来るだけ安く、その穴埋めは電力会社が頑張ってくださいだけだと、なかなか良い出口が見つからないのではないかと思います。そう言った意味での電力会社とお客さまとの上手いコラボが必要ではないかと、京都議定書の達成だけではなく長い目で見た時に、そういった取組み方が必要なのかなと思います。

大変雑駁ではありますが、以上です。

【報告4】

「京都議定書目標達成計画見直しと自然エネルギー」(PDF)
 世界自然保護基金(WWF)ジャパン
 山岸尚之氏

<概要>

いきなり余談から入りたいと思いますが、一昨日ライブアースと言うコンサートがあったのを、ご存知の方いらっしゃいますでしょうか。アル・ゴアさんが呼びかけて、 Save Ourselves 、 SOS という名前の NGO が世界の合計八つの都市、日本は京都の東寺と千葉県の幕張メッセでコンサートをやりました。海外ではロンドンやニューヨークなどでコンサートを行い、幕張メッセの方は、若者向けのアーティストや海外アーティストが出演していました。

私は普段どちらかと言うと政策の話を担当していることが多く、つまり楽しいイベントはなかなか参加させてもらっていません。だからすごく新鮮な雰囲気で観ていました。アーティストさんたちがかなり有名な方なので、必ずしも温暖化問題自体に関心がなくても皆来ている感じでした。しかし、そこにある雰囲気はすごくポジティブで、良いなと思いながら聞いていました。

何でこんな話をしているかと申しますと、この自然エネルギーに対して持っている私のイメージもそれと同じような感じで、自然エネルギーとは基本的に何かを推進していきましょうという形ですよね。省エネルギーとは確かに、無駄なく使うという意味で良いのですが、自然エネルギーとは何か創り出していくと言うか、新しいものをより広げていきましょうという大変ポジティブなイメージがあります。太陽光であるとか風車であるとか、そういった自然のものの活用というすごくポジティブなイメージがある、そういう対策分野であると思うのです。

それで自分はそういったポジティブな対策は普段担当しておりませんで、排出権取引制度という今日のプレゼンでもちょっとお話をしますが、どちらかと言うとそちらの方から国内対策を見ている担当者なのです。ですので少し違った視点の人間が、自然エネルギーという事を語らせていただきます。

中身に入りたいと思いますが、お題として京都議定書目標達成計画見直しと自然エネルギーと頂いていたので、今日はまず最初に、目標達成計画見直しを考えるに当たっての前提条件というものを話しまして、その後に目標達成計画の中で自然エネルギーがどのように扱われているのかに関してコメントしたいと思います。

その中で端的に言えば、先ほど環境省の大倉さんのほうから説明がありましたが、新エネルギーの対策という形で入っています。そこで、あえて私は二つに分けたいと思います。ひとつが RPS 法で、もう一つが最近話題のバイオ燃料です。それぞれにコメントして最後にまとめといきたいと思います。

今年 2 月から、ご存知の方も多いとは思いますが、 IPCC の第 4 次作業報告書というのが、第一作業部会、第二作業部会、第三作業部会と続きまして報告されました。その第三作業部会の中に入っているグラフがここに載っています。 IPCC/AR4 と書いているグラフです。環境 NGO の世界では、地球温暖化を危険でないレベルで止めようとすると、工業化以前に比べて地球平均で 2 ℃未満の気温上昇に抑えなければならないということが、一つのコンセンサスとなっています。

それを仮に達成しようと思うと、この IPCC の中で唯一それに該当するパターンが載っているグラフといいますとこれになります。どれぐらいの削減を意味しているかと言いますと、今後 10 年ぐらいで世界の排出量を頭打ちにして、さらにそれ以降は減少傾向に転じさせる、そしてその後 2050 年には、現状から 50 から 85 %温室効果ガスの排出を減少させなければいけないという数字になっています。

これは大変な数字だと思います。また同じく WWF Japan 、私が所属しています団体が、リーダーたちの直轄の組織でエネルギー・タスクフォースというのを作りまして、そこが独自のエネルギービジョンを、いってみればエネルギー・シナリオを作りました。その中で描いたのは、 2 度未満を達成する為にはどのエネルギー技術を使って、どの様に削減しなければならないか、どのくらいの規模で削減が必要なのか、ということで、それらを導き出したシナリオになっています。

その中で使用されている手法は、 2 度未満を達成しようとしたときに、一体どれぐらいの二酸化炭素の排出量と言ったものが許されるのか、ということをまず計算して、それをこれからの 200 年の間に割り振るわけです。割り振ってそれを達成するようなエネルギー技術での削減を、逆に計算している形になっています。 2200 年までの 5,000 億トン、炭素換算なので二酸化炭素換算とすこし違うわけですが、二酸化炭素をいかに使っていくかということを計算しています。それがグラフの上の端で、下の端は 4,000 億トンです。なぜかと言うと 5,000 億トンと言うのは森林の吸収源がきちんと機能するということを前提としているので、このまま、例えばアマゾンの伐採などが進んで森林の吸収源がより減っていくことになると、 4,000 億トンの方へぶれていくので、この幅があるということなのです。

次に、ご存知の方もいるかと思いますが、実はウェッジというアプローチがありまして、削減しなければならない量を最初に決め、その削減しなければならない量を幾つかの区分に分けて、それを各エネルギーでどのように達成しなければならないのかということについて、計算していく手法があります。それに似た手法を採用して WWF のエネルギー・ビジョンも作られています。

今日、関係があるところだけお話しますと、真ん中の辺りに幾つかの帯があります。自然エネルギー相当分がこれだけの帯を占めているということです。基本的にそれより上の部分は、エネルギー効率の改善であるというふうに見てください。それでこのような文脈で、これは世界の文脈ですけれども、私たちは国内の温暖化対策を見ています。

次に、日本の対策はどうなっているかです。基準年たる 1990 年、細かいことを言えば、代替フロン等は少し違いますけれども、とにかく基準年からは 7.8 %、 2005 年までに増えています。そして 2005 年を基準とした場合、大体 13 %ぐらいを削減しないと京都議定書の目標は達成できない。しかもそれは来年から始まる状況です。ですから私たちとしては、日本はひいき目に見ても順風満帆だとはいえない状況にあると思います。なおかつ今までお話してきたビジョンの中で日本が適切な役割を果たしていくと考えれば、その削減率は中長期的に 60 から 80% 削減が必要であると言われています。実はこの 60 から 80 %と言う数字は、あとで東京都さんがお話される 80 から 90 %と言う数字より小さいものです。環境 NGO が都より少ない数字を掲げていると、あとから上司から怒られそうなんですが、そこは見逃してください。

その中で兎にも角にも京都議定書の目標の達成はあくまで一里塚に過ぎず、また、その後には更なる大幅な削減の必要性が待ち構えていると言うことを前提として、私たちは今の対策を考えなければならないということだと思います。

それでは、自然エネルギーが目達計画の中でどのように位置づけられているかと言いますと、新エネルギー促進の対策という名前で 4,690 万トンのCO2の削減が見込まれています。この数字 4,690 万トンと言うものがどのようなものかと言いますと、経団連の自主行動計画のもとで削減が見込まれている削減量と大体同じレベルです。それが大きいのか小さいのかという問題はありますが、新エネ、再生可能エネルギーが温暖化対策の中で、省エネルギーと双璧を成す分野であるとすれば、もう少し期待できるのではないかと私としては思っています。その中で具体的な政策としては RPS 法や、バイオマス・ニッポン総合戦略などが書かれています。

ここからは、はじめに申しましたように RPS 法と、いま話題となっているバイオ燃料を分けてコメントさせていただければと思います。

まず RPS 法について。基本的には RPS 法という手法そのものについて、我々もどちらかと言うと、すでに実績が上がっている固定価格買取制度のほうが望ましいのではないかと思っています。目標達成計画の温暖化対策のプロセスを見ている人間からすると、もう一つどうにも解せないのが、 RPS 法の目標値が先に決まってしまうことです。これは RPS 法の分野だけではないのですが、たとえば、車のトップランナー基準値も先に決まっている。京都議定書目標達成計画と言うもの、全体的な総合フレームワークがきちんと見直しが進む前に、それらの目標・中身の対策の目標がすでに先に決まってしまうと言う現状は、ちょっとまずいのではないかと思います。

今ようやく現状の対策・施策が見直されていて、現状確認が終わって、じゃあ見直そうかという話をしているところなのに、結構、核となる新エネの外堀がすでに埋まっているという状況があるのは、整合性としてちょっと問題があると思います。

さらに RPS という手法に関して、 WWF は、私たちが別の文脈で提案させていただいている排出権取引制度と同じで、基本的に一番大事なのは目標の高さと考えます。排出権取引制度も一番大事なのはキャップをどのレベルで設定するかというところです。それと同じことで、 RPS 法もやはり目標の高さをどこに設定するのかが大事であります。目標と言ってはいますが、その目標を決めた時点でほぼその政策の効果は決まってくると言えると思います。もう一つ言いますと、単に短期的な目標だけを定めてしまいますと、短期的な目標達成の政策ばかりが注視されてしまう傾向があるので、長期の目標もやはり同時に採択すると言うことが、実は重要であると考えております。

次に突然で恐縮ですが、新エネルギーを促進する観点からもわれわれとしては、排出量取引制度を提案させていただきます。排出量取引制度に関してまとめて説明しますと、要するに排出量取引制度の一番大きなポイントというのは、やはり排出するという行為に関して価格を付けること、つまり費用化するということです。それによって今までであれば頑張る人は温暖化対策を頑張るけれども、頑張らない人は別に頑張らなかったということに対して、頑張らない人に対しては絶対にコストの部分が上乗せになってかかって来るというかたちを通して、一般企業などの認識のレベルでの変化ももたらす。このような特長があります。そこが幾つかある排出量取引制度の特徴のうちで、特徴的なところだと思います。他にも色々言いたい事は在りますが、時間的に都合が付かないので次へ行きます。

駆け足になって恐縮ですが、市民にとっての削減機会というスライドがあります。ここでお伝えしたかった事は、安倍首相が先日されたスピーチの中に、国民運動、一人一日1 Kg 削減しましょうという話が在りました。しかし具体的な数字に直して家庭の排出量に当てはめてみますと難しい。掛け声として皆に頑張りましょうということ自体は良いのですが、もう一つ政府にお願いしたい事は、個人が削減できる機会をより多く提供することです。そういった取組の一つとしてグリーン電力といったものに関する枠組みを、もう少し後押しするといったことも重要なのではないか、ということです。

削減を頑張りましょうと言うのは良いのですが、その時、皆がやってみようと思った時に気軽に取組めるような枠組みを提供しなければならないと思います。その意味でグリーン電力というのは一つの大きな重要なオプションだと思います。ですから先ほど出ていました、寄付の話はちょっと個人には関係ないかもしれませんが、小口化がもっと進む制度にするなど、よりグリーン電力といったものへの理解が進むような仕組みを、いろんな所に作るなどの制度的なバックアップをしてあげること、枠組みを提供してあげることが、国民に自主的に頑張ってくださいというだけではなくて政府が果たす重要な役割であると考えております。

最後にバイオ燃料に関して話します。バイオ燃料に関しては最近、大変メディア報道がたくさん出てくるようになってきまして注目が集まってきています。必ずしもその中にはバイオ燃料に関して肯定的なものばかりではありません。たとえば、食料との競合があり、貧しい国の人たちにとっては大変悪いものになっている。不利益をもたらしているとか、バイオ燃料を使う為に多くの森林が伐採されるなどの問題が出てきています。ですから私たち WWF Japan としては基本的に、バイオ燃料の使用そのものについてはポジティブに見ていますが、ただし、そのためには、いくつかすでにヨーロッパの方ではイギリスやオランダでは進んでいる、きちんとした認証のスキームを先に作ってほしいと思っています。たとえば、ライフサイクルで見た場合、きちんと温室効果ガスの排出削減になっているかということ、たとえば燃料のときには削減になっているかもしれないが、肥料を大量に使って N 2 O が大量に排出されているケースもあるらしいです。そのようなライフサイクルでトータルで見たときに、削減になっているかどうかや、それから、環境社会影響がちゃんと考慮されているかどうかです。我々の場合ですと High Conservation Value Forest とか、 High Conservation Value Area と呼びますが、保護価値の高い地域があります。それら地域を、たとえばバイオ燃料を得る為に開拓してしまっていないかどうかというところに関してチェックするべきだという事です。これらをクリアーするという事を、ぜひ重視して頂きたいと我々としては考えています。

ちょっと駆け足になって恐縮ですが、最後にまとめとして、幾つかのポイントを述べさせていただきたいと思います。まず、温暖化対策を考えている観点からすると、自然エネルギーがどうも脇役に追いやられている感じが拭えません。自然エネルギーというのは温暖化対策の中でも主役に据えるべきものなので、その扱いがどうにかならないかと考えております。それから、もう一つ目達計画ともろもろの見直しに関しての整合性を持たせて欲しい。これは、仕方がないことかもしれませんが、プロセスとしてやはり全体として整合性がある政策を作って行く上で、重要なのではと我々としては考えています。そして、排出量取引制度というものはカーボンに価格をつけるという意味で、自然エネルギー促進の観点からしても重要だと思います。

それから今日お話できなかったのですが、これからお話される東京都さんのような地方が行っている事をどれだけ促進できるかが、目達計画のなかでは短期で成果を挙げるためには極めて重要だと考えています。

それからグリーン電力のところで述べたように、市民の削減の機会や選択肢を与えるということが政府の役割として非常に重要であると思います。

また、持続可能なバイオ燃料の定義に関して早々と作るべきで、これは NGO という立場を離れて国益の観点からも重要です。基準と言うものは先に作ったもの勝ちですので、イギリスとかオランダなどが今、もうすでに Certification 、認証の仕組みを作り始めています。欧州委員会でも相当動きが出て来ていまして、“メタ・スタンダード”など、いろんな概念/アイディアが飛び交っています。そのような流れの中で先に作られてしまいますと、それがデファクト・スタンダードになり、別の分野の RoHS や REACH 規制のようにあとで泡を食うはめになってしまうので、日本としてもこのところを重視していただきたいと考えています。

【報告5】

「東京都の温暖化対策と自然エネルギー」(PDF)
 東京都環境局環境政策課副参事(環境政策担当)
 小原昌氏

<概要>

最初に、基調にある東京都としての考え方が参考になると思うので言及させて頂きます。

私は昨年の 12 月から今の温暖化対策の仕事に移ってきましたが、その前は自動車の関係をやっており、石原知事が就任した 99 年からディーゼル車対策の企画をやっていました。ディーゼル車が空気を汚すということで、都から全て閉め出すことを打ち出しました当時、バス・トラックなどは全てディーゼル車で、それらを閉め出すことが現実的にできるのか?いう問題を内部で抱えていましたが、そこで止まっていては空気はきれいにならないということが 20 年以上の自動車公害対策の実績ではっきりしていました。その時知事は政治的決断を既にしており、「きれいにするんだ」ということを中心に考えろという指示が出ていました。つまり空気を汚すなら走らせない、というメッセージでした。

その後の経緯として、まず燃料がきれいになりました。国内で現在使われているディーゼル燃料は世界で最もきれいなもの。国内で販売されている新車は世界最高水準の排ガスレベルで、そういうものが普通に売られています。

東京都としては温暖化対策に対しても同じスタンスです。知事は既に決断を私どもに示しており、地球規模で人類が今後行き続けていくために必要な対策ということで、 2006 年 9 月議会の施政方針演説の中で、今世紀の半ばまでに全世界で CO2 排出量半減を実現するための都市モデルを東京都がつくっていくことを明言しました。その際に内部的に伝えられていたのは、東京が 5 割で済むと思うなということでした。 8 ? 9 割を含めてきちんと考えろ、と。

その時何を考えるのかと言うと、ではここからスライドに入っていきますが、まず温暖化を食い止める、そのために実効性のある施策をやる、ということ。アリバイとしての施策は許さないということです。そう言われ、 2006 年には東京都再生可能エネルギー戦略は既に打ち出してありましたが、他にエネルギーのグリーン購入拡大、カーボンマイナス 10 年プロジェクト、そして東京都気候変動対策方針を 6 月 1 日に発表した、という流れになっています。

この再生可能エネルギー戦略のコンセプトとしては、しっかり省エネしたうえで再生可能エネルギーの割合を増やしていく、ということ。地球規模では今、実際にエネルギーを使わずに暮らすことを余儀なくされている人たちが大勢おり、その人たちが貧困から抜け出したいという動きが世界中であります。東京都と同じようなエネルギー消費が世界中で行われると今のペースより加速度的にエネルギー消費がふくらみ、この状況を維持できないことははっきりしています。どうしてもエネルギー消費が増えてしまう所が出てくるでしょうが、そこが目指す先進国の生活の姿として、エネルギーを浪費する生活を目指されてしまっては良くない。東京からそのような所をリードするため、徹底的にエネルギーは少ないが豊かな社会に変えていく、というのが知事から言われている、東京都が取り組む温暖化対策の根底にある考えです。

ただ、それをどうやってやるかはしんどい話です。既に今までの説明の中で、東京都がバックキャストをしていることがご理解頂けるかと思います。手元にある政策と政策を組み合わせてとそういう政策を打っていこうという話は東京都では一切されていません。知事から言われた「今、何をしろ」というところからバックキャストするほかない状況で政策を作っています。

その中の一つ、再生可能エネルギー利用目標ですが、去年の 4 月に、 2020 年までに都内で使われているエネルギー消費に占める再生可能エネルギーの割合を 20 %という目標を掲げました。これは当時から厳しい目標です。自動車燃料関係は特に厳しく、大量に入れるためには技術的に様々な方法があり、それらを実践することは不可能ではないのですが、どのルートを取っても、上流のところで、どこから原料を持ってくるのかという問題があります。食糧用に効率よく生産しているフィールドがあり、そこからなら一番効率よく原料を得られますが、そこから持ってくると、食料とのバッティングをしてしまいます。従って効率が悪いところから効率よく持ってこなければならない、というのが自動車のバイオ燃料利用の課題と理解しています。ここで足を引っ張られ、20%というのが厳しい目標になっている。

目標のボリューム感について、都内の消費量に対してどのくらい、というのがスライド 12 の下から3つ目のぽつにございます。ここで対比の対象となるのが都内の数字ではなく、日本全国の数字しか出てこないくらい大変な目標というのがご理解頂けるかとおもいます。

それを実現していくため、再生可能エネルギー戦略の中では 1. 需要の創出、 2. 自然エネルギーとしての特質を活かす、 3. 個人と地域が選択するエネルギー利用、という 3 つの方向性を出しました。需要というところで、東京という所はそもそも面積がせまくて適していないとか、都市化が進んでいて地価が高くなかなか用地が手に入らないとか、供給面で難しい色々な条件があるものですから、一番力を入れる方向としては買い手として少々割高でも買う、ということをしっかり示していく、ということがあります。買い手の立場で買う再生可能エネルギーに関してですが、都は電気ありきではないと見ています。実際に使っているエネルギーには熱や動力もあるが、実際都内の CO2 排出量を見ていくと、暖房や給湯などの熱使用からけっこう出ています。この部分でしっかり排出量を減らすことを考えると、生活の質を落とさないでどうやって必要な動力・熱を確保するか?という問題にぶつかります。照明は電気じゃないと難しいところもありますが、最近は高効率のものも出てきています。給湯を取っても、熱をそのまま使うのもあるし、電力を使うエコキュートなどもあります。今まで使われてきたものを前提にするのではなく、新たに使える技術を動員していきながら、生活の質を下げないよう、用途別にユーティリティーを中心としてそれに必要なエネルギーをどう獲得するのか、を考えていきます。

そうしますと方向性2として、自然エネルギーとしての特質を活かすということで、例えば太陽の熱もしっかり使うということがあります。熱か電気か、ユーティリティに合わせた選択をしながら、再生可能エネルギーを個人と地域で選択するという方向に向かっていきたい。率先行動として東京都は、少々割高ではあるが、電気のグリーン購入を行って再生可能エネルギーの購入率を上げていきます。今は、都の消費電力の 5 %を目指して進めています。志ある他の自治体にも同じような取組を呼びかけており、日本全国の市町村がグリーンエネルギー購入を進めています。グリーンエネルルギー購入フォーラムも設立して広げているところです。今後、グリーン熱購入もやっていきたいと思っていますし、今年3月に東京都グリーン調達指針の中では、バイオガソリンが試験的に供給されているところを踏まえて、率先的に使用していきましょうということも位置づけてあります。

カーボンマイナス東京 10 年プロジェクトというのは、昨年9月議会で知事が示した方針に基づいて年末に出した「 10 年後の東京」の中味です。5つのポイントがありますが、その中で再生可能エネルギーについては 3 つのポイントを掲げています。これらの対策を進めるため、東京都は 10 年間の取り崩し型で、 500 億円の基金を創設しました。来年度から基金充当事業は始まっていくが、現在基金の活用方法を考えているところです。

気候変動対策方針について、考え方は4つあります。まずは技術が最大限発揮される仕組みをしっかりやっていこうということ。ハイブリッド車にしても、太陽光発電にしても、日本の持っている技術が世界中で貢献しており、それらをしっかり使っていこうということです。2点目としては、大企業がやってくれればいいんだ、ではなく大企業、中小企業、家庭がそれぞれ役割と責任に応じて CO2 削減できる仕組みを作っていくということ。今後の3,4年間で重点的にやり、 CO2 排出量が減少に転じることをやっていかなければなりません。お金の面では、民間資金や500億円基金、税制を活用してやっていこうという考えです。

方針 1 から 5 の中の1についてですが、都は温暖化対策計画書を実施しており、大量に CO2 排出している事業所については、どういうことをやってどれだけ排出しているかを把握しています。つまりインベントリがあるわけです。現状は、一生懸命やっているところと全然やっていないところと、二分化傾向です。全然努力していない事業所については、義務付けを課します。課せられても容易に達成できない場合もあるだろうが、「できません」で済ますのではなく、中小事業者や家庭からの削減を購入できるようにして排出量を買ってもらう。よって排出量取引制度を今回導入する方針を出してあります。背景にあるのは、中小事業者や家庭が CO2 削減量をしっかり出していく支援策を打ち出していくということです。

関連して、方針 2 (家庭)については太陽光発電設備の数値目標として 100 万 kW の導入を目指すと言っています。今まで東電の余剰電力買い取りメニューに頼っていたわけですが、今後は都内だけで 100 万 kW を達成することを考えると、今後もそれに頼る状況ではないだろう。現在、これに関しては固定価格で一定期間、電力は買い取れないがグリーンの価値を買い取る方向で新たに検討しています。検討内容については、太陽光発電利用拡大検討会を都は3月からやっており、その中で議論しています。色々な方々の意見を聞きながら中味を詰めていく方向です。気候変動対策方針の中では、これは家庭における取組から CO2 排出削減量をかき集める仕組みとして固定価格で都が買い取り、かき集めたものは、一案としては大規模事業者ではなく事業所単位で、削減義務がクリアできないところに買ってもらうことも含めて検討していきます。

これだけ大量にしっかりと中小企業や家庭の支援策を行っていくには財源が必要になるものですから、基金とか省エネ促進税制を考えていこうと。そういう安定的な財源が投入されれば省エネ対策や家庭の対策が大きく広がるのがごく当たり前にビジネスセクターからは見え、ここに民間資金が大量に入っていくのではと思っています。そういう意味で環境金融としています。

一番申し上げたいのは、気候変動対策を示したスライド 30 の図の中で、1から4の仕組みは単品でそれぞれ難しい面も抱えているが、互いに補い合って政策パッケージとして大きい構造を支えていくものであり、それを東京都はやっていこうとしていることです。

最後になりましたが、都は具体的数値を掲げ、民間企業との連携や他の自治体との連携もやっていきます。

フロアを交えた討論

コーディネータ:飯田 哲也

<概要>

飯田:

では後半をはじめたいと思います。ここまでの報告で、ある程度論点は出てきていますので、まずはフロアの皆様からご意見を頂こうかと思います。

藤井(明治大学):

全般的な感想を述べさせて頂きます。最初の 3 つのプレゼンテーションを聞いて思ったのは、将来どうするのかということです。今人類はどういった問題にさしかかり、このままではだめだということは分かっている。それなのに、いつまでにどういうスタンス・目標で何をどうやらなくてはいけないかをきちんと抑えないから、先がどうなるかわからない状態になってしまう。その点では、やはり WWF と東京都は目標をしっかり定めてプランを立ててやっているので、評価できます。なぜ最初の3つ(経産省、環境省、東電)が不安かというと、ここでは先が見えないからです。東電は原子力を基軸に据えてと言うが、将来はどうなるのでしょうか。ウランだって有限であり、そういったものを基軸に据えて考えるのがおかしい。現在地球が遭遇している状況をもう少しきちんと考えなくてはいけないのです。それに、自然エネルギーのコストが高いという問題ではなく、環境に対して我々がどれだけのお金を払うのかが問題で、そうした状況に社会を持っていく政策が重要なのでは。それなのにそういった政策は何もありません。例えば CO2 排出削減には、税制を見直すことも一策だと思います。そういう根本的なところに立ち返って考えればもっとスムーズにいくはずです。将来の次の世代、またその次の世代の人たちが生きる場がどうすれば構築できるのか、を考え、我々さえよければという考えは捨てるべきだと思いました。その点で WWF の提案は良かったと思うし、東京都は今のシステムというか、税制の問題、エネルギーの長期対策も含めて、いろいろと工夫なさっている面が多々あると感じました。以上、総括的な意見です。

大野( 参議院議員 足立信也事務所 ):

発電の費用についてお聞きしたいのですが、 7,8 年くらい前にいろいろ審議会等で聞いたのだが、 1kWh あたりのコストで火力はだいたい 6 円、原子力は 5 円、そして自然エネルギーはまだ高いという結論だったと思います。石油についてはここ 10 年でだいたい価格が 4,5 倍になっており、ウランについては 10 倍近くになっていて、今後も安くはならないようです。どれくらいの勢いで高くなっていくのかが争点になっており、大変深刻な状況だと思います。その中で自然エネルギーの競争力について、電力会社が買った方が安いという状況に既になっているのか、なりつつあるのか、今後どういう状況になっていくのかご登壇者全員から教えて頂きたい。

山口:

東京都の取組は非常に意欲的で、 NGO のプレゼンテーションと思ったくらいです。その中で、上流のどこからバイオ燃料原料を持ってくるかという話がありましたが、それに関連して、素人考えではありますが、人間の糞尿をもっと利用したらどうかと。電力を使う所と作る所が木質バイオマスなどですと違いますが、糞尿ならそれが一致する。糞尿利用を検討されたことがあるのかどうか、お答えをお願いします。

中島(小水力協会)

小水協内部で RPS 法について議論した結果として、公式意見として固定買い取りを要求する方針になりました。 RPS 見直しが終わったとたんに今度は固定の話か、と言われるので直接それについてではないのですが、その議論をする中で一つ気づいたことを話します。資本経済のダイナミズムをどう上手に引き出すかという観点で考えたとき、 RPS という制度は電力市場にフォーカスしています。ところが、小水力がその典型だが、そもそも技術つまり発電装置が壊滅状態にあるときに電力マーケットでゴミ発電と競合しろと言われてもとうてい無理です。私達の立場で今必要なのは、発電機マーケットへのフォーカス。つまり、発電機のメーカーがそこに大胆な投資をして、安くて性能のいい水力発電パッケージを作っていくことにフォーカスすることです。そのため発電事業者は一定期間、例えば価格維持などで発電市場を保護し、発電事業が回るようにすると、マーケットの姿が見えることになる。それが見えない限りメーカーは投資しないので、見せることにより投資を促進します。それによって安くていい製品が作られれば、あとは無理しなくても自動的に売電価格は下がってきます。特にエネ庁、経産省として、是非その発電機のマーケットについてどう考えているかお聞きしたい。最近の例で言うと、太陽光も大規模な投資をすれば安くなると前々からいわれていましたが、企業が投資の回収に確信が持てず躊躇していました。ところが去年から急激に投資が流れてきた、この例も参考になるかと思います。やはり RPS より固定価格が良いと考えてはいますが、とりあえず RPS で動いているのであれば、その中で他の政策によってどうやって小水力始め発電機のマーケットをつくるか、についてお聞きしたい。

肥塚(船井総合研究所):

皆様のお話をお伺いして、自然エネルギーに対する積極的な取り組みが行われていることにとても感心致しました。また、東京電力については民間企業にも関らず、コスト面では高価な自然エネルギーの買い取りをされ、努力をされていることを感じました。民間、特に中小企業ではコスト面から自然エネルギーや環境問題はどうしても二の次になってしまうことが多いのが現状です。現在、民間企業で自然エネルギーの導入というと PR 活動・CSRの意味合いが強く、経済的観点からの導入事例は聞きません。自然エネルギーを今後どのように民間企業に浸透させていくのか議論しなくてはいけないと思います。それについて意見をお伺いしたいと思います。

飯田:

ではこれまで出たご質問・意見を織り込みながら議論いければと思います。

いきなり RPS に入るよりも、藤井先生からご提起いただいた長期的なビジョンから入りたいと思います。東京都小原さんからバックキャスティングの話がありましたが、これは都と WWF の特徴で、最初の政府のお二人と東電のスタイルは、ビジョンをぶち上げる EU とは異なる、出来ることからやるという日本式スタイルです。遠藤さん、大倉さん、見学さんから、この辺りの違いはどこにあってどのように考えておられるか、という議論から始めたい。つまり将来の話と毎日の業務の話、そして遠藤さんには山岸さんから問いかけのあった目逹計画をやっている最中に目標値を決めてしまうのはおかしいのでは、という問いについてどうお考えかお話頂きたい。

遠藤:

長期的な見通しを持って、という話ですが、私は以前京都メカニズム関連の仕事を担当していたのですが、気候変動は長い視点で対策を考えなくてはいけない問題と考えています。ヨーロッパなりが非常に具体的な目標を掲げて議論を展開してきました。 G8 前に安倍総理が発表した「 Cool Earth 50 」の中では 2050 年までに半減という具体的な数値も入っており、長期的な話もしています。一方 RPS 法に関しては、 4 年間経ってみて着実に積み上げてきており、こういった手堅いことも必要だと考えます。エネルギー政策は気候変動対策の他にも、エネルギーの安定供給、経済成長、環境対策など様々な観点で進めており、昨年も新国家エネルギー戦略というのを出しましたが、そこでもスコープは 2030 年になっています。

技術的な面では、一昨年には 2100 年までを見通してどのような技術が必要かという点について、バックキャスティングした議論も行っています。今日は直近の動向の話をしましたが、長期的視点も重要であると言えます。 RPS 目標見直しを目逹計画の途中でしてしまった、という点については、 RPS 法は 4 年毎に 8 年先を決めるということになっており、今年が節目になっていたということです。それを決める際にも今後の新エネの見通しも入れつつ行っています。

大倉:

おっしゃる通りだと思います。私は目達計画の担当で、今は目の前の 6% 削減をどう達成するかで頭がいっぱいで、直近の話をしてしまいました。しかし政府は 2050 年 50% 削減を出していますし、国立環境研究所が 70% 削減というラインで、 2050 年の数字を描いており、その中で自然エネルギーはどのくらいを占め、省エネでどれだけ稼いで、という内訳をバックキャストしたものを一応作成しています。

私はまちづくりの担当でもありまして、都市構造そのものを考えています。業務・家庭・運輸部門がのびているという話をしましたが、増えた理由は業務なら床面積、運輸なら走行量といった活動量が増えているからです。この活動量を規定するのは都市構造で、これを変えなければ将来半減もあり得ないという話で、去年の白書にも書かれていますが環境省としては国交省と協力し、将来を見据えてやっております。そういう意味では東京都のようにパッケージとしてお見せできればよかったと思います。一つ言えるのは、現行の 6% 達成をせずして将来半減の話を世界が聞いてくれるのか、ということがありますので目の前の目標と長期的な視点と、二通りの考え方がいるのかなと思っております。

見学:今日の議題には長期ビジョンはなかったので、そこには触れませんでした。「美しい星 50 」が出て、 2050 年に向けて今、何をすべきかというのは我々としても検討しているところです。

政策立案者と我々との違いは、我々は瞬時瞬時で電気を安定して供給するという責務があることです。一昨年の厳冬の際に電力需要が大幅に伸びた中で電気の安定供給が出来たのは、石油会社や商社が燃料を絶え間なく供給してくれて火力発電所がフル稼働したことが大きく、電気を当たり前のように供給する裏側で胃の痛くなるような思いをして乗り切ったとも思っています。この夏についても猛暑になることが予想され、これだけ地球温暖化の話はされる一方で、暑くなればそれだけ電力需要が上がるという現実があります。我々としては抜かりのないようにきちんとした体制を組んで電力安定供給をすることが責務です。そういう現実を見据えながら企業経営として、地球環境問題に対する国や自治体の政策と我々の事業をどう整合させ、折り合いを図っていくかがある訳で、それをしないと却って無責任になるだろうと思います。

発電については確かにウランや石油が有限であるとの問題があることは、我々も十分に認識しております。原子力も万能ではなく、それが持つ事業リスク・課題についても十二分に心得ています。ただ全体のバランスの中では原子力が欠かせない政策であることは、我々は間違っていないと思います。風車も価格上昇していますが、相対的に風力は競争力がついてきたと思います。ただ悩ましいのは 多くの再生可能エネルギーが天候に左右されるということです。太陽光なら曇り、風力なら凪の日に、同時に電力需要が減るかと言えば必ずしもそうではない。そうすると、風力や太陽光利用を伸ばすと同時に、火力発電所のバックアップにも、それに合わせた手当が必要だということにもなります。

飯田:

どうもありがとうございました。今日は京都議定書がテーマだったため、長期ビジョンを織り込めなかった面もありますが、今少しお話いただきました。大きな話としては、皆様のプレゼンの中でもまず RPS 法がキーワードとしてあり、 RPS ができれば京都議定書が達成できるのかという話と、 RPS 法にもっと電力分野で上積みできるのでは、という議論がひとしきりあるかと思います。また、自然エネルギーの熱利用の話も後で少し話したいと思います。それからバイオ燃料ですね。それらについて議論を進めたいと思います。山岸さん、 RPS 法について京都議定書との関連でどういうことができるか、電力分野の上積みと RPS 法達成について追加で話していただけますか。

山岸:

ちょっと難しいお題をいただきました。逆に確認したいのですが、気になっていたのが、京都議定書目逹計画は基本的に個別対策・施策を細かく積み上げて、トータルで削減見込み量を達成ということになっています。ですから全部を数字通りに達成できれば目標達成できるということです。自然エネルギーについては 4690 万 t の CO2 削減見込みとなっています。しかし目達計画の施策の表を見ますと、個別具体的に何をするのかが書いてありまして、太陽光発電で 255 万 t 、風力発電で 302 万 t 、廃棄物・バイオマス発電で 1292 万 t 、バイオマス熱利用で 799 万 t となっており、足し合わせても 4690 万 t になりません。先ほど大倉さんのプレゼンを見ていましたら、「その他」という区分がありまして、ここで 2042 万 t となっており、達成できることになっていました。ここの関連が気になっています。もう一つ気になっているのは、熱との役割分担です。目逹計画の問題として、 WWF として常に申し上げているのは、日本の官僚の緻密な仕事によって、個別の施策を非常に細かく積み上げていますが、全体として対策を後押しするためのわかりやすい政策が少ないことです。 WWF や他の NGO が排出量取引や炭素税導入を提案するのは、個々の対策を全体としてバックアップする政策が必要だと考えるからです。ここにきて長期ビジョンの話になりますが、例えば 2050 年で排出量半減の社会を想定するのと、 30% 削減の社会を想定するのでは、全く意味が異なり、方向性としても全く違ったものが描けてくると思います。そこから、ではどんな政策が達成のために必要なのかという話になってくるのだと思います。

電力の部分については曲がりなりにも RPS という政策があるが、熱の部分には政策が存在しません。では今後、例えば RPS のような政策が拡大していくのかどうか、という点が私は大きな問題と考えています。よって、どこまで今回の見直しが踏み込めるのかどうか、というのが一つのポイントではないでしょうか。補助金や税制などがあるかもしれませんが、それらが個々の支援として孤立しているということが問題です。つまり全体としてパッケージになっていない、そこが問題と思います。 

飯田:

ありがとうございました。

小原さんはどうでしょうか。東京都の太陽エネルギー会議は、政府の RPS 法をどう評価して進められているのか。併せて、熱の話も出たのでそちらにもシフトしつつ、補足も含めてお願い致します。

小原:

東京都はやはり RPS が電力会社に多くを求めすぎているという見方をしています。 RPS の中味は経済的に最も有利なものを選んでいくということもありますし、良い仕組みになる部分もありますが、実態として調達に掛けている原価部分を電力会社が売値に転嫁する仕組みにはなっていないようです。もともと企業と行政は違う世界に住んでいます。企業は生き続けなくてはいけないという重要な命題を抱えています。利益をはき出し続けるとひからびてしまうので次の仕事につながるようなやり方をするのは当たり前です。一方、行政は税金に支えられて、構造的につぶれないようになっているものです。ですから行政と企業は異なる位置に立ってものを言っているのだと思います。その中で、少なくとも私は RPS 法を電力会社に多くを求めている仕組みと見ています。

東京都が太陽エネルギー利用拡大会議における検討の中でも色々な方に意見を頂いていて、今日の資料にも検討の状況を載せています。企業や個人のボランタリーな取組に頼らない仕組み作り、とありますがここで企業として想定しているのは東京電力や、他の余剰電力買い取りをして頂いている電気事業者です。また、投資回収に 30 年かかるような、元がとれない中で太陽光発電システムを着けて下さっている方々に頼ってやっていくのは酷だろうというのが都の見方です。きついこと言っているような言っていないようなバランスが都の政策にはあるのかなと思います。

熱についてお話しします。途上国では、今日生きていくのに必死な子供たちが大勢おり、それを思うと胸が痛む思いです。そのような子供たちが豊かになりたい、また彼らの親が彼らを豊かにしたいというのは止めようのないことですし、先進国の私達も自らの豊かな生活を守るために彼らに貧しいままでいろとは言えない。彼らが豊かになるために、同じようにすれば豊かになれる、という生活をどうやって私達が作るのか、というアプローチで生活を支えるエネルギーのバランスをどうするかを考えています。確実に手に入るエネルギー源と、不安定と言われるエネルギー源があるが、千年単位で見て安定的に当たり前に手に入るエネルギー源は風や太陽などの renewable energy であり、基幹となるエネルギー源であるはずです。それらが他の化石燃料などの不安定なもので補完されながらどうやっていまの豊かさの中心に据えられていくのかが東京都の課題だと思います。その中で熱というのはユーティリティーにおいて大きな割合を占めているので、熱を自然エネルギーとして利用するのは極めて重要な課題です。従って、太陽熱の利用拡大も、太陽光の利用拡大と併せて進めております。アクティブだけでなくパッシブなものも含めて重要という見方をしています。実は私達は室内外の温度差などパッシブなものを当たり前に使っているが、それを「見える化」するのが課題。どれくらいできるのかは頭を抱える問題だが、皆様の知恵を頂きながら、熱を、豊かさを犠牲にしないで自然エネルギーを増やすためのひとつのキーとしてしっかり使っていける状況にするのが、今の太陽熱会議の主題です。

飯田:

どうもありがとうございました。

見学さんからありましたが、国の補助金と余剰電力買い取りメニューは車の両輪だと思ったのに国の補助金が脱輪してしまった。なぜ国の補助金のみ脱輪したのか、これが最大のミステリーです。そして山岸さんから、熱には政策がなぜないのかということが出ました。この辺りを、 RPS 室長なので少々分野が違いますが遠藤さんお願い致します。

遠藤:

今のお話にもありましたが、新エネ導入のコストを電力会社の努力だけに依存するのはよくないという議論はもちろんあります。そういう意味では、いろいろな策を組み合わせていかなければなりません。 RSP はひとつの施策で、その他にもいろんな施策をやるということです。水力発電の話でもありましたが、最初は支援策や規制が必要だが、最終的には自然エネルギーは自立したエネルギーになっていかなければならない。その過程でどういうものを組み合わせるということだが、その中で重要なのはやはり技術開発でコストを下げることで、政府も力を入れています。 安倍イニシアチブの 2050 年半減を実現するには2つのキーがあり、一つは革新的技術開発、もう一つは低炭素社会づくりです。技術開発にはいろいろあるが、太陽光ならば効率を上げてコスト下げる、新しい素材を使う、などです。風力発電は風況に影響され、系統の安定性の問題が出てきますので、蓄電池を付けて安定化することなどが必要ですが、その場合にも技術が重要です。補助金がなぜなくなったのかという話があります、太陽光コストが下がっている状況を見て、全体の中でそういう判断になったのだと思います。従って、電気事業者だけに頼るのではなく技術開発・財政もあり、そういうものを進めていくということですね。

自然エネルギーの導入には規制関係の問題もあります。工業立地法という法律がありますが、例えば太陽光発電を付けたらその建物を環境施設と見なすなどの工夫もあります。補助金だけが政策ツールでないので、そういったものをいろいろと組み合わせて政策を進めていきたいということです。熱については、今日いろいろ議論しましたが、エネルギーセクター間の公平性の議論はもちろんあります。電力会社・ガス分野等々エネルギーセクター間の競争に留意しなければいけないので、それについても議論していきます。今の段階では具体的展開はありませんが、もし環境省の方で何かありましたら。

大倉:

熱の話を含めてですが、山岸さんが仰ったように目逹計画は 60 項目ありますが、それを確実に達成するための裏側の施策が実はそろっていません。今回の見直しでそれをいかに充実させるかが一つ大きなカギだと思っています。そういう意味で 3 年連続環境省の環境税の要望をやったのですが、今むなしく散っている状態です。結局、基本的にお金の流れを変えるということだと思います。先ほど金融の話も出ていましたが。規制をかけたところに投資がまわる、税金によって金の流れが変わる、そういったことをうまく組み合わせるのが全ての政策に共通すると思います。電力会社に過度の負担をかけないという主旨で言えば、国民の自発的な取組を促す面白い仕組みを準備するのがいいかなと思います。 21 世紀環境立国戦略」というのを「 Cool Earth 50 」と同じタイミングで 6 月 1 日に閣議決定したのですが、その中でエコポイントやカーボンオフセットの話が一応入っています。先ほど小原さんからパッシブ太陽エネルギーの「見える化」の話がでましたが、要は努力が見える形にして、どんどん回転させていくシステムを組めないかなと思っています。エコポイントなど、規制でなくてもできるような仕組みならうまくいくのでは、そしてそこに自然エネルギーが組合わされば、強力ではなくとも多少効果があるかもしれないと考えています。

飯田:

今日は時間的に、バイオ燃料までは議論は広げられませんので、山岸さんの頭出しの了解頂くと言うことで。

大倉さんに確認したいと思ったのは、進捗率が 41.3 %であと 100% まで 60% ですが、 1 ページ目の図で排出量は基準年比プラス 7.8% と伸びていて、これからマイナス 14% 急降下して基準年比マイナス 6% にしなくてはいけないと。要は、残り 60 %が進捗すればマイナス 14% の急降下が出来るのか、について教えていただけますか。

大倉:

細かい話ですが 41.3 %は主要な対策だけで、目達計画全体の進捗率とはずれています。ただ、おおむね代表選手と見て頂いていいと思います。ここにマクロフレームの変化が入っているが、これの変化がなければ、現行対策をきちんとやれば急降下してプラス 7.8% からマイナス 6% まで落ちる計算になります。しかし現時点で経済成長率が変わって来ていますので進捗率がたとえ 100% になっても、おそらくプラス 2,3% のズレが生じると思いますので、多分無理というのが我々の見方です。詳細が出てからでないとはっきりしたことは言えませんが。

飯田:

マクロフレーム次第ということですね。

では、続いて見学さんに。太陽光は片輪走行になった一方で、 RPS × 2 倍というのが入りましたし、東京都からの提案もあります。東電あるいは電気事業者一般として、余剰電力購入メニューのこの先についてどうお考えでしょう。自然エネルギー普及の肝の2つは、どういう公平な費用負担をするのかと、どういう効果的な支援措置に組み込むのかに尽きます。余剰電力購入メニューは今、ひずみの中で漂っているわけですが、今後どういう風な方向性にもっていくことが京都議定書、さらにそれを越えて 90% 削減するのにいいのか、ご意見よろしくお願いします。

見学:

余剰電力購入について、いつどういう形でこれを発展させ別の方策をとれるのか、で悩んでいます。財やサービスを持続的なものにしていくには、電力会社含め企業にとってそこそこ利益が取れるものでなくてはいけない。お客さまに対しても、太陽光発電を入れるとちょっと高いかもしれないけど心理的満足が得られるものに展開していくべきでしょう。痛みを分かち合うという話もあったが、痛みでは長続きしないので、そこはもっとうまく回せる方法もあるのではと思います。そこは皆様からご意見や提案をいただきたいと思っています。

飯田:

じゃあ、山岸さんから、費用負担と効果的措置のところで、排出量取引も含め補足して頂ければと思います。

山岸:

温暖化対策全般として見たとき、やはり大規模排出源からの削減が一番重要、というのが基本的スタンスです。ですから発電事業者も含めエネルギー転換部門、産業部門、工業プロセス部門といった大規模排出源の対策として、排出量取引制度によってきちんとした削減量を確保する。 90 年比で産業界は増えていないから、そこに無理に政策を入れなくていいという話がありますが、長期ビジョンを見たとき、 80-90% 削減をしなければいけないなら、どっちにしろ今以上の削減が必要です。それに備えて最初から政策を入れなくては、というのが WWF の立場として大前提です。だから排出量取引制度を、即効性はないかもしれないが長期的には必要だから導入すべきだということ、これも我々の大前提です。ただ、他方で先ほど費用負担の話が出ましたが、自然エネルギー・グリーン電力については電力会社だけに費用負担してもらおうとは全く思っていません。自然エネルギーのようなポジティブなものについては、消費者の側としても高い費用を払う心構えが段々にできてきていると思います。消費行動について温暖化に全く関係ないものについても、最近安ければいい、という傾向でなくなってきていることが日経ビジネスにも取り上げられています。ですから、消費者が成熟するにつれて質を見るという行動をしています。そこをうまく使うようなマーケティングがグリーン電力という制度を支えていく電力事業者や我々 NGO 、政府にも求められてきていると思う。そこは工夫次第と、基本的な感想としては思っております。

飯田:

小原さんとしてあとはやるべし、ということだと思いますが、 CO2 外部不経済の内部化など、少し先のことをビジョンでかまわないのでお話し頂ければ。

小原:

9,8 割削減について、これは数字の大きさ競争ではないわけですが、やはり一つ一つの CO2 外部不経済を内部化する仕組みだとか、人間中心の需要サイドつまり生活面でのユーティリティを中心に、どうやってそれを獲得するのというところからエクセルギー的にうまくバランスを取っていって、そこで選ぶべき熱や電気のオリジンをどこに求めるのか、そこで自然エネルギーが初めて登場するような順番であるべきです。自然エネルギーを作る話ありきでそれをどこに持っていくかではなく、人を中心にして豊かさをどう獲得するか、という点でバランスを取っていって、オリジンは自然エネルギーかもしれないし化石燃料かもしれないがそこでバランスを取るという考え方を確立していきたい。そういう一つ一つのものが複雑に絡み合うので、戦略的なパッケージ化したスキームをいろいろな形で、どんどん打ち出していこうと思っています。

今日の話を通して一つ違和感を覚えていることがありまして、それは川一つ越えた向こう側は管轄外、という東京都の役人が、世界中の人類の将来の豊かさみたいなものを真剣に考えてやっているとドンキホーテのほら話のように、外で話すとよく受け取られます。この部屋の中では、私の話が自然に受け止められていることにすごく違和感があります。海一つ越えた向こう岸で排出されている CO2 は管轄外という状況でやっている日本政府も同じなのだろうな、と思います。同じ目標を持っている人たちが一緒に出来ることをどんどん積み重ねていくと、一人から見たらフォアキャスト的にしか出来ないと思っていたことが、みんなの知恵を集めれば当たり前にできることがあります。それはディーゼル車対策の時に一度経験済みです。そういう経験があるものですがら、東京都ははっきり何をしたいか言うようにしております。東京はオリンピック 2016 年の開催地として立候補していますが、オリンピックというものには世界中から、戦争を中断してまで選手が来る国があります。そして 2 週間なり 20 日間なり生活して帰っていきます。そのときにこれだけ少ないエネルギーでこれだけ豊かな生活ができるのか、という 2 週間を体験させたいというのが我々の思いの根底にあります。それによって、体験した彼らが国に帰って戦争している場合じゃないなと思わせたいのです。そのくらいのスピード感覚で、低エネルギーで豊かな生活を東京で出来るように変えていきたい。そういう思いを共有して下さる方がいらっしゃったら、オリンピックに賛成してという話ではなく、実際の活動を持って協力して頂きたいと思います。

飯田:

ありがとうございます。

遠藤さん、大倉さん、一言まとめとしてありますでしょうか。

遠藤:

今日は大変勉強になりました。今日の議論でも出てきましたが、国民全体での取組が非常に重要だと感じています。私の仕事の関係で直接関係するのはグリーン電力証書の費用化というテーマですが、そういう視点からの政策を関係省庁とも連絡しながら進めていくことが重要だと思います。 RPS 法のように 39 社と規制対象が限られているのも効果的な面があり、今までにも導入してきていますが、これだけ環境の意識も高まってきてグリーン電力も活発になってきていますので、それに関わる問題を一つ一つ丁寧に対応していくという視点が重要と感じました。

飯田:

では大倉さん、目達計画に目玉が入るかどうか、について。

大倉:

小原さんの話を聞いていて、一言言いたい。現行の環境省に立場に必ずしも満足している職員は多くないと申し添えたいと思います。「美しい星」でも低炭素社会づくりは打ち出していて、人々の豊かな生活による幸福と低炭素・温暖化対策を一体化するというコンセプトを出しています。先ほど紹介したまちづくりにおいてコンパクトシティといった話もありますが、高齢者は安全に歩け、交通事故・ CO2 ・財政負担も減る、それが低炭素社会だと思っています。自然エネルギーはコアになります。豊かな生活と低炭素がマッチングした社会を作っていきたいと思いまして、意を強くしました。職場に帰ってみんなに伝えたいと思います。 

飯田:

今日は時間が超過しましたが、「京都議定書達成に、自然エネルギーは何が出来るか?」というテーマで 3 時間ほど議論してきました。直近の目達計画への球とはいきませんが、それぞれのセクターでそれなりに、もしくは非常に希望を持てるような活動を皆様が垣間見ることが出来たのではと思います。

一つ情報ですが、今日、ちょうど千葉大公共政策センターと ISEP でエネルギー永続地帯、自然エネルギーで地域がどれだけ自給できるのか、についての研究レポートが出ました。

昔なら上から下に向かっていた政策が、東京都のようにダイナミックに地域が動いて、球があるどころか太平洋と日本海を越えて政策が広がっていく可能性もあります。一方で経産省と環境省はまだ縦割りでありながら、協力もしていくようにして、新しい可能性が今日を機会にできるといいのではと思いました。

自然エネルギーはまだ日本では脇役だが、主役に躍り出る日が近いのでは、ということを記念いたしまして今日のシンポジウムを終わらせて頂きます。ありがとうございました。